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第44話:砕けた意志と破滅の交響曲

場所:フロンティエラ国 シーニスの空洞ダンジョン、50階層


第六ループ:亀裂


巨大な青銅の扉が耳をつんざくような最終的な轟音とともに激しく閉まった。


牧歌的な人工の朝日がエメラルドの天蓋を温かい嘲笑うような輝きで包んだ。しかし今回は、誰も景色に驚嘆しなかった。記憶のフィルターは完全に崩壊していた。麻痺の主観的な日々、斬首の幻の痛み、そして彼らの脳の耐え難い膨張が全て、同時に彼らの意識的な心に溢れ出した。


ガレス『鉄皮』は一言も発しなかった。三十年間、巨大な狼、ワイバーン、深淵の恐怖を見据えてきた歴戦のAランク冒険者は、ただ壊れた。


彼は戦斧を抜かなかった。彼はブーツに手を伸ばし、滑らかに鋸歯のある狩猟用短剣を抜いた。その動きは機械的で、一切の躊躇を欠いていた。


「ガレス、違う!」詩織は叫び、その声が喉を引き裂きながら前に飛び出した。


彼女は草の上に体を投げ出し、手を伸ばし、その指はガレスの肩当ての冷たい鋼鉄に触れた。しかし彼女は一秒の何分の一、遅すぎた。


手首の単一の激しい動きで、ガレスは短剣を自身の首の側面深くに埋め込み、前方に引き裂いた。動脈血の恐ろしい飛沫が明るい緑の草と繊細な人工の白い百合を染めた。ガレスは重く横に倒れ、その目は反り返り、自身の血で窒息しながら、その体力は絶対零度にまで落ちた。


詩織は土に激突し、その手は即座に歴戦の前衛の温かく粘着性のある血で覆われた。彼女は彼の生気のない死体を見つめ、その心は信じがたいことの渦の中で回転した。


なぜ? と詩織は思った。その呼吸は荒く、過呼吸のあえぎになった。なぜ彼は降伏した? 彼は鍛え上げられた歴戦の者だった。彼は中年だった。彼はこの世界が提供する最悪のものを見てきた。私たちはただの高校生だ…ただの子供だ! なぜ彼は私たちより先に諦めた?


生々しい血も凍るような叫び声が朝の空気を砕いた。普段は無感動で落ち着いたエルフの弓使いエララは、ガレスの体の隣に膝をついた。涙が彼女の顔を伝い、カモフラージュの塗料を台無しにしながら、彼女はガレスの巨大な生気のない手を握った。


皮肉な魔法使いボランは、土の中を這い回り、その杖は忘れ去られた。彼はガレスの重い鎧の襟を掴み、死んだ男を激しく揺さぶった。


「お前は約束したんだぞ、ガレス!」ボランは咆哮した。その声は完全な打撃でひび割れ、彼の涙はガレスの血に染まった胸当てに重く落ちた。「この馬鹿で頑固な牛め! お前は約束した! 共に生き残る、共に走る、共に死ぬ、この地獄の終わりを共に経験すると! なぜ…なぜ最初に諦めた? なぜ俺たちを置き去りにしたんだ?!」


数フィート離れて、聖女イヴリンはただ草の中に座り込んだ。彼女の聖なる杖は彼女から転がり去った。彼女は祈らなかった。回復呪文を唱えようともしなかった。彼女は血を茫然と見つめ、その美しい目は全ての希望を失っていた。


「開け! 開けろ、くそったれ!」


翔太の慌てふためいた叫びが彼らの注意を引いた。若い盗賊は巨大な青銅の扉に向かって全力疾走していた。彼は古代の魔法で封印された金属を素手で殴っていた。ガンッ。ガンッ。ガンッ。


彼は必死で取り乱した力で殴り、その指の関節は裂けた。明るい赤い血が暗い青銅に塗られ、扉にグロテスクな手形を残した。「出してくれ! もう聞きたくない! もうあの音楽は聞きたくない!」


ゆあとめいも、同じ盲目のパニックに駆られて、その杖を掲げた。


「壊れて! ただ壊れて!」ゆあは金切り声を上げ、【聖なる撃滅】の奔流を扉に直接放った。


「粉砕しろ!」めいは叫び、【雷槍】を【雷槍】の後に唱えた。


耳をつんざくような爆発が敷居を揺さぶり、煙と破片が空気を満たした。しかし塵が晴れると、青銅の扉は完全に無傷のままで、彼らの究極魔法をそよ風のように吸収していた。ゆあとめいは膝をつき、荒く息をし、その魔力は完全に浪費された。


詩織はガレスの死体を見つめ、嫌な認識が彼女を洗った。ガレスは死んだ…しかし時間の繰り返しは作動しなかった。ダンジョンの歪んだ仕組みが耐え難いほど明らかになった。単独の死は何も意味しなかった。保存地点は隊全体が全滅した時だけ作動する。彼らは死体と共にここに閉じ込められ、ピアノが始まるのを待っていた。


突然、翔太が扉を殴る慌てふためいた音が止んだ。


詩織は頭を向けた。翔太は完全に動かずに立ち、その血まみれの手は青銅に当てられていた。不気味で恐ろしい静けさが彼の顔に落ちていた。


「彼女に演奏させない」翔太はささやいた。その目は虚ろだった。「もう二度と彼女に傷つけられない」


誰かが反応する前に、翔太は血まみれの手を上げ、それを自身の胸に直接向けた。彼の周りの空気は一秒の何分の一で氷点下にまで落ちた。強力で集中した氷魔法の破裂が彼の手のひらから噴出した。


「翔太くん、待って――!」詩織は叫び、必死に立ち上がった。


それは瞬時に終わった。翔太は自身を固い容赦のない絶対零度の氷の塊で包んだ。彼は扉を凍らせたのではなく、自身を凍らせたのだ。


詩織とイヴリンは氷の塊に駆け寄った。聖女は慌てふためいて診断呪文を唱えたが、金色の光は即座に鈍い生気のない灰色に変わった。


「彼は…彼はもう」イヴリンはささやいた。「体力がゼロです。極度の寒さが即座に心臓を止めました」


「この馬鹿!」ゆあは金切り声を上げ、友人の凍った像に這い寄り、その手は無駄に氷を叩いた。「この完全な馬鹿!」


めいはゆあの隣に崩れ落ち、制御不能に泣き叫んだ。「彼は強い方だった! いつも一番強い心の持ち主のように振る舞っていた! いつもあんなに陽気で、必ずうまくいくって言ってた! なぜ…なぜ最初に諦めたんだ? 彼は私たちの友達だ! なぜ私たちをここに置き去りにしたんだ?!」


クラスメイトが壊れるのを見て、友達が戦うよりも自殺を選ぶのを見て、詩織の感情を抑えていた鉄のダムはついに完全に決壊した。


彼女は土の中に膝をつき、その顔を両手に埋めた。勇敢で戦術的な召喚された英雄のリーダーは泣き始めた。深く、体を震わせる、醜い嗚咽が彼女の胸を引き裂いた。


「なぜみんな諦めるの?!」詩織は叫んだ。その声は偽の森に悲しげに反響した。彼女は顔を上げ、ラベンダーのハイライトが入った髪が涙で濡れた顔に張り付いていた。「私が怖くないと思う? 私も諦めたくないと思う?! 私は怖い!」


彼女はゆあ、めい、そして悲しみに暮れる冒険者たちを見た。「家に帰りたい! 自分のベッドで寝たいだけ! 東京にはまだ私を待っている家族がいる! 両親は…私が生きているかどうかも知らない! あなたたちにも待っている家族がいるんじゃないの? 愛する人は?!」


詩織は拳を土に叩きつけた。「だからなぜ挑戦せずに諦めたいの?! これがどんなに絶望的でも、あの小さな少女が何度私たちを殺しても、私たちには時間の繰り返しがある! 少なくともまだチャンスがある! 愛する人のために、家族のために…なぜ彼女に降伏しなければならないの?!」


聖女イヴリンは詩織の必死で懇願する顔を見た。聖職者は聖印をあまりに強く握りしめ、その指の関節は白くなった。


「か、神は」イヴリンはどもった。その声は哀れにひび割れた。「女神カミヤは私たちを導いてくださる。私たちはただ…ただ前向きにいれば――」


しかし彼女の言葉は完全に空虚だった。イヴリンはそれらを信じていなかった。誰も信じていなかった。


突然、人工の太陽が存在から消え去った。空は息苦しい深淵の黒に落ちた。


上の暗闇から、声が漂い降り、大気そのものを満たした。それは孤独の魔女の重層的な悲しげなささやきだった。


「なぜ彼らは自分自身を壊したの?」少女の声は尋ねた。歪んだ無邪気な困惑で反響した。「なぜ私の床で血を流したの? 本当に私の演奏はそんなにひどいと思う? 私はただお客さんが欲しかっただけ。ただ楽しませたかっただけ」


生存者の顔の絶対的な絶望は、純粋無垢な恐怖へと深まった。


高く頭上で、黒曜石のピアノが実体化した。しかし魔女は今回は降りてくるのを待たなかった。暗闇から、彼女は鍵盤を叩いた。


それは憂鬱な三連符ではなかった。斬首の和音でもなかった。それは真新しい音符だった――地獄の地殻の軋む音のように聞こえる、重く調性のない不協和な低音の塊。


ガンッ。


音波は音としてではなく、物理的で全方位の重力として彼らを襲った。


「あああっ!」ボランは叫び、その目が反り返り、鼓膜が即座に破裂し、血が彼の首を伝った。


痛みは以前よりも無限に悪かった。詩織は自分の体が草に対して激しく平らに押し付けられるのを感じた。そして、内部の破壊が始まった。


バキッ。


詩織は息を呑み、銅の味がした。彼女の左の鎖骨が音圧の下で折れたばかりだった。


彼女の周囲全てで、破滅の交響曲が演奏された。これは迅速な処刑ではなかった。これは彼女の演奏を聞くことを拒否したことに対する、意図的な耐え難い罰だった。


ゆあは甲高い鋭い叫び声を上げ、その前腕が不自然に歪み、骨が皮膚を突き破った。エララは大量の黒い血を吐き出し、その内臓――胃、肝臓――が圧力の下で激しく破裂し始めた。


パキッ。パキッ。パキッ。


背骨が一つずつ折れる恐ろしい音がピアノの音符に重なって反響した。ボランの背骨は崩壊し、彼の体はグロテスクな角度に歪んだ。


絶対的で目がくらむような苦痛の中でもがくめいは、翔太を真似ようとした。彼女の手は必死の青い光で輝いた。凍れ! ただ私を凍らせて! と彼女は思い、耐え難い痛みを麻痺させるために自身に氷の呪文を唱えた。


しかし氷が彼女の脚を包み始めたとき、魔女は別の重い軋むような和音を叩いた。


音波は氷を粉砕し、めいの凍った脚も一緒に粉々に砕けた。彼女はゴボゴボという湿った悲鳴を上げ、その血管が一つずつ爆発し始め、彼女の皮膚を恐ろしい紫色のあざで覆い、その後外側に破裂する中でゆっくりと死んでいった。


詩織は草の中に横たわり、純粋で終わりのない拷問に麻痺していた。彼女の肋骨は陥没し、肺は血で満たされた。魔女は彼らを罰していた。彼らに痛みの微視的な一片を感じさせ、何時間にも感じられるように彼らの死を引き延ばしていた。


彼女の視界がついに暗い深紅の海の中で揺らぎ始めたとき、詩織はピアノが演奏し続けるのを聞いた。美しく、容赦のない子守唄が彼らを地獄の始まりへと導いていた。


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