第4話:ブラックホールと腐肉の饗宴
フロンティエラ大聖堂の客室は、吐き気を催すほど豪華だった。巨大なアーチ型の窓にはシルクのカーテンがかかり、家具は香りの良い磨かれた白木から彫られていた。王族のために作られた部屋だが、今は六人の混乱した高校生がいた。
浅野詩織は窓際に立ち、柔らかな黒髪を肩に落としていた。彼女は手を上げ、本能的に一束を耳の後ろに挟み、鮮やかなラベンダーの下のレイヤーを露出させた。彼女は同じ部屋にいる五人の人物を見つめた。
いや、正確には、自分たちのクラスメイトだと主張する見知らぬ人たちを見つめた。
「正気じゃない」パチパチと音を立てるような青い髪と、鋭い黄色い瞳の少女が、ふかふかのカーペットを歩き回りながら呟いた。
「そうなんだよね。すごく……軽くなった気がする」別の少女が答えた。彼女の髪は淡くきらめく銀緑色で、絶え間ないそよ風に捕まっているかのように頭の周りで浮かんでいた。
「待って、待って」一人の少年が前に出た。彼は短く棘のある銀髪で、いたずらっぽい灰色の瞳をしていた。「ちょっと止まろう。システムインターフェースが皆の名前をぼかしてる。ただ【対象名:非表示】って出てるだけだ。あなたたち二人は実際には誰なんだ?」
青い髪の少女は腕を組み、その新しい鋭い顔立ちをしかめた。「私よ、七瀬くん。ゆあ。で、こっちはめい。女神の祝福で髪の毛だけじゃなく脳みそまで焼かれたの?」
三人の少年は呆然と見つめた。ゆあとめいは、1年A組で最も人気があり、間違いなく可愛い女子の二人だった。彼女たちは前衛グループの一員だった。今や彼女たちは、人間の皮をかぶった精霊のように見えた。女神の祝福は彼女たちに魔法を与えただけでなく、その親和性に合わせてDNAまで書き換えていた。
「元素変異よ」詩織が静かに言い、その声が混乱を断ち切った。「システムがあなたたちの肉体を、新しい魔法出力を収容できるように調整したの。でも……」彼女は自分の手を見下ろした。「どういうわけか、私はまったく変わってない」
「僕もだ」と静かな声が加わった。
詩織は振り返って、今川佳志を見た。彼も彼女と同じように、地球のときと変わらない姿だった。ボサボサのシアン色の髪と、垂れ下がった柔らかな青い瞳。他の少年たちの隣では完全に場違いに見えた。
「私たちの【隠蔽】スキルが生まれつきランクB以上なら、表面に現れるものは何も信頼できない」詩織は分析的な頭脳を働かせて続けた。彼女は教室の後ろの草薙京也を思い出した。彼の頭脳が不可能をいかに速く処理するかを思い出した。もし彼がここにいたら、きっと主導権を握っていただろう。彼女も同じことをしなければならなかった。「生き残るためには、絶対的な信頼が必要だ。私から始める。私がこのグループのリーダーになる。そして、隠し事は何もないと証明する」
詩織はシステムインターフェースを開き、意図的にプライバシー設定をバイパスして、自分の真のステータスウィンドウを空中に投影し、他の五人が見られるようにした。
【ステータス】
名前:浅野詩織
ランク:B | レベル:129
HP:2500 | SP:1000 | MP:5000
INT:B
スキル:- 【闇魔法】(レベルB)
【隠蔽】(レベルA)
究極スキル:【事象の地平線】(レベルS)
少年たちは息を呑んだ。ゆあの目が見開かれた。
「レベルS?」ゆあは息を呑んだ。「最高位スキル?」
「事象の地平線」詩織は落ち着いた声で説明した。「闇魔法を圧縮して局所的なブラックホールを作り出し、その引力に捉えられたものの存在を吸収するの。ただし……私のシステムは、自分よりもレベルの高い相手には全く効果がないと警告している」
心の奥底で、彼女の胸は痛んだ。ブラックホール。地球で最後に聞いたのは、京也がシュワルツシルト半径を暗算で導き出し、ブラックホールの脱出速度を計算した時だった。彼女の魔法は、文字通り彼への未練から具現化したものだった。
詩織のリードに従い、他の者たちも自分の画面を投影した。
深い緑の髪に黒い筋が混じった少年が前に出た。「春馬和良」と彼は紹介し、青い目は真剣だった。「レベル115だ」
彼の究極スキルは【幻影墨】(レベルS)。マナで空中に描いたものを何でも実体化できるが、詩織と同じく自分より高レベルの敵には効果が限定される。サブスキルは恐るべきものだった。【風魔法】(A)、【飛行】(B)、【真空断片】(B)、【虚空障壁】(B)。
銀髪の少年は笑い、頭の後ろをかいた。「七瀬翔太。レベル118。また会えて嬉しいよ」
彼の究極は【氷河の永遠】(レベルS)。戦場全体を絶対零度まで瞬時に凍結させる広範囲魔法。その武器庫には【水魔法】(B)、【氷魔法】(A)、【結晶雪崩】(A)が含まれていた。
最後に、変わらないシアン色の髪の少年、今川佳志が画面を投影した。「レベル110」
彼の究極は残忍だった。【大封印・タルタロス】(レベルS)。スキルは純粋な破壊でそれを補っていた。【火魔法】(A)、【溶岩】(B)、【耐熱】(B)。
彼らは全員がランクBだった。全員が歩く天災だった。
「聞いてほしい」詩織は投影を消した。その黒い瞳はグループを見渡した。「正直に言う。私は女神カミヤなんて気にしない。フロンティエラの王も気にしない。この世界を救うことだって気にしない」
部屋は死のような静けさに包まれた。
「私たちは拉致されたのよ」詩織は冷たく言い放った。「私が唯一気にかけているのは、残りのクラスメイトを見つけること。木谷くんのグループを見つけたい。湊くんも見つけたい。そして……他に誰がいるのかも。でもそのためには、リソースと移動の自由が必要。協力してくれる?」
和良と翔太は顔を見合わせ、しっかりと頷いた。佳志は静かに親指を立てた。ゆあとめいは微笑んだ。
「ついていくよ、浅野さん」ゆあが言った。
次の行動を話し合う前に、客室の重いオークの扉がきしんで開いた。聖堂からあの美しい聖女が、重装備の聖騎士二人を伴って入ってきた。
「聖なる英雄たちよ」聖女は深くお辞儀をし、穏やかな微笑みを浮かべた。「準備は整いました。フロンティエラ国王陛下が、救世主たちとの謁見を謙虚に願っておられます」
詩織は襟を整え、その顔を完璧な礼儀正しい仮面へと滑らせた。「もちろん。案内してください」
◆
場所:アウトランド 100階層
深淵の息苦しい暗闇の中には、シルクも白木も、お辞儀する聖女もいなかった。ただ銅、オゾン、そして腐った肉の匂いだけがあった。
草薙京也は小さな岩の隙間のギザギザした壁に寄りかかって崩れ落ち、呼吸は荒く浅くゼーゼーとしていた。学生服のジャケットで作った応急止血帯は血でびっしょりと濡れていた。左腕の断端は、弱まりゆく心臓の鼓動に完璧に同期した、吐き気を催すようなリズミカルな苦痛で脈打っていた。
彼の【INT:∞】は呪いだった。ただ賢いだけではない。それはパッシブな超高度レーダーとして機能し、自分の死にかけの体の微視的な細部まで処理するよう脳に強制していた。
心拍数:毎分140。体温:39.5℃。感染拡大:毎分4%。餓えていた。重度の外傷と出血を乗り切るには、人間の体は膨大なカロリーを必要とする。召喚の前にコンビニのパンを食べ終えていなかった。胃が激しく痙攣し、吐きそうになった。
【システムアラート:バイオマスを検知。距離:4メートル】
熱と痛みの靄の中、京也の輝く紫の瞳は隙間の外の暗がりをスキャンした。受動的な知性がデータを直接視覚野に送り込んだ。
そこには、土の上に横たわる死体があった。
ランクBのモンスターだった――ダイアウルフと鱗のある爬虫類型の歩行者の間の子のようなもの。より大きな頂点捕食者によって無残に真っ二つにされ、下半身は完全に欠損していた。残っていたのは、変色した濃い紫色の筋肉、砕けた肋骨、そして凝固した黒い血の無残な塊だった。
食え、と彼のシステムが事実上ささやいた。さもなければ、あと47分で死ぬ。
京也は弱々しく、かすれた嘲笑をもらした。「ふざけんなよ…」
彼は人間だ。現代日本の高校生。ダンジョンの床から感染した生のモンスターの肉を食べるなんて、生物学的に忌避される行為だ。
しかし視界が泳ぐ中、女神カミヤの傲慢で嘲るような顔が頭に浮かんだ。闇の中で死ね、役立たずの異常者。
「あいつよりは…マシだ」京也は歯を食いしばってシューッと吐き出した。
残された片方の手だけを使って、壊れた熱に浮かされた体を隙間の外に引きずり出した。這うたびに、切断された腕がまばゆい白熱の苦痛の波を送り込んできた。土の中を這い進み、爪が石で欠けていき、ついに腐敗した死体の隣に崩れ落ちた。
悪臭はひどかった――硫黄に腐った牛乳と生の下水を混ぜたようだった。
京也は考えることを許さなかった。ためらっている余裕はなかった。右手を生き物の露出した肋骨に突っ込み、生の紫色の筋肉の塊を引きちぎった。冷たくてぬめぬめしていた。
それを口に押し込み、噛みしめた。
味は言葉にできなかった。それは即座に嘔吐反射を誘発する、卑劣な金属的な苦みだった。胃が激しくそれを拒絶し、胆汁が喉の奥まで上がってきた。
飲み込め! と彼は自分の体に命じた。無限の知性が人間の本能を上書きする。口を手で押さえ、嘔吐をこらえ、生のゴムのような肉を無理やり喉の奥に押し込んだ。
土の上に横たわり、咳き込み、ひどい物質が空腹の胃に入る中、顔を涙が伝った。
【ランクBバイオマスを消費…DNAを処理中…】
【宿主の消化管内に異常を検知。適応中…】
【スキル獲得:変身(レベルC)】
説明:消費した下位モンスターに変身し、その完全なステータスと特性を獲得できる。
京也の目がわずかに見開かれた。脱出方法。反撃する方法。もしモンスターになれれば、再生できる。生き残れる。
しかし彼の【INT:∞】は即座に確率アルゴリズムを実行した。
警告。宿主はレベル1。バイオマスはランクB。現在のステータスでモンスターの形態をとる際の心理的・身体的負荷は、永続的な遺伝子上書きの確率98.7%。人間の姿に戻ることはほぼ不可能。
人間性を失う。深淵の獣になる。
突然、左肩に激しい痛みのスパイクが走った。彼は叫び、断端を抱えた。首を這う静脈が黒く変色していた。敗血症。蜘蛛の鎌と汚れた床からの壊死性細菌が急速に血流に侵入していた。熱が危険なほどに高まった。
【HP:2/10。重要臓器不全が差し迫っています】
【死亡までの時間:4分】
考える時間はなかった。捨てようとしている人間の命を惜しむ時間もなかった。復讐がしたかった。神々の神殿を這い上がり、カミヤをその金髪で引きずり下ろしたかった。そのためには、生きなければならなかった。
「システム……」京也は息を切らしながら言った。紫の瞳が、絶対的で恐ろしい決意に燃え、闇が迫る。「変身を…起動しろ」
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