第37話:壊れた駒と霧の母
場所:サンダーランド国 トリトン港 政府迎賓館
朝日がトリトン邸の重いベルベットのカーテンを通して差し込み、磨かれたマホガニーの床に長く埃っぽい光線を投げかけていた。
ケインは私室の鏡の前に立ち、肩を回して気持ちよくポキポキと音を立てた。濃いサファイアドレスと『アシュフォード』の繊細で完璧な特徴は消えていた。彼は真の男性的な姿に戻っていた――鋭く威圧的で、快適な仕立ての黒いシャツとスラックスを身に着けていた。簡単な朝の習慣を終え、昨夜の政治劇の残る疲労を洗い流すために冷たい水を顔にかけた後、彼は大客間へと下りていった。
ソフィアは既にそこにいて、優雅に長椅子に寄りかかり、濃い紅茶をすするとしていた。セバスチャンは近くに立ち、積み重ねられた朝刊を整理していた。
「おはよう、ケイン」ソフィアは茶碗の縁越しに微笑んだ。「上流社会の重荷から解放されて、よく眠れたかしら?」
ケインはただうなるだけだった。彼女の向かいの席に座った。彼が言い返す前に、部屋の中央の空気が重くなった。周囲の魔力が歪み、絨毯の上に濃密な漆黒の円となって溜まった。深淵の転送の魔法陣の複雑な幾何学的パターンが暗い紫の光で燃え上がった。
しばらくして、スターリング卿が現れた。
太った貴族は魔法が彼を解放した瞬間、手と膝に崩れ落ちた。彼は完全な廃人だった。彼の高価な服は皺くちゃで汗で染まり、その顔は青白く、その目は見開かれ、充血し、完全に虚ろだった。あの防音室で彼が経験した精神崩壊は、彼の自我を完全に粉砕していた。彼は今や最も基本的な催眠命令にさえ非常に影響されやすくなっていた。
「認めざるを得ないわね、ケイン」ソフィアは言った。その紫の目は暗い承認で輝いた。「あなたの方法論は残酷なほど効率的だった。局所的な幻覚ループで彼の精神を破壊することで、彼の魔法防御を完全に迂回した。彼は今や完璧に従順な操り人形だ」
「恐怖は普遍的な言語だ」ケインは冷たく答えた。腕を組んで。彼は震える貴族を見下ろした。「立て、スターリング」
スターリングは慌てて立ち上がり、直立して注意を払ったが、その膝は明らかにカチカチと震えていた。
「率直に話そう」ケインは命令した。その声は異常者の否定できない重みを帯びていた。「お前は借金の帝国を維持するために、何人を殺した、あるいは殺すように命じた?」
スターリングはごくりと飲み込み、その目は緊張して走った。「私…私は知りません、閣下。覚えていません。数字…顔…それらは混ざり合っています。私はただ富の蓄積と家族の地位の維持だけを気にしていました。死者の名前を覚えることなど気にしたこともありません。しかし…しかし私は帳簿をつけていました。記録を。私が死体を埋めるのを手伝った全ての仲間、全ての協力者、全ての腐敗した役人のリストを」
ケインは嫌悪の嘲笑を漏らした。なんと卑劣で哀れな生き物だ。彼は自分が破壊した人々の名前を覚える胆力さえ持っていなかった。
「高位枢機卿たちは?」ケインは詰め寄った。「昨夜あなたを都合よく無視した者たちだ。どうやって教会の裁定者たちを支配している?」
「金だ」スターリングはロボットのように答えた。真実が抵抗なく彼の唇から溢れ出た。「彼らは名ばかりの聖職者だ。彼らは私の駒だ。首都の教会の階層は蛇の巣だ。あの枢機卿たちは、高位の地位を確保し、審問官に賄賂を送り、贅沢な生活を維持するために、完全に私の財政的支援に依存している。私の富がなければ、彼らは聖なる評議会の席を失うだろう」
ケインはソフィアと視線を交わした。これは彼らの疑念を裏付けた。教会は根底まで腐敗していた。しかしケインにははるかに差し迫った質問があった。
彼とソフィアは重大な隠れた弱点を共有していた。この世界の人間が誠心誠意祈ったり、女神カミヤの名を唱えたりすると、それは彼らの魔力回路に深刻な障害を引き起こした。それは彼らの究極能力を不安定で制御不能にした。この世界を征服するために、彼らは女神の影響力を断ち切る必要があった。
「教会、あるいはこれらの枢機卿たちは、女神カミヤに関する隠された知識を何か持っているのか?」ケインは身を乗り出して尋ねた。「彼女の力はこの大陸のどこに固定されている?」
スターリングは瞬きし、その壊れた精神は深く埋もれた秘密にアクセスしようと苦闘した。「枢機卿たちは…ひそひそと話す場所があります。聖域です。それは女神の真の守護者によって守られていると言います」
「ルシウスか?」ソフィアは遮り、眉を上げた。「召喚された教会の英雄か?」
「いいえ、お嬢様」スターリングは必死に首を振った。「選ばれし英雄ではありません。もっと古い何かです。召喚のずっと前からそこにあったものです。しかしそれがどんな種類の守護者なのか、誰も知りません。私…私は知ろうと気にしたことがありません。私はただ自分の富だけを気にしていました」
「その聖域はどこにある?」ケインは要求した。
「正確な座標は分かりません」スターリングは泣き叫んだ。「しかし聖典はそれがサンダーランドの最東端にあると言っています…永遠のスモッグに完全に飲み込まれた土地です」
ケインは沈黙した。彼の心は深淵での時間、100階層のダンジョン図書館で読んだ古代の埃をかぶった書物に戻った。人間の強さを試す場所、難攻不落のスモッグに覆われている。書物は信じられないほど曖昧で、謎めいた警告以上のものを提供していなかった。
ケインはため息をつき、暗い髪を手で梳いた。「女神はこの世界に信じられないほど小さくて厄介な手がかりを残した。まるでひどい宝探しだ」
セバスチャンは眼鏡を直し、コートから巻いた羊皮紙の地図を取り出し、テーブルに広げた。彼は手袋をはめた指で羊皮紙の右端を指さした。「もし記録が正確なら、船長、サンダーランド国の最東端は単なる国境地域ではありません。それはアウトランドと直接重なります。東方大陸では主要な悪魔の領土に分類されています」
「興味深いわ」ソフィアは呟き、暗い微笑みが彼女の唇に浮かんだ。「人間の歴史は魔王の物理的な外見、軍隊、そして魔法を克明に記録してきた。しかし彼らは自分たちの女神の最も神聖な場所について全く何も知らない。そこに着くのは簡単な散歩にはならないようだ」
ケインは立ち上がり、震える商人の領主に注意を戻した。「スターリング。お前の屋敷に戻れ。机に座り、お前が犯した全ての罪の完全で詳細な告白を書け。全ての仲間、全ての腐敗した貴族、そしてお前の給料を受け取っている全ての枢機卿をリストアップしろ。それが署名されたら、お前自身と証拠をヴァンガード市の最高軍事当局に引き渡せ」
「は、はい、閣下。そういたします」スターリングはささやいた。彼の運命は自身の強欲によって決定された。
セバスチャンが指を鳴らすと、闇の魔法陣が再び燃え上がり、スターリング卿を飲み込み、自身の破滅を始めるために送り返した。
「さて」ケインは地図を見下ろしながら言った。「どうやら東方の国境への旅の準備をする必要があるようだ」
◆
場所:サンダーランド国 最東端の国境 「母のヴェール」
トリトン港の蒸気駆動の贅沢から遠く離れて、東の国境の風景はギザギザした容赦のない悪夢だった。そびえ立つギザギザの山々が空を突き刺し、決して太陽を見ることのない深く狭い谷を作り出していた。
そしてこれらの谷を満たしていたのは霧だった。
それは不自然で、病的なほど青白いスモッグで、凍てつく岩にまとわりついていた。地元の人々はこの特定の山道を「母のヴェール」と呼んでいた。商人の隊商は決してこの道を通らなかった。
現在、重武装したサンダーランド国境前衛の分遣隊――魔力を帯びた鋼鉄の鎧を着た二十人の精鋭兵士――が濃い霧の中をゆっくりと行進していた。彼らは魔法の異常の急増を調査するために派遣されていたが、今や彼らはただ生き残ろうとしていた。
「密な隊形を保て!」ケーレン隊長は怒鳴った。その声は抑圧的で湿った空気でこもっていた。「前の者の姿を見失うな!」
霧は凍るような牛乳の中を歩くように濃かった。しかし寒さよりも悪いのは静けさだった。鳥も昆虫もなく、風の音さえもなかった。
そして、振動が始まった。
それは彼らが聞くことのできる音ではなく、歯をガチガチと鳴らし、骨髄の中で振動する深いリズミカルな鼓動だった。それは人間の聴覚の閾値を下回る局所的な低周波音だった。
瞬時に、前衛の兵士たちは速度を落とし始めた。霧の中で迷子になるという押しつぶすような不安は消え去り、圧倒的な重い無関心に取って代わられた。
「隊長…」兵士の一人がつぶやき、重いハルバードを岩の地面に落とした。「私…とても疲れました。ちょっと横になりたいだけです。ここはとても暖かいです」
「違う! 立て!」ケーレン隊長は叫び、男の肩当てを叩いた。しかしケーレン自身のまぶたも鉛のように重かった。低周波音は局所的な子守唄として機能し、彼らのアドレナリンと戦う意志を停止させた。
突然、ケーレンは胸に奇妙な感覚を感じた。まるで心臓の上に真空が置かれたかのようだった。彼は息を求めてあえいだが、彼の体から出ていったのは酸素ではなかった――それは抽象的な何かだった。
彼は瞬きした。私は何をしていたんだ? と彼は思った。彼は手の中の銀のロケットを見た。この写真は誰だ? 小さな少女…彼女は私の目をしている。彼女は誰だ? 生の原初的なパニックがついに無関心を突き破った。彼の記憶が引き裂かれていた。霧は単なる天候ではなかった。それは感覚の網だった。彼らの肌に触れる霧の粒子全てが、彼らの上の何かに情報を送り込んでいた。
スモッグが一瞬、晴れた。
彼らの頭上高く、巨大な浮力のある死体のように谷を静かに漂っていたのは、霧運びだった。
ケーレンは純粋な恐怖で膝をついた。それは巨大な鯨のような怪物で、容易に八十メートルはあった。その皮膚はまだらな青白い灰色で、十分に半透明で、ケーレンはその下で輝く病的な青白い生物発光の肋骨を見ることができた。それは目を持っていなかった。代わりに、六つの肉厚な脈打つ鼻孔がその角張った鼻面に並び、絶えず厚く凍てつく霧を吐き出していた。
それは翼で飛ぶのではなく、漂っていた。そのぼろぼろのリボンのような尾びれが霧の中に静かな軌跡を残していた。
それが真上を通過するとき、その生き物は口を開けた。それは歯の並ぶ顎ではなく、カチカチとガタガタと音を立てるヒゲ板が並ぶ巨大な垂直の裂け目だった。その青白い下腹部に沿って、巨大な腹側の溝が脈打って開いた。
吸引力が激しくなった。「魂のポンプ」が作動していた。
ケーレンは叫んだが、なぜ叫んでいるのか忘れた。彼は剣の握り方を忘れた。彼は自分の名前を忘れた。
獣が逆さまに浮かび、腹を運命の分遣隊に向けて、ケーレンは脈打ち輝く腹側の溝を見上げた。青白い肉厚の襞の中に、幽霊のような胎児のように浮かんでいたのは、何千人もの人間のきらめくシルエットだった。その中には彼が失った人々のように見える者もいた。その中の一人は、彼は消えゆく恐怖の最後の火花で気づいたが、彼自身の顔をしていた。
霧は突然閉じ、霧の母の巨大なシルエットを飲み込んだ。谷は再び沈黙し、空っぽの鎧と、永遠のスモッグの中を盲目的にさまよう虚ろで無意識の抜け殻だけを残した。
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