第29話:国境の関所と迷宮の修練
場所:大陸分水嶺 ヴァエロリアとギャロムーアの国境
そびえ立つ石のアーチは、ヴァエロリア王国の領土の絶対的な終わりを示していた。重厚に要塞化された門の向こうには、ギャロムーア国の広大なエメラルドの平原と密な古代の森林が広がっていた。
地球の軍事化された国境とは異なり、この関所は外国の軍隊を遠ざけるために建設されたものではなかった。国際教会の魔王撲滅の命令によって団結した世界では、人間の国家は互いに戦争を行わなかった。門、高い石壁、重武装した守備隊は、ただ一つの目的のために存在していた。荒野を徘徊する絶え間ないモンスターの波から旅行者を守るためだ。
リナは関所の主要な馬車登録所の近くに立ち、磨かれた銀の杖にもたれかかっていた。彼女は二つの国家の軍隊の間の明確な対比を観察していた。
彼らが最後の数マイルを共に旅してきたヴァエロリアの国境警備隊は、重く連動した鋼鉄の板金鎧を身にまとった巨体の姿だった。彼らは巨大なハルバードと塔盾を操り、難攻不落の防御と土の魔法に依存していた。
境界を越えた向こう側では、ギャロムーア国の警備隊は全く異なる武術の哲学を示していた。彼らは通気性のある織物の絹の上に、軽量の魔法の革のベストを重ねて着ていた。彼らの武器は優雅に湾曲した剃刀のように鋭い軽剣で、迅速な斬撃攻撃のために設計されていた。リナは文字通り、彼らのブーツと鞘の周りで踊るかすかに渦巻く緑色の風の魔法の流れを見ることができた。ギャロムーアは完全に目がくらむような速度と回避に依存していた。
「すみません、隊長」中村海斗がリナの隣に立ち、指揮するギャロムーアの警備隊長に話しかけた。海斗は眼鏡を直し、その分析的な目で羊皮紙の地図をスキャンしていた。「私たちは東方前衛に配属された召喚された英雄です。首都へのルートを計画しています。主要街道沿いに私たちが知っておくべき異常なモンスターの移動はありますか?」
隊長、顎に傷跡のある屈強な男は、温かく微笑み、軽くお辞儀をした。「光栄です、英雄たちよ。主要街道は比較的安全です。ささやきの森の近くで数匹の迷い込んだオークがいましたが、あなたたちのパーティーが対処できないものではありません。ただ、舗装された石の上を進むようにしてください。深い森は――」
「待って」リナが突然遮り、その眉をひそめた。彼女は肩越しに振り返り、木製の補給車の近くで休んでいるクラスメイトたちのグループをスキャンした。サキがそこにいて、髪を編んでいた。他の者たちは水筒から水を飲んでいた。
しかし、非常に特定の、非常に混沌とした要素が欠けていた。
「達也くんはどこ?」リナは尋ねた。深い恐怖の感覚が即座に彼女の胃の中に落ち着いた。
海斗は瞬きし、関所を見回した。「三十秒前まで私たちのすぐ後ろに立っていた。水筒を補充する場所を探すと言っていた」
突然、低くリズミカルな轟音がギャロムーアの森の密な樹木線から反響した。それはかすかな震動として始まり、土の道の小石をガタガタと鳴らしたが、急速に雷鳴のような恐ろしいクレッシェンドにエスカレートした。巨大な塵の雲が木々の上の空に立ち上った。
「女神の名において、あれは何だ?」警備隊長が叫び、その手は即座に湾曲した剣の柄に飛んだ。他のギャロムーアの警備隊は即座に隊形を組み、風の魔法が彼らの刃の周りで燃え上がった。
密な下草から飛び出し、完全に猛烈な速度で疾走していたのは、達也だった。彼の暗いコートは風に激しくはためき、彼は完全に理解できない何かを叫びながら、必死に腕を振っていた。
「彼…逃げてるの?」サキは息を呑み、前に進み出て、その手は回復魔法で輝いた。
そして、前衛と国境警備隊は、まさに何が彼を追っているのかを見た。
森から溢れ出るのは、押し寄せるふわふわした白い雪崩のようなウサギの大群だった。しかしこれらは普通の森の生き物ではなかった。それらは大型犬ほどの大きさで、過剰に発達した筋肉質の後ろ脚、もつれた白い毛、そして輝く血のように赤い目を持っていた。彼らの口は外れ、鋭い鋸歯状の歯の列が空中で激しく食いしばっていた。
【システム分析:中村海斗】
【対象:殺人ウサギ】
【基本ランク:E級(低脅威)】
【現在の状態:群れ精神作動中。数:400以上】
【調整後の脅威レベル:B級(高危険。数分で小さな村を食い尽くす能力を持つ)】
「武器を構えろ!」隊長が咆哮した。「風の障壁を上げろ! 門を突破させるな!」
「達也くん! もっと速く走って、この馬鹿!」リナは叫び、杖を握りしめ、群れの先鋒を凍らせるための広範囲氷魔法を準備した。
しかし達也は速く走らなかった。
彼が国境の境界を越えたまさにその時、警備隊の安全からわずか数フィートのところで、達也は突然ブーツを土に打ち付けた。彼は完全に停止するまで滑り、巨大な塵の雲を巻き上げた。彼は関所の安全に背を向け、迫り来る血に飢えたウサギの雪崩に立ち向かった。
広く傲慢な笑みが彼の顔に広がった。
「毛玉ども、二マイルも追いかけさせやがって」達也は暗く笑い、群れに向かって右手を上げた。彼の周りの空気が突然急降下した。抑圧的で恐ろしい深淵の魔力のオーラが彼の手のひらに凝縮された。
「待って、達也、爆発範囲が…!」海斗は警告した。少年がまさにどんな呪文を練っているのかを悟って。
「【深淵の火炎:暗黒プロミネンス】!」
黒と紫の火の巨大な球体が達也の手から噴出した。暗い炎は轟く竜のように咆哮し、土の道と森の最初の二百ヤードを完全に飲み込んだ。爆発は耳をつんざくもので、空気に激しい衝撃波を送り、警備隊は顔を守るために腕を上げざるを得なかった。その熱だけでも空気中の湿気を即座に蒸発させるのに十分だった。
一瞬、目がくらむような暗い光とオゾンの匂いだけがあった。
厚い黒い煙がついに晴れると、ギャロムーアの警備隊は絶対的な衝撃で凍りついて立っていた。恐ろしいランクBの殺人ウサギの突進する群れは消えていた。
その代わりに、何百ヤードにもわたって焦げた地面に散らばっていたのは、完璧に焼かれた湯気の立つウサギの死骸だった。闇の魔法はそれらを灰に変えていなかった。奇妙で恐ろしい温度制御の応用によって、達也は本質的に即座の大規模なバーベキューを作り出していたのだ。
達也は手の埃を払い、唖然とするクラスメイトたちに向き直った。彼は輝くような笑顔を見せ、親指を立てた。「さあ、見てくれ。首都までの旅の十分な食料が手に入ったぞ」
警備隊長は完璧に焼かれた肉を見つめ、それから微笑む十代の少年を見上げた。ゆっくりと、彼は拍手を始めた。数秒以内に、国境守備隊全体が雷鳴のような拍手と歓声に包まれた。
「信じられない!」一人の警備隊が叫んだ。「一撃でB級の群れを撃退するとは! そして肉を保存するとは! 召喚された英雄たちは本当に別格だ!」
達也は腕を組み、誇らしげに胸を張り、賞賛をスポンジのように吸収した。
リナは長く耐え難いため息をつき、鼻筋を摘んだ。片頭痛が即座に形成されていた。彼女は隊長のところへ歩いていき、その顔は完全に無表情だった。
「拍手を止めてください」リナは警備隊に言った。その声は平坦だった。「あなたたちは彼のひどい行動を正当化しているだけです。森に飛び込んで地元の野生動物を怒らせる前に、少なくとも私たちに知らせてよね、達也くん! あなたは完全に自分の判断で行動しているし、正直、あの得意げな顔で闇の火を掲げているのは信じられないほど不気味よ!」
「不気味? 俺は食料問題を解決したんだぞ!」達也は indignantly に抗議した。
「リナちゃんは厳しすぎるわ」サキが即座に割って入り、達也の隣に立ち、リナをにらみつけた。「達也くんは無実の旅人たちから群れを遠ざけるために勇敢に行動し、完璧に対処したのよ! あなたは素晴らしいわ、達也」
達也は厳かにうなずいた。「見ろ? サキは俺の天才性を理解している」
後ろに立って、中村海斗は眼鏡を直し、その輝くシステムインターフェースが彼の視界から消えていった。彼は完璧に調理された肉の巨大なクレーターを見て、それから達也を見た。
彼の生の魔法出力と身体能力は完全に規格外だ、と海斗は心の中で思った、首を振りながら。彼は高位の闇魔法を使って肉を焦がさずに調理するために必要な正確な熱量を瞬時に計算できる。それなのに、彼の基礎的な知性と知恵のステータスは依然として苛立たしいほど低い。彼は絶対的な力の持ち主でありながら、状況認識はレンガ並みだ。彼がもし司令官と戦うことになったら、神よ助けたまえ。
◆
場所:フロンティエラ王国 シーニスの空洞、24階層
はるか西、まったく異なる国家では、雰囲気は日光とローストウサギを完全に欠いていた。
シーニスの空洞内部の空気は濃く湿っており、古代の苔と銅の匂いがした。迷宮の壁はギザギザした濃い灰色の石でできており、発光するキノコのかすかで不気味な青い光によってのみ照らされていた。
ガキーン!
巨大な錆びた鉄の大剣が和良の重い盾に火花を散らした。衝撃が和良の腕に衝撃波を送ったが、彼は歯を食いしばって前線を守り、そのブーツは石の床に食い込んだ。
「奴はよろめいた! 今だ、佳志!」和良が咆哮した。
和良の盾の影から飛び出して、佳志は臨床的な正確さで動いた。彼の魔法の双短剣は薄暗い光の中で閃き、巨大なアンデッドミノタウロスの膝の腱をきれいに切断した。獣は怒りで咆哮し、重く地面に倒れた。
「とどめは俺に任せろ!」翔太が叫び、近くの岩の露頭から飛び降りた。彼の広刃の剣は、かけられた火魔法で激しく輝き、巨大な弧を描いて切り下ろし、一撃でミノタウロスの首をはねた。獣は黒い灰と輝く経験値の球のシャワーに溶けていった。
数ヤード離れて、ゆあとめいは遠距離攻撃を完全に連携させ、風の刃と貫く光の矢の連射で一群の骸骨弓兵を抑え込んでいた。
陣形の中央に立ち、聖女イヴリンは杖を高く掲げた。「【黎明の守護】! 【軽度体力回復】!」温かい金色の光がティーンエイジャーたちを包み込み、痛む筋肉を和らげ、枯渇した持久力の貯蔵を急速に補充した。
詩織はイヴリンの少し前に立ち、その冷たく分析的な目で洞窟内の全ての動きを追っていた。彼女は剣を抜いておらず、パーティーの絶対的な神経中枢として機能し、敵の位置を叫び、その場で陣形を調整していた。
【システム通知:パーティー経験値が分配されました】
【対象:和良 レベルアップ!】
【対象:佳志 レベルアップ!】
【対象:翔太 レベルアップ!】
翔太は拳を空中に突き上げ、荒く息を切らした。「よし! レベル百四十二! 基礎腕力がまた五点上がった!」
「油断するな」詩織は鋭く命令し、その声が湿った空気を切り裂いた。「再集結しろ。五十%を下回ったら魔力薬を飲め。イヴリン、神のエネルギーを節約しろ。軽い擦り傷には過剰回復をするな」
「了解、詩織さん」佳志は言い、額の汗を拭い、シームレスに聖女の周りの防御的な菱形の陣形に戻った。
詩織は自身のステータスウィンドウを開き、パーティーの全体データをスワイプした。
彼らはシーニスの空洞で三日間連続で修練を続けていた。彼らは地元の冒険者が使う安全な狩猟ルートを完全にバイパスし、容赦なく未踏の24階層の深みへと押し下っていた。
彼らはより強くなっていた。彼らの連携は致命的なよく油の差された機械へと緊密化していた。翔太は衝動的な攻撃を制御することを学び、和良は敵の注意を引く技術を習得し、佳志の急所攻撃の発生率は指数関数的に上昇していた。
しかし詩織が数値を見ると、その表情は冷たく、深く不満げなままでした。
足りない、と詩織は考え、手首の鋭い動きでインターフェースを閉じた。私たちはAランクの階層を登っているが、AランクとSランクの間の差は指数関数的な曲線だ。スカーレットのような悪魔司令官と戦うには…ルシウスの神の鎖を粉砕した怪物を生き延びるには…私たちには圧倒的で絶対的な力が必要だ。
彼女は25階層へと続く暗く大きく開いたトンネルの奥を見つめた。下層から放射される空気は著しく冷たく、重く抑圧的な魔力で濃かった。
「正確に二分間休憩だ」詩織は命じた。ついに自身のレイピアを抜きながら。銀の刃は殺意で唸っていた。「その後、25階層へと押し下る。体が持つまで止まらない」
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