第19話:深紅の死神と密輸者の強欲
作戦室のテーブルに広げられた戦術地図は、重なり合う矢印と防御線の網だった。しかし、フロンティエラの軍事ドクトリンの複雑さにもかかわらず、部屋の中の全ての聖騎士と教会の英雄たちは、詩織の提案に満場一致で同意していた。
「陽動と潜入」詩織は繰り返した。その白い髪が薄暗い光を受けていた。「私たちには長期包囲を行う兵力がない。聖騎士たちは楔形を形成して前線を攻撃し、主要な悪魔の軍の注意を引く。彼らが引きつけている間に、前衛――私のクラスメイトと教会の英雄たち――は戦線を迂回し、司令官たちに直接攻撃を仕掛ける」
それは恐ろしい賭けだった。もし前衛が指導部を「首切り」できなければ、聖騎士たちは包囲され虐殺されるだろう。詩織は決して勝利すると明言しなかったが、彼女の絶対的な確信は疑いの余地を残さなかった。彼らは負けるわけにはいかなかった。
しかし、召喚された英雄たちには厳しい現実が重くのしかかっていた:彼らは究極能力なしで戦わなければならなかった。
詩織の迅速な推論によれば、初めての究極能力使用のペナルティは深刻だが、ある程度ランダム化されていた――彼女の場合は老化、翔太の場合は精神的トラウマ。しかし二回目の使用は、即死を引き起こす可能性のある完全に未知の変数だった。彼らは生の能力値と基礎的なスキルに頼らなければならなかった。その差を埋めるために、王国は彼らに軍用の錬金薬を支給していた。
魔法使い――詩織、聖女イヴリン、ゆあ、めい――は、多数の高密度魔力薬の小瓶をベルトに固定した。前線の攻撃役――翔太、佳志、和良――は体力、腕力、敏捷性、持久力の集中強化剤を飲み干した。和良にとって、体力を強化することは最も重要だった。システムは物理的な耐久力と持久力を最大体力から直接計算するからだ。
彼らがついに進軍を始めたとき、天候自体が息をひそめているかのようだった。北部フロンティエラを覆っていたいつもの抑圧的な魔法の煙が、不思議なことに晴れ、悪魔の要塞のそびえ立つ黒曜石の尖塔へと、直接的に恐ろしく見える道を残していた。
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場所:悪魔の要塞 司令塔
迫り来る人間の軍隊のはるか上で、シラス卿とヴェイン将軍は、空中に浮かぶ巨大な魔法の水晶を見つめていた。
リッチは骨ばった歯を食いしばった。
「彼らは自信を持って行進している。魔法の特徴を見ろ…内部聖騎士団と教会の英雄たちだ。あの軍隊からの周囲の魔力は、召喚された小僧たちに匹敵する。この規模の戦力に対して、大きな損害なしに要塞を無期限に持ちこたえることはできない」
ヴェインは完全に動かずに立っていた。その重い鉄の鎧が水晶の輝きを反射していた。「無期限に持ちこたえる必要はない。我々はただ彼らの精神を砕くだけでいい」
「それが簡単だとでも言うように話すな」新しい、メロディアスで、そして強烈に不気味な声が部屋の最も暗い隅から反響した。
ヴェインはひるまなかったが、シラスは明らかに警戒して数インチ浮き上がった。
影から現れたのは、美しい悪夢を体現した姿だった。彼女は漆黒の布で作られたドレスをまとい、それが脈動するリズムで輝くネオン赤のトリムで強調されていた。それはまさに血管を流れる血のように。彼女のスカートの優雅なゴシックフリルは、肩とすねに固定された暗く剃刀のように鋭い装甲板によって暴力的に対比されていた。
しかし、部屋を麻痺させたのは彼女の目だった。それらは鮮やかな発光する深紅で、理性を失った容赦ない飢えで輝いていた。彼女の肩に担がれていたのは物理法則を無視する武器だった:魂刈り。暗黒の竜の融合されたギザギザの骨から完全に鍛造された、巨大な湾曲した鎌で、息苦しい黒い力の波動を滴らせていた。
クリムゾン・スカーレット。
「心配しすぎだ、老骨」スカーレットは笑った。その音は割れるガラスのようだった。「私が対処できる。率直に言って、楽しむのに君たちや裏切り者は必要ない」
ヴェインが応答する前に、重い鉄の扉がきしんで開いた。半悪魔の兵士がよろめき込み、必死に敬礼した。「司令官たち! 人間の軍隊が外側の境界を突破しました!」
ヴェインもシラスも動かなかった。しかしスカーレットの深紅の目がハイビームのように燃え上がった。恐ろしい陶酔的な笑みが彼女の顔を割った。虐殺への飢え――彼女の手の下で人間の骨が砕ける交響曲を聞くという必死の欲求――が明確だった。何も言わずに、彼女は消え去り、空中に赤い光の軌跡だけを残した。
◆
場所:前線
戦場は鋼鉄、魔法、そして轟く悪魔の不協和音で炸裂した。
詩織の計画通り、聖騎士たちは銀の津波のように悪魔の歩兵に激突し、その聖なる力の波動が下級のモンスターを焼き尽くした。その混乱を利用して、詩織は自分の前衛と教会の英雄たちを中央直通で導き、要塞の中庭で待つ司令官たちを直接狙った。
ヴェインとシラスが待ち構えていた。しかし彼らのわずかに上で、片手で巨大な骨の鎌を回転させながら、スカーレットが浮かんでいた。
数人の教会の英雄たちが立ち止まり、その顔から血の気が引いた。ささやきが彼らの階級に広がった。
「あれは…クリムゾン・スカーレットか?」一人の騎士が詰まるように言った。「深淵の死神?」彼女は教会の最も暗い記録の中の伝説だった――通常の死神よりはるかに上の階級に分類される異常者で、戦争を劇場のパフォーマンスのように扱うことで知られていた。
「彼女の存在で陣形を崩すな!」詩織は刀を抜きながら命令した。「分散しろ! 彼らに範囲攻撃魔法を組み合わせさせるな!」
詩織は素早く分担を指示した。「聖女イヴリンと私でリッチを押さえ込む! 教会の英雄たちは死神を孤立させろ! 翔太、佳志、和良、ゆあ、めい――ヴェインを引きつけろ! 詠唱させるな!」
「喜んで」翔太は唸り、その広刃の剣は霜で輝いた。
聖女イヴリンは即座にひざまずき、聖なる杖を凍った地面に打ち付けた。巨大で複雑な金色の魔法陣が前衛全体の下に現れた。彼女は最も長く、最も魔力を消費する呪文の詠唱を始めた。
「天より降り注げ、創造の聖なる光よ! 人の肉の疲れを洗い流し、制限の鎖を砕き、我が戦友に英雄の神聖な地位を授けよ! 女神の名において、内なる眠れる力を呼び覚ませ!」
「ヒーラーを殺せ!」シラスは金切り声を上げ、即座に巨大な灼熱の青い火球を物質化し、イヴリンの頭に向かって直接投げつけた。
詩織が遮った。彼女の闇魔法を導き、彼女は凝縮された黒い虚空エネルギーの障壁を具現化した。青い炎は暗い盾に激突し、二つの対立する魔法が優位性を競う中で激しくシューッという音を立てた。詩織は歯を食いしばり、そのブーツは地面を後退したが、障壁は持ちこたえた。
「神の鎮魂歌:創世の昇華!」イヴリンは叫んだ。
金色の魔法陣がまばゆい閃光で炸裂した。温かく圧倒的な力の高まりが人間の戦士たちを洗い流した。スカーレットの力の波動によって引き起こされた純粋な恐怖は激しく洗い流され、アドレナリンと絶対的な自信の高まりに取って代わられた。
中庭の向こう側で、ヴェインは生徒たちに近づいた。彼は大剣を抜かなかった。むき出しの装甲された拳は握りしめられ、その死んだ目は翔太と和良を、ただの迷惑な虫けらであるかのように見ていた。それは過小評価の露骨な表れだった。
「【結晶雪崩】!」翔太が咆哮した。
翔太の刃から巨大なギザギザの氷河が噴出し、凍った津波のように中庭を駆け抜け、ヴェインに直接向かった。
ヴェインは回避しなかった。彼は後ろ足を踏ん張り、右の拳を引き、純粋な非人間的な運動エネルギーで拳を放った。その一撃の衝撃波が雪崩の先端を粉砕した。彼はそれに続いて壊滅的な回し蹴りを放ち、残りの氷を無害なきらめく塵に完全に粉砕した。
氷が晴れると、ヴェインは左手を上げた。彼の人差し指に載っていたのは、ギザギザの黒曜石の指輪だった。
彼の深淵の儀式:聖なる追放の長い詠唱の代わりに、指輪が燃え上がり、即座に弱体化効果を発動させた。息苦しい黒い魔法の脈動が外側に広がり、前衛の祝福を吸収し、その能力値を抑圧しようとした。
しかし、黒い脈動はイヴリンの創世の昇華の残る金色の力の波動に直接激突した。二つの巨大な魔法が空中で互いに擦れ合い、金属を引き裂くような大きな音を立てた。イヴリンの強化効果は指輪の弱体化効果を完全に中和した。前衛の能力値は急上昇しなかったが、急降下もしなかった。それらは完璧で健全な通常の状態を保った。
うまくいった、と詩織は鋭く息を吐きながら思った。
しかし彼女の安堵は、湿った嫌な砕ける音によって打ち砕かれた。
詩織は右に目をやった。教会の英雄たちはすでに混乱していた。スカーレットはヒステリックに笑い、目で追えない速度で動いていた。彼女は魂刈りを大きく弧を描いて振るった。一人の教会の英雄が魔法の盾を掲げたが、骨の鎌は濡れた紙のように神の金属をせん断し、彼の胸当てに巨大な血まみれの裂傷を刻み、彼を要塞の壁に吹き飛ばした。
「もっと! もっと血を流して!」スカーレットはくすくすと笑い、自分の頬の血の一滴を舐めた。
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場所:100階層 絶対深淵
虐殺のはるか下で、草薙京也はソフィア・ヴァイルブラッドの向かいに快適に座り、世界のまさに基盤を分析していた。
「分からない」京也は言った。その金色に縁取られた目は魔王に固定されていた。「もしカミヤの領域を打ち倒すつもりなら、なぜお前はまだこの湿った地下室に座っているんだ? ただ出て行けばいい」
ソフィアはグラスの中の暗い液体を回し、その表情は読めなかった。「それはそんなに簡単ではない、京也。私の存在はここで重力の錨として機能している。もし私がダンジョンを離れれば――もし『魔王』が玉座を空けば――階層は崩壊する。下層に住む絶対的な怪物たちと、地上の軍隊を指揮する将軍たちは、その抑制を失う。彼らは大陸にあふれ出し、数日で人類を根絶するだろう」
彼女はゆっくりと一口すするとした。「クリムゾン・スカーレットのような存在だ。彼女は頂点捕食者だ。私の力の波動が彼女の最悪の衝動を抑圧していなければ、彼女は王国を屠殺場に変えるだろう」
「クリムゾン・スカーレット?」京也は呟いた。その名前は彼の口に悪い味を残した。「誰だ? 気味が悪いな」
京也の心の中で、洗練されたデジタルな声が割り込んだ。
<分析完了。存在:クリムゾン・スカーレット。歴史的記録では『認められた牙』として記録されている。彼女は深淵の死神として分類される異常者で、魔王ソフィアによって直接的な自治権を与えられている。脅威レベル:壊滅的>
「つまり彼女はお前の配下か」京也は言った。「しかしもし出て行くことが暴動を引き起こすなら、なぜ変装しない? 本当の姿を隠して静かに歩き出せばいい」
ソフィアは優雅にため息をついた。「悪魔は顔を認識しない、京也。彼らは魔力と魂の特徴を認識する」彼女は証拠を示すために瞬きした。彼女の深い紫の目は、突き刺すような不自然な緑に変わった。「私は目も、髪も、声も変えられる。しかし私の力の波動――私の存在の絶対的な密度――はどんな幻影を通しても放射される。私は隠れることができない」
京也が考える間、洞窟は沈黙した。
そして、ノヴァの声が再び彼の意識に響いた。
<提案:宿主は【絶対強欲の万物】の称号を所持しています。【絶対水準誤差の終焉】の理論的応用により、空間的な隔離が可能です。宿主は理論上、魔王を自身のシステム内の静止した亜空間に『吸収』し、削除プロトコルを実行せずに彼女の力の波動を完全に隠蔽することができます>
京也は瞬きした。ゆっくりと、深く不安を掻き立てるような笑みが彼の顔に広がった。つまり、俺は彼女を食べるだけだ。そして彼女を俺の胃の中に密輸する。
京也の態度の突然の変化と、彼の金色の目に宿る暗い輝きに気づいたソフィアは、自身の目を細めた。彼女は身を乗り出し、部屋の影も彼女と共に傾いた。
「私はその表情を知っている」ソフィアは優しく言った。その声は危険なほど静かだった。「今、その壊れた頭の中でどんな恐ろしく悪い考えが処理されているのか、強欲者よ?」
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