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姉に全てを奪われた追放令嬢、辺境の村を再建します〜愛犬が転生した犬人少女と始める内政スローライフ〜  作者: 織部


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騙されていた二人 ※レオナール視点

レオナールとエレノアの視点です。

 レオナールが、ウルフェンハルト侯爵邸へと帰還したが、邸宅はいつにもまして静かだった。

「やけに静かだな」

 馬車を、飛び出してきた執事に預けると、彼とエレノアは早歩きで侯爵の部屋へと向かった。

「執事やメイドはいるようですね」


 仕事の手を止めて、廊下に彼らは整列した。

「お帰りなさいませ!」

 レオナールたちの険しい顔に、少し怯えながら挨拶をした。

「変わりはないか?」

「いえ、アカリ様が御出陣なされました。侯爵はお部屋におられます」

 執事長代行の男が代表して答えた。


「なんだって、どういうことだ。お前もついてこい!」

 侯爵の部屋に入ると、侯爵は木漏れ日を眩しそうにしながらも、ぼんやりと椅子に腰掛け、外を眺めていた。


「何やってるんだ?」

 いつもと違う、あまりに気の抜けた態度の侯爵に、レオナールが声をかける。

「見ての通りだ」

「はぁ……」

 国政を支配する権力者の姿のかけらもない。


「やっと帰ってきてくれたのだな?」

 侯爵は嬉しそうに微笑んだ。

「ああ、遅くなった。色々と話さないといかんことがある」

「私もだ」

 部屋には、レオナールとエレノア、執事長代行とメイド長代行が入ってきていた。


「下がってくれ」

 レオナールが、エレノア以外の二名を退出させようとした。

「いや、構わん。彼らにも知ってもらう必要がある」

「お前がそう判断するなら構わんが。ところで、アカリ様がどこに出陣したんだ? 戦か?」

 屋敷にいる彼女の近衛隊がいないことに気がついた。


「ワールドエンドから、ここに帰る途中、会わなかったのか?」

「ああ、まさか、ワールドエンドに向かったのか? なぜ?」

 家宰の顔に、汗が浮かんだ。


「ははは、安心しろ! お前もわしと同じだな。アカリに騙されている」

 侯爵は愉快げに笑った。

「どういうことだ! 事情を教えてくれ!」

「まあ、座れ! 長い話になる。久しぶりにエレノアのお茶を飲みたいな」


「わかりました。ですが、私も話を聞きたいのです。準備の間、話はお待ちください」

「じゃあ、その間に、少し体を動かそうかな」

 侯爵は立ち上がると、壁にかけてある剣を二振り手に取った。そして、一振りをレオナールに渡す。

 侯爵の部屋の窓を開けると、躊躇なく跳んで外に出た。


「早くこい! レオ!」

「ああ……」

 レオナールは、侯爵の珍しい行動を怪訝に思いながらも、後に続いた。

 まるで、冒険者をしていた昔のようだ。

 庭で向かい合う二人。

 さっきまで呆けていた侯爵の姿は、そこにはなかった。


「なんだ、来ないのなら、こちらから行くぞ!」

 鋭い剣が、レオナールを襲う。

「ははは」

 剣を受けながら、思わず笑いが溢れる。

「侯爵、腕が落ちていないな」


「ああ、隠れて鍛錬していたからな。家族を守るのに欠かせないと思っていたが……」

 侯爵は剣を交えながら、ほんの少しだけ目を細めた。

「まさか、こんなときに役に立つとはな」

 剣戟が響く。

 レオナールは、目の前にいる男を見ながら、懐かしさを覚えていた。


 そこにいたのは、侯爵でも、国政を動かす権力者でもない。

 ただ、昔ともに剣を振るった仲間だった。

「いつまでやってるんですか?」

 エレノアが呆れた声で、部屋の中から声をかける。


「ああ、すまん。侯爵、ここまでです」

 剣を下ろした。

「そうだな、お茶を頼んだが、酒が飲みたくなったな」

 ほとんど酒を嗜まず、昼に飲むことをしない侯爵が呟いたことに、レオナールは驚いた。


「いや、冗談だ。すまん」

 そう言うと侯爵は部屋に戻り、席についた。

 テーブルの上には、鼻をくすぐるハーブティと、作りたての茶菓子が並気が付かないかんでいた。

 侯爵は、手を伸ばして口に運んだ。


「美味いな。さて順番に話そう」

 アカリが、国王に直訴しクライン殿下の逮捕の許可を奪取したこと、王国の閣議でのワールドエンドでの魔石無許可採掘についてのやりとりでトリスに勝ったこと。


「それほどの力を持っていたんですか?」

「ああ、レオ。この部屋に入って何も気づかないか?」

「なんでしょう……わかりました。書類の山になってるはずなのに部屋が片付いてますね。まさか貴方が……」


「ははは、はずれだ。アカリがお前の仕事の代わりをする組織を作ったんだよ。わしは、お前のいた時と同じ、最終判断を下すだけだ」

 レオナールが、執事長代理の方を向くと、彼は頷いた。


「それで、アカリ様はシズカ様を捕まえに?」

「待て待て、話を最後まで聞け」

 侯爵から語られる内容は、レオナールにはとても信じられないものだった

「仲の悪い姉妹だとばかり、いや敵視していると思っていたのですが」


「だから、言ったじゃないか。騙されていたと」

「それは才能のことだとばかり……」

 今度は、エレノアの方を向いた。

 彼女は首を横に振った。

「ところで、出陣とは大げさだな? 彼女の近衞だけなんだろう?」


「いや、王都にいるウルフェンハルト軍を引き連れて行ったよ」

「そんな簡単に軍を動かせるものでは……」

「ははは、ワールドエンドで魔物の襲撃が起きたんだろう? まさか、わしも軍の指揮を譲れと言われるとは思わなかったがな」


 エレノアが、顔面蒼白になり、持ち上げていたティーポットを床に落とした。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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