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姉に全てを奪われた追放令嬢、辺境の村を再建します〜愛犬が転生した犬人少女と始める内政スローライフ〜  作者: 織部


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ウルフェンハルト侯爵 3

父 ウルフェンハルト侯爵視点 最後です


 冒険者ギルドに入ると、御者が受付に言った。

「ウルフェンハルト侯爵が、冒険者ギルド長に会いに来ました」

「何ですって、少しお待ち下さい」

                    夕方の冒険者ギルドには、多くの冒険者が帰還しており人で溢れていた。酒と鉄と汗の匂いが満ちている。熱気と喧騒が渦巻いている。

 クリスが階段の上から、大声で侯爵に向かって叫んだ。

「何の用だ? ウルフェンハルト侯爵様が単身で冒険者ギルドに訪問とは?」

 騒然としていたその場は、水を打ったように静まり返った。先ほどまでの喧騒が嘘のように消え失せる。


「いや、娘のことだ。迷惑をかけた礼をしてしてなかったなと」

「シズカのことか? 迷惑なんてかけられたことは無い。礼は不要だ」

 侯爵を見る冒険者たちの視線には、侮蔑そのものだ。隠そうともしない敵意が混じる。

「やはりな。だが安心してくれ。シズカがここに来ることはない」

 侯爵は自分の予想が当たったと誤解した。

 その侯爵の言葉は意外な反応を引き起こした。空気が一瞬で張り詰める。


「俺たちは、シズカ様に助けられた。そのシズカ様を追放したのは侯爵様だと聞いてるぞ?」

「ああ、娘を切り捨てたと。それで親なのか?」

 一歩、また一歩と距離が詰まる。靴音がやけに大きく響く。

 侯爵は取り囲まれた。気の荒い一部の冒険者からは殺意さえ感じ、思わず剣に手が伸びた。空気が張り詰める。今にも弾けそうなほどに。

「そこまでだ。侯爵がわざわざ来られたのには理由があるはずだ」


 冒険者ギルド長室。

「シズカは冒険者に絶大な人気だ。助けられた者が山ほどいる」

「馬鹿な、シズカは魔術一つ、使えないぞ」

「古い考え方だな。そうだ、面白いものを見せてやろう」

 机の上の資料を、ポンと侯爵に投げた。軽い音がやけに響く。

「なんだこれは?」

「魔物討伐の報告書だ。まあ見たことあるだろう?」

「いや、結果を口頭で聞くだけだ」


「侯爵というのは気楽な仕事だな。レオに仕事を丸なげしすぎだ。黙って読め!」

 それは、帝国の一地方の魔物討伐計画と結果報告。

 複数の侵攻案と決定進行ルート。兵站。人員配置。討伐部隊員の能力、使用武器と防具。予算……。


 ページをめくるたびに、その異様な緻密さが浮かび上がる。無駄がなく、隙もない。

「細かくきちんとしているんだな。組織的に変わったんだな、冒険者ギルドは?」

「ギルドの作成物ではないよ」

「ああ、騎士団の作戦参謀か?」

 クリス子爵は大笑いした。だがその目は笑っていない。


「カイゼンには軍議で会うだろう。何か言ってなかったか?」

「いや……」

「あいつ。他の人間には教えないつもりだな。姑息な。」

 一拍置く。わずかに間を作る。


「これはな、原案は全てシズカが作成したものだ」

 侯爵の思考が止まる。

「もっと言えば、魔物討伐の後半の重要な作戦の計画は彼女の立案だ」

 理解が追いつかない。


「いいか、この国最高の軍師は、お前が追放した娘だ」

 侯爵は、真実に目を見開き、資料を持つ手が震えた。否定しようとして、言葉が出なかった。

「まずい、大きな間違いを犯した」

 それは、執政官任命の件ではない。もう一通彼女に手渡した封筒のことだった。


お忙しい中、拙著をお読み頂きありがとうございます。もしよろしければ、ご評価をいただけると幸いです。又、ご感想をお待ちしております。

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