表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
姉に全てを奪われた追放令嬢、辺境の村を再建します〜愛犬が転生した犬人少女と始める内政スローライフ〜  作者: 織部


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/62

暴かれる嘘

「魔石かな。よく知らんな。珍しい形のものが落ちてるもんだ」

 軽く言い流そうとするが、エイトラの視線は一瞬だけ石に吸い寄せられた。ほんのわずかな、その“間”を私は見逃さない。


 ――あり得ない。

 魔石が、こんな場所に無造作に落ちているはずがない。しかも、この大きさ。拳大のそれは、変わった形に加工されて内側から淡く光を放っている。偶然にしては、出来すぎている。


 エイトラが、魔石を拾い上げようとするが、それよりも、早くカリオンが拾う。

「お前たちのものじゃ無いなら、俺が預かっておく」

「いや、このダンジョンにあったものだから、俺たちのものだ……買ってもいいぞ!」


「売らないよ。それよりも、シズカ。こいつにこの洞窟を案内してもらおう」

「お願い出来るかしら? エイトラさん」

 私の中で、答えがはっきりと形を成した。

 違法採掘――間違いない。


 魔石の採掘と流通は、王国が厳しく管理している。無許可での採掘、隠匿、販売。そのどれもが重罪だ。ここまで揃えば、もう疑う余地はない。

 大魔熊が突撃した理由も明白だ。

 魔石に込められた濃密な魔力。それに引き寄せられたのだ。


 なぜ、エイトラが必死に隠すのか。答えは、すでに出ている。

 私たちは、ドワーフの後に続いて、監視しながら洞窟に潜った。距離は詰めすぎず、離しすぎず。逃げ道は、決して与えない。


「これで、だいたいの場所は見せたぞ。もういいだろう」

 広い洞窟は、二階層になっていた。採掘場所は幾つかあったが、いずれも採掘が中途半端なように感じられた。掘り尽くした跡ではない。途中で手を止めたような、不自然な断ち切れ方だ。


「大したもんは取れん。俺たちも必死にやっているんだ」

 大男のドワーフは、難しそうな顔を見せた。だが、その表情の奥にあるわずかな緊張は消えていない。


「数十人雇っている割には、人数も現場も少ないわね」

 わざとらしくならない程度に、さらりと指摘する。

「よく知ってるな。近頃、魔物が多く出る。大魔熊のようなヤバいやつもな。ガストンたちと共にここを離れている。俺たちは、留守番役だ」


 この男は口がうまい。そして、動揺しながらも、空気を吸うように嘘をつける。今も、一瞬の動揺を飲み込み、即座に話を組み立てている。

 だが、小物だ。


 私の姉、アカリは一瞬たりとも動揺を見せない。いや動揺もしない。そんな人物と関わってきた私には見抜くことができる。

「そう、大変ね」

 軽く流す。


「ああ、残った奴らは柵の修理作業をしている。もういいだろう。俺も指揮をしないといけない」

 帰らせたいのが、手に取るようにわかる。

『そうね、邪魔したわね』

 ――という私がいうと思ってるのだろうか? 残念。


「疲れたわ。宿泊所でお茶でももらおうかしら?」

 一瞬、空気が止まった。わかりやすくて助かる。

 エイトラの顔がわずかに強張る。

「はぁ……あんな汚い場所には……執政官殿を立ち寄らせる訳には……」

 言葉を選んでいるが、拒絶だ。


「お前、シズカ様のご要望を拒否するのか?」

 カリオンが、エイトラを睨みつける。

「あの場は、奴らの居住地でして、勝手に……」

「考え違いをするな。これは要望ではない。命令だ」

 顔を近づけ、鋭い視線を送るカリオンに、エイトラが拒否できず頷く。喉が小さく鳴った。


「まるで、レオナールみたいね。口調まで似てる」

「それは光栄だ」カリオンは笑って答えた。

 鍵が掛かっていた扉も、カリオンの一振りで壊し宿泊所に侵入した。鈍い破砕音が、遅れて響く。


 私には、この場所から立ち昇る魔力が見える。いや、“感じられる”。濃く、淀んだ流れが、奥へと続いている。

 間違いない。ここだ。

「……。もう……。食堂はこちらです」

 諦めたように見せかけて、それでもまだ誘導しようとしている。


 だが、エイトラの進む方向と反対に進む。

「そっちじゃない」

「ううん、こっちよ。私には見えるから」

 だが、廊下を進むと採掘用品の詰まった棚のある壁で行き止まりだ。


「この向こう、いや、棚の下ね」

 きっと何かの仕掛けがあるんだろう。強引に進んでもいいが……。嫌な予感がする。ドワーフは造作も得意だ。

 エイトラは、薄ら笑いをしている。


「主様、これはなんでしょう?」

 クロエが、横の壁に触れると、その魔力に反応して、うっすらとドワーフの古き文字が浮かび上がった。


『力を持つものは扉に触れてはならぬ。盲目のドラゴンは炎を吹けば扉は開く』

 だが、古代文字を知らない者には、ただのデザインにしか見えない言葉だ。


「さあ、何かしら」

 私はとぼけた。そして、エイトラにわざと聞いた。

「これは何?」

「さあ、私も初めて見ました」

 その芝居がかった答えにカリオンはイラついた。


「なぁ、シズカ、こいつを尋問した方が早くないか?」

「ダメよ、私の大切な領民よ。それより、二人でこの棚をどけてくれないかな? 棚が動かない限り、私はここから帰らないからね!」


 あえて軽く、だが逃げ道は与えない。それに、エイトラは嘘を吐くだけだ。

「わかったよ、お前、そっちを持て」

 カリオンは、エイトラと二人で運ぼうとしている。だが、ドワーフは、首を横に振った。


「いや、お前が邪魔だ。どかしてやるから満足しろ!」

エイトラが棚の横にあるくぼみを軽く叩くと、見た目には重くて頑丈そうだった棚が、滑るように横へ動いた。


仕掛けとしては意外と単純なものだった。壊されるのを避けたかったのか、エイトラ自身がその仕掛けを作動させた。


 現れたのは、ただの一面の壁だ。その壁は、私が魔物討伐で見たことのある古き神殿と同じ材料で出来た真っ白な壁だった。


お読み頂きありがとうございます。フォロー、評価もよろしくお願いします。モチベーションに繋がります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ