捕獲
銀色に輝くツノを持つ盲目のミツ首竜が私に迫る。魔術も効かず、治癒魔術も使える。そして、魔力が無尽蔵に地下の奥から竜に運ばれてくる。
「わしの背に隠れておれ!」
炎石の鉱人が、背負った大盾を手に持った。竜の狙いは、なぜか私一人だ。他の人はいないかのように振る舞う。
ミツ首が次々に私へ襲いかかる。
ズドンッ!
炎石が大盾を振り抜く。迫ってきた竜の頭を、分厚い盾が真正面からはね返した。
「ほら、どうした? もっと力を入れんか!」
竜が地面を蹴る。土煙を巻き上げながら、今度は三つの首が同時に襲いかかってきた。
「ぬおっ!」
炎石が盾を構える。
ドガァン!
三つの頭が盾にぶつかり、凄まじい衝撃が周囲に走った。私は、恐怖と風圧で、立っているのもやっとだ。
「きゃっ!」
クロエは、いつでも逃げられるように私の腰に抱きついている。
「計画通り、配置につけ! シズカを囮にする」
「わかった。秘密兵器の出番じゃ」
カリオンたちは、私の楽観的な予想と違う別の手を考えていた。
「あれは何?」
「竜の生け捕り用の鍛造鋼の網じゃよ!」
「こそこそ何かしてると思ったら……あんな物を準備していたのね」
その間にも、竜は炎石の盾へ何度も襲いかかる。
ガンッ! ガキィン!
炎石が踏ん張るたび、地面が沈む。
「ぬうううっ!」
大盾が押し込まれる。
「この程度か!」
炎石が力任せに盾を押し返す。その隙を狙って、ガストンが走り出した。
「今だ!」
力のあるガストンが、鍛造鋼の網を思い切り投げる。網が宙を舞う。ラファーガが両手を広げた。
「そこだ!」
風が巻き起こり、網が一気に上空へ持ち上げられる。蜘蛛の巣のように大きく広がった網が、竜の頭上へ回り込んだ。
「ほお、器用なもんじゃ」
プラドがアカリを守りながら、腕を組んで眺めている。戦いの最中とは思えない余裕が見えた。
「プラド様、手伝って下さいよ!」
「魔術が通じないのだろう。わしには何もできん。応援してるよ!」
「もう!」
その瞬間。炎石が大盾で竜の頭を弾き飛ばした。
「今じゃ!」
ガストンが叫ぶ。ラファーガが風の向きを変える。広がった鍛造鋼の網が、竜の巨体へ一気に落ちていく。
「グルァァァッ!」
三つ首竜が咆哮する。網が竜の頭から身体へ覆いかぶさった。
ガチャン!
網に仕込まれていた金具が噛み合う。
「かかった!」
竜が身体を大きく揺さぶる。
ギギギギギ……!
鋼の網が軋む。竜がさらに暴れる。
すると――
ガチャン!
網が一段、締まった。
「おおっ!」
ガストンが声を上げる。竜は構わず、さらに力を込める。
「グアアアアアッ!」
地面を踏み鳴らし、身体を激しくねじる。
ギギギギギ……!
暴れるたびに、網が竜の身体へ食い込んでいく。
「暴れれば暴れるほど締まる仕掛けじゃ!」
カリオンが叫ぶ。
「よし、そのままじゃ!」
竜がさらに暴れる。
ガチャン!
また一つ、金具が噛み合った。鍛造鋼の網が、ぎりぎりと竜の巨体を締め上げていく。
「グ……グルル……」
さっきまでの激しい咆哮が、次第に低い唸りへと変わっていく。
そして――
ガチャンッ! 最後の金具が固定された。
三つ首竜の巨体が、鋼の網に完全に包み込まれた。荒い息だけが、その場に響く。
盲目の三つの瞳は、何も映していない。
それなのに私は――
なぜか、竜が悲しそうな顔をしているように見えた。
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