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エスピトラ〜妖怪の便利屋〜  作者: ボマー
第一章 のほほんライフとちょっぴりバトル編
17/19

籠もる息子が心配で

オカ研部が訪れたあの日、エスピトラメンバーは何をしていたのか。それを書いていきます。

オカルト研究部が事務所に訪れる8時間前。

時刻は午前8時。


エスピトラの事務所のドアが叩かれた。

「はい」

開くと、そこにいたのは。

「久しぶりだなオグ。実は困ったことがあってなあ」

赤毛の猿の妖がいた。体は小さく、杖をついている。眼鏡を軽く押し上げ、困ったように笑った。

「本当に久しぶりですね、軟泡(やわ)さん」


応接間に入れ、ソファに座らせる。

「えーっとお名前は」

ナルが名前を聞き出そうとしたとき、オグが横から割って入ってきた。

狒々川(ひひかわ) 軟泡さん。狒々の種族です」

「オグの知り合いなのか」

オキミが座りながら聞いてきた。

「ええ、まあ。彼には色々振り回されました」

「ハハハッ!確かに。お前には世話になったよなぁ」


ハハハハハと一頻り笑った後、真剣な表情になった。

「今日は真剣に依頼があって来たんだ」

「どうやらダブルブッキングとか、ストーカー被害とかではなさそうですね」

「え?交際関係・・・・・・?」

ナルが引き気味に呟いた。

「昔はそういうことが多かった。でも今日は違う。(たけし)のことで来たんだ」

「剛?誰だ」

オキミが前に乗り出して聞く。

「軟泡さんの息子です」

「息子いんのかよ」

「いる。最近、全然話してくれないけどな」

「それはよくあることでは」

オグはため息をついて、呆れた表情になった。


「違う、今回ばかりは。実は、ここ四カ月も剛は製作所から出て来てないんだ」

それを聞いた瞬間、オグの顔が変わった。

「どういうことですか」

「昨日、剛にお見合いの話を持って行ったんだ。そしたら、入る前に社長秘書に突っぱねられた。そこまではよくあるんだが」

「よくあるんだ」

「帰ろうとした時、従業員とすれ違って聞いたんだ。『最近、社長って自室から出てこないで閉じ籠もってるよな』って話してるのをな。それで製作所の近所に聞いて回ったら、四カ月くらい剛は出てないらしい」

それを聞き、オグは顔を険しくする。

「確かにそれは異常ですね。製作所に行って様子を見てみましょうか」


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


社員と軟泡は狒々川製作所の前にいた。

自動ドアから中に入る。目の前には受付がある。

「普通の会社って感じだね」

「こんにちは。弊社にお越しになったのは、どのようなご用件ですか」

受付の猿の妖が尋ねてくる。

声からして男性なのだろう。

「社長の狒々川さんに緊急の用件があって来ました」

「約束はされていないと」

「はい」

「問い合わせてみますので、お名前を控えさせていただいても、よろしいですか?」

「はい。エスピトラの駄目オーガスト、ナル・アイシス、オキミ、鷹田ひなと。それと狒々川軟泡です」

オグが代表して、全員分の名前を伝える。

「エスピトラの駄目オーガスト様、ナル・アイシス様、オキミ様、鷹田ひなと様。狒々川軟泡様ですね・・・・・・少々お待ちください」

彼は内線をかけ始めた。


少しして。

「オーガスト様とナル様、オキミ様は社長室へ。ひなと様と軟泡様は別室へとご案内させていただきます」

「え?ぼくは別室ですか」

「何で分けるんだよ」

「それはわたくしにも分かりません。ですが、狒々川はそうしないと皆様を入れない、と申しております」

「えぇ・・・・・・。じゃあ仕方ないか。ひなと君、気をつけてね」

「はい。分かりました」


オグ、ナル、オキミの三人は社長室に着いた。

案内した社員がノックする。

「社長、失礼いたします」

「おう」

中からぶっきらぼうな返事が聞こえた。

ドアが開かれると、そこにいたのは。

やはり赤毛の猿の妖だ。ツナギを着た彼はガッチリとした体型で、背は180cmほどありそうだ。

そんな剛健さとは裏腹に、目にクマがあり、顔も少しやつれている。

「久しぶりだな、オグ」

「そうですね。ところで剛くん。最近ちゃんと食べてないように見えますが、大丈夫ですか」

「大丈夫だ、これくらい。悪いが猿岸(さぎし)は下がってくれ」

「了解しました」

先ほど三人を案内した社員が、一礼して部屋から出ていった。


「さて。お前達は何の用件で来たんだ」

「軟泡さんから依頼されて来ました。ここ四カ月もの間、製作所から出てないんですよね」

「まあな。なるほど、親父が依頼したのか―――良かった。手間が省けた」

「手間・・・・・・?剛さんはおれらを呼ぼうとしてたってこと?」

「まあな。お前達に頼みたいことがあってな」

そう言うと、剛はリモコンのボタンを押した。

すると、奥の壁が左右にスライドし、部屋が現れた。


そこにあったのは―――

「ロボットか?」

三体のロボットらしきものだった。

右のものは、ローブを着て尖った帽子を被り、杖を持っていた。

左のものは、ピエロの格好をして、手にはジャグリングのピンやボールを持っている。

真ん中のものは、着物を着ており刀を腰に帯びている。

「これらが俺なりの『人造妖怪』だ。今からお前達には、こいつらと戦って―――」

「お断りします」


「「え?」」

オグが即答した。ナルとオキミは驚きを隠せない。

「え。オグさん、なんで断るの?」

「私は剛くんが3歳の頃から知ってます。だから私達が人造妖怪達と戦った後、彼がどうするのかも分かっています」

「どうするの?」

「まず私達が勝った場合。剛くんは次こそは勝とうと、改良するために再び閉じ籠もるでしょう」

「そっか」

「次に私達が負けた場合。剛くんは人造妖怪達の攻撃や防御にムラが無いか、戦闘データを解析して、より良い戦闘ができるよう改良に努めるでしょう。もちろん、また閉じ籠もります」

「どっちにしても籠もるのかよ!?」

「確かにそれじゃ、戦っても、剛さんが出てこなきゃ意味ないね」

二人はそれで納得した。


「ハッ。さすがオグ。俺のことをよく分かってる。だが、妖怪の開発者達にとって人造妖怪が技術力の詰まった、開発者人生の集大成であることも知ってるよな」

「ええ。開発者達にとって人造妖怪は恒久の夢ですね」

「俺はそれを叶えたい。自分の努力が、夢見た時間が、報われるのを確かめたい。だから戦ってほしいんだ」

「それとこれとは別です。君の健康を思ってやめさせていただきます。無理はめっですよ。めっ」

だめだめと指を振るオグ。

対応が幼児に対するものに見える。


「まあ、そう言うと思ったよ。だが、これを見ても断る、なんて言えるのかな?」

剛は別のリモコンのボタンを押した。

するとスクリーンに映像が映し出された。

どうやら、どこかの部屋を映しているようである。

そこにいたのは、カモノハシの妖と―――

「人間?」

どちらも白衣を着ており、研究所の者であると推測できる。

二人はソファに座り、何やら話し合いをしているようだった。

「何だよこれ」

すると、奥のドアが開かれ、新たに二人入ってきた。

「ひなとくんと軟泡さん!?」

先ほど受付で分かれた二人が入ってきたのだ。

「どういうことだよ」


剛は不敵な笑みを浮かべた。

「こいつら全員、人質だ」

「はあ!?」

「なっ!ざっけんな!」

ナルとオキミが声を荒げる中、オグは黙っていた。

しかし、その表情は強張り、何かを抑え込んでいるようだ。

「まさか、お前が()()()を放っておくわけないよなぁ?」

剛は映像の中の人間らしき者を指差した。

「剛くん。ハッタリを使うなんて君らしくないですよ」

「ハッタリじゃない。本気だ」

「そうですか―――分かりました。この勝負、受けて立ちましょう」

「オグさん!?なんで急に―――」

「ハハハッ!だろうなぁ!なんせ彼は―――」

剛は一拍置いて、続けた。


「次郎さんは、お前の宿主なんだからな」


「え・・・・・・」

「宿主?あいつが・・・・・・」

二人はじっと次郎と呼ばれた男を見る。

ガリガリに痩せた彼は、顔もやつれているように見える。

「はあ。本当はもっと良いタイミングで、明かすつもりだったんですがね」

「良いタイミングって―――」

「それって明かすつもりなかったんじゃねぇの」

「そんなことよりも。今は人造妖怪達と戦い、人質を救うのが優先です」

またはぐらかされてしまった。


「オグはそう言ってるが、二人はどうする?」

「戦うに決まってんじゃん」

「オレも。売られたケンカは買うぜ」

「ははっ。よくぞ言ってくれた。戦闘不能になったら敗北だ。じゃ、行ってらっしゃーい」

剛は壁に付いているレバーを引いた。

すると、三人の足元が抜けた。

「え?」

「は?」

ナルとオキミは訳が分からないまま、落ちていった。

オグは視線を変えず、剛を睨みつけたまま落ちた。


「さてと。一体どんなデータが取れるか」

剛はまた別のリモコンのボタンを押した。

再び、スクリーンに映像が映し出される。

しかし今度は、落ちていった三人が三部屋に分かれ、それぞれの様子が映し出されている。

ここから観戦するつもりなのだ。

ゆっくり湯呑に煎茶をついて、煎餅片手に高みの見物を始めた。


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


「初めまして。僕は次郎って言います。いつも、娘のオグがお世話になってます」

「ええ!?」

一方、こちらは人質達のいる別室。

次郎がひなとに自己紹介したところである。

「え?じゃあ、あなたがオグさんの宿主―――?」

「うん、そうだよ。よろしくね」

「そうなんですね・・・・・・」

いきなりの新事実に、衝撃が収まらない。


「ワタクシは、ハシハシ・カモノ・カモッシーと申します。カモカモ研究所の所長ですぞ!」

横からカモノハシの妖が自己紹介してきた。

「えっと。カモッシーさん、でいいんですよね?」

「はい!ちなみに次郎さんはワタクシの助手。どんくさくてドジばかり起こしますが、頑張ってますぞ!」

「あっはは。確かにそうですね〜」

次郎は悲しむことも怒ることもなく、ニコニコ笑っている。


(なんなんだろう、この人たち―――)

今、密室に閉じ込められているようなものなのに。

出してもらえるのかと、不安でいっぱいなのに。

あまりにもこの二人は―――明かるすぎる。

「これがこの二人の空気感なんだ」

軟泡が小声で耳打ちしてきた。

「はは・・・・・・なるほど」

社員に「そのうち迎えに来ますので。それまで出ないでください」と言われて10分。

ドアには鍵がかけられ、完全密室状態。

もう既に出たいと、ひなとは密かに望んでいた。

                      続く

ちなみに軟泡は83歳、剛は50歳です。


『続く』忘れてました・・・・・・。

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