表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスピトラ〜妖怪の便利屋〜  作者: ボマー
第一章 のほほんライフとちょっぴりバトル編
16/19

オカ研部2年目

葉桜になり、新緑が生き生きと輝く5月。

優生が2年生になり、遅めに入った部活動にもすっかり馴染んだ頃。

オカルト研究部に新たなメンバーが入った。


神代(かみしろ)いびつと申します。特に妖怪に興味があって、様々な怪異について調査すると知り、入部を決めました。よろしくお願いします」

赤い切れ目の彼は、美しい顔立ちをしている。

(なんかオカ研ってイメージがないなぁ)

それが優生の、いびつに対する第一印象であった。

「よろしく!いやぁ、今年は春から新入部員が入ってくれて嬉しいなぁ」

押頼がニコニコと笑顔になった。

「去年は優生くんの教室まで行って、わざわざ頼んできたんだもんね〜」

御影は少し気怠げに、頬杖をついている。

別に体調が悪いのではない。これが彼女の普通なのだ。


「え?小述先輩は自分から希望したわけじゃないんですか?」

「ええっと、まあ。廃部の危機に瀕してて、入部を頼まれたんだ。最初は慣れないし、調査も怖かったんだよ。それでも色々なことを調べて考察を立てて。それを繰り返してるうちに、人智を超えた科学で解明できない、不思議なことを追うロマンに気づいてね。部活動が楽しくなったんだ」

それを聞いた3年生二人はうんうん頷いた。

「そうなんですね」

そう言い、ニコッといびつが笑う。

そのとき、優生は寒気を感じた。

彼の笑顔がどこか薄っぺらいものに感じたのだ。

(信用、していいのかな・・・・・・?って。いやいや普通の高校生だよ?何疑ってるんだよ)

失礼な考えを切り捨てる。せっかく入ってくれた後輩になるたる無礼だ。


「実は!いびつくんが驚くようなビッグニュースがありまーす!」

「ビッグニュースですか?」

「おれ達オカ研は去年、実際に妖怪と会って、さらに取材までできちゃいましたー!」

「え!?」

いびつは目を見開いて驚き、前のめりになった。

「どうやって!?受けた相手は!?それをまとめた物は!?」

さっきの爽やかな姿とは打って変わって、グイグイ押頼に迫る。

「おお・・・・・・興味津々だねぇ。ええっと、確かこの引き出しに―――お。あった」

マル秘の文字が透けて見える、『妖怪の生態調査』と表紙に書かれた紙の束。

机に上にぽんと軽く置く。

「見せてもらえますか!?」

「あ。うん。いいよ・・・・・・?」

いびつの勢いはまだ収まらない。

若干、押頼が引いている。

いびつがとても真剣な表情で束をめくる。


少しして、パタンと最後の一枚を閉じた。

「ありがとうございます。あの、この取材を受けた“エスピトラの皆さん“というのは?」

「ああ。便利屋をしてる妖怪の方々だよ」

「便利屋。へぇ・・・・・・」

面白そうにいびつは目を細めた。

それに気づいたのは優生だけだったが。

押頼と御影も何か感じたようで、顔を見合わせて困惑しているようだった。

(なんか、変わった子だ・・・・・・)

いびつ以外の三人が同時に思ったことだ。


「その。どうだったかな」

何か言わなければ。

そう感じ、優生がいびつに聞いた。

「どうだった、というのは?」

「取材の記録を見た感想を聞こうかと」

「そうですね―――妖怪については僕も独自に調べていたんですけど、初めて知ったことばかりです」

「面白かった?」

「はい。さらに興味が深まりました。あの、もし良ければ。この資料を貸していただけませんか」

「え。えっと、それは―――」

優生は押頼の方を向く。

この判断は部長である彼に委ねるべきだ。

「別にいいよ〜」

押頼は漫画を貸すくらいの軽いノリで返答した。

「いいんですか!?」

そんな簡単に持ち出して良い物なのか、これは。

優生が聞くと。

「大丈夫でしょ。ネットで拡散したとしても、誰も信じないと思う。オグさん達もそう考えて取材を受けてくれたんだろうし」

「おお・・・・・・なるほど」

「あ。いえ、僕は拡散とかするつもりはありません。ただ、家で調べていることの補助資料に使いたくて」


「え〜。なになに、家で調べてることって」

御影が聞くといびつは首を横に振った。

「いえ、話してはダメなんです。呪われますよ?」

呪われる―――

その一言に三人は背筋を凍らせる。

「いや。だとしたらさ、いびつくんは大丈夫なの?」

「大丈夫です。対策はとってますし、一人だけなら呪われないみたいですから」

「そうなんだ・・・・・・」

優生はそう返しながらも。

(なんか、都合の良い呪いのシステムだなぁ)

と、内心思っていた。


「あの。できれば、エスピトラの皆さんにも会ってみたいんですが―――」

(え!いきなり!?)

突然言われても、向こうも忙しいだろうに。

優生はそう思っていたが。

「ん〜じゃあ、行ってみる?」

「御影先輩?」

「行ってみようか。エスピトラはいつも閑古鳥が鳴いてるって噂だし」

「押頼先輩?ていうか誰から聞いたんですかその噂」

「事務所の近所の人。実はエスピトラの便利屋としての実態も調べてたんだよね〜」

「何のために」

「困ったときの駆け込み寺にさせてもらおうかと思って。やっぱり呪いとか祟りって怖いじゃん」

「えぇ・・・・・・」

いつの間にそんなことまでしていたのか。

「じゃあ決まりですね!行きましょう!」

そして、いびつは目を輝かせ、行く気満々だ。

他の二人も行くつもりのようだし・・・・・・。

(行く、しかないよね)

社員の方々に申し訳無いと思いつつ。

事務所に向かうべく、四人は校舎を出た。


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


数十分後。

四人は事務所の扉の前で呆然と立ちつくしていた。

なぜなら―――

「『本日は諸都合により全員、出掛けております。依頼は翌日より承ります。どうぞ、ご理解の程よろしくお願いします』だって」

そんな内容の張り紙が貼ってあったからだ。

「よりにもよって今日か。もってねぇーおれら」

四人一斉にため息をついた。

「仕方ない。帰ろっか」

落胆しつつ、階段を下りていた、そのとき。


「嘘だああああ!!」

耳をつんざくような絶望の声が聞こえた。

下の喫茶店“招福“の店内からだ。

「何かあったのかな」

「入ってみる〜?」

3年生二人がドアに手をかけた。

「え。いや、こういうのは関わらない方が―――」

優生が止めに入るも、時すでに遅し。

二人はドアを開いた。

「いらっしゃいませ〜四名様ですね。どうぞ」

そして、こちらに気づいた店員に案内された。

(ああ・・・・・・もう)

こうなったら仕方ない。入るしかない。


入った瞬間、客二人がこちらを見た。

一人は可愛らしい顔立ちの、桜色の瞳の女性。

もう一人は眼鏡をかけた、まるまる太った男性。

ドキッと心臓が跳ねる感覚がした。

しかしそれは数秒のことで。

その人達はすぐに別の方向を見た。

(なんだったんだ・・・・・・?)

疑問を胸に残し、席に着いた。


「うう。オグさんいないって、どういうことだよぉ〜。なあ、そなぁ」

先ほどの女性の、隣の男が唸っていた。

声を聞いて、先ほど叫んでいたのは彼だと分かった。

「うるさい毒太。急な依頼が入ったらしいわよ」

「お前親友だろ。らしいって何だよ、らしいって」

「メールで来ただけだから詳しいこと知らないの」

「クソぉ。よりにもよって、俺が休んだ日にぃ。ここ最近はオグさんが招福でバイトしてるって、ファンクラブの掲示板にあったのに・・・・・・」

男は机に突っ伏し、拳を握りしめていた。

「あ〜。オグが大好きな奴らが勝手に作ったファンクラブね。あんた、あれに入ってたんだ」

女性は頬杖をつきながら、意外そうに言った。


「あちゃ〜。今日オグちゃん、いねぇみたいだな。ツイてねぇな、如月」

頭の禿げた男性が、眼鏡の男性の背中に手を置いた。

二人ともスーツを着ている。上司と部下、といったところか。

「あはは。そうみたいですね―――」

苦笑いしつつ、眼鏡の男性はコーヒーを飲む。


「優生くん。注文まだ決まってないよね」

はっとして、正面に向き直る。

向かいに座った押頼がメニュー表を差し出してきた。

「すみません。なんか、周りが気になって」

受け取り、メニュー表をめくる。

「そっか。てかさ、周りの人達の話題、オグさんのことばっかりだよね」

「あの。そのオグさんってどんな方なんですか」

隣のいびつが横から聞いてきた。

「えっとね。エスピトラの社員で、もちろん妖怪だよ。権化って種族で、人のある一つの感情を長い時間集めて生まれる、みたいな感じ」

押頼が軽く、簡潔に説明した。

「人から生まれるんですか?」

「まあ、そういうことだね」

「なるほど―――」

心なしか、いびつの目から光が消えた気がする。

「優生くん、注文は〜?」

先ほどまでスマホに夢中だった御影が聞いてきた。

痺れをきらしたのだろう。

「あ。すみません。僕はアイスカフェラテで」

店員を呼び、押頼が代表して皆の注文をした。


少しして注文の品々が来た。

「そういえば、いびつくんの歓迎会やってないよね」

「確かに〜。じゃあ、ここでオカ研部の新入部員に〜」

「「「「カンパーイ!」」」」

それぞれのグラスの縁をぶつけ、いびつの入部を祝う。

その後は何の他愛もない話をして、楽しい時間を過ごした。


代金はいびつ以外の三人が割り勘で支払った。

店を出て、そこで解散する。

「じゃあ、また明日。明日はオグさん達いるといいけど」

「そうだね〜。5時過ぎても帰って来ないし、今日は無理かも。じゃあ、バイバーイ」

3年生二人が先に去っていった。

全員、学校を出た際に鞄や荷物は持ってきていたため、あとは帰宅するだけなのだ。

「じゃあね。また明日、いびつくん」

「さようなら。また明日もここに来ましょう、小述先輩」

優生といびつも分かれ、オカ研部の今日の活動は終わりを告げた。


  ▲  ▲  ▲  ◆  ▲  ▲  ▲


優生が去った後。

いびつは、まだ招福の近くにいた。

振り返り、エスピトラの事務所を見上げる。

「人間の真似事か?妖怪共。お前たちがそんなことをして、何を企んでいるかは知らない。だけど―――」

視線の先にある窓に手を伸ばし―――拳を固めた。

「いつか、ぶっ壊してやる」

くるりと向きを変え、歩き始めた。


不穏な空気が、エスピトラに流れ出す―――。

今回はほとんどどころか、全くエスピトラメンバー出なかったですね・・・・・・。


読んだら分かると思いますが、エスピトラは副業OKです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ