プロローグ3
教室の隅で血と紅茶にまみれて倒れ伏すルアーを見下ろし、教卓から重い足取りで歩み寄ってきた男がいた。
このクラスを受け持つ担任教師だ。
「おい、ルアー。いい加減にしろ」
カズの頭上から降ってきたのは、生徒たちを制する言葉ではなく、深いため息と苛立ちの混ざった声だった。
「……」
ルアーは床に伏せたまま、何も言わずにただ教師の磨き上げられた革靴を見つめていた。
「周囲の雰囲気を悪くし、クラスメイトの貴重な時間を奪うなと言っているんだ。お前のような【ジョブ不適合】の無能をこの学校に置いてやっているだけでも、国からの慈悲だというのに……これ以上、学校の顔に泥を塗るつもりか?」
言葉が終わるか終わらないかのうちに、容赦ない衝撃がルアーの脇腹を襲った。
教師が手にした重厚な指導用の木製教鞭が、容赦なく振り下ろされたのだ。
——バシッ!!
「ぐっ……」
「返事すらまともにできんのか! 15になってもスキル一つ得られず、17になっても職すら得られぬゴミが! お前が存在しているだけで、私の評価まで下がるのだ!」
背中、肩、腕。
あざができるどころではない。皮膚が裂けるほどの力で、教師は鬱憤を晴らすかのように何度も木鞭を叩きつけてくる。教室内に鈍い打撃音が響き渡り、生徒たちはそれを娯楽のようにニヤニヤと眺めていた。
ルアーは歯を食いしばり、声の漏れるのを必死に耐えた。
助けてくれる人間など、この学校には誰一人としていない。大人すらも、自分を痛めつける側にしか回らないのだ。
(……誰も……絶対に、信用しない……)
暴力の嵐の中、ルアーの瞳はただ冷たく、暗い絶望の底へと沈んでいった。




