第4章・第14話 国家崩壊
翌朝。
ギルド本部は朝早くから慌ただしかった。
勢いよく扉が開く。
「ギルド長!」
通信管理担当の職員が息を切らしながら駆け込んできた。
「天空観測統制域が襲撃されています!」
部屋の空気が一瞬で凍り付く。
「何だと?」
フェルドが立ち上がった。
「通信網が次々と停止しています!」
「施設内部へ大型コラプトが侵入!」
「警備隊だけでは抑えきれません!」
アルはシルフィードを見る。
シルフィードはすぐに頷いた。
「行こう。」
「天空観測統制域を守る。」
ハルトも腰の双剣へ手を添える。
「急ぎます。」
『くぅ!』
クウも力強く鳴いた。
四人はすぐにギルドを飛び出した。
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王都上空。
巨大な浮遊施設。
天空観測統制域。
風国家オルニスの中枢施設。
通信。
観測。
空路管理。
その全てを担う国家の心臓部だった。
しかし今。
施設各所から黒煙が立ち上っていた。
砕け散る通信結晶。
停止した観測装置。
避難する職員達。
「そんな……。」
シルフィードが言葉を失う。
昨日まで平穏だった施設は、
黒い瘴気に侵されていた。
フェルドが周囲を見渡す。
「侵食はかなり進んでる。」
「放置すれば通信網そのものが止まる。」
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その時だった。
ギャアアアアアアアッ!!
耳を裂く咆哮。
巨大な黒い影が施設中央へ降り立つ。
通常種の数倍はある巨体。
黒い瘴気を纏った巨大な鳥型コラプト。
翼を羽ばたかせるだけで、
観測塔の一部が吹き飛んだ。
アルは思わず息を呑む。
「大きい……。」
フェルドが剣を抜く。
「あれは上級コラプト。」
「普通の上級魔物じゃねぇ。」
巨大な鉤爪が施設を抉る。
床が崩れる。
通信結晶が砕け散る。
「コラプト化によって異常な力を得た個体だ。」
「このまま暴れ続ければ、この施設は持たねぇ。」
シルフィードも弓を構える。
「ここで止める!」
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四人は一斉に駆け出した。
ハルトが双剣で懐へ潜り込む。
シルフィードの矢が空を裂く。
フェルドが真正面から受け止める。
アルも剣を握り締めた。
上級コラプトは圧倒的だった。
風圧だけで吹き飛ばされる。
一撃一撃が施設を破壊していく。
「アル!」
シルフィードの矢が右翼を射抜く。
ハルトが脚を斬る。
フェルドが巨体を押さえ込んだ。
「今だ!」
アルは一気に踏み込む。
「はあぁぁぁぁっ!!」
渾身の一撃。
剣は黒い核を貫いた。
ギャアアアアアア!!
巨大な身体は黒い霧となって崩れ落ちた。
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「終わった……。」
アルが息を整える。
しかし。
シルフィードは首を振った。
「違う。」
「侵食が止まってない。」
黒い瘴気は今も施設最深部から溢れ続けている。
ハルトが鋭く周囲を見る。
「誰かがいる。」
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四人は施設最奥へ向かった。
そこに立っていたのは、
王直属近衛隊長だった。
ハルトの表情が固まる。
「隊長……?」
シルフィードも驚きを隠せない。
「どうしてあなたが……。」
近衛隊長の背後では、
侵食された制御結晶が黒く脈動していた。
彼が施設を内部から破壊していたのである。
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「王命だ。」
近衛隊長は静かに言う。
「この施設を停止させる。」
ハルトは声を荒げた。
「そんな命令を王が出すはずがない!」
「目を覚ましてください!」
近衛隊長は苦しそうに頭を押さえた。
「私は……。」
「逆らえ……。」
「王を……。」
その瞬間。
黒い靄が全身を覆う。
瞳が完全に黒く染まった。
「グァァァァァッ!!」
理性を失い、
アル達へ襲い掛かる。
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王直属近衛隊長。
その実力は本物だった。
ハルトと互角以上に斬り結び、
フェルドの一撃を受け流し、
シルフィードの矢を避ける。
アルも押し返される。
四人は連携を変えながら少しずつ追い詰めていく。
「ハルト!」
「右を!」
「了解!」
双剣が隊長の体勢を崩す。
「アル!」
シルフィードの矢が剣を弾いた。
フェルドが正面から押し込む。
「決めろ!」
アルは全力で踏み込んだ。
「うおおおおおっ!!」
一閃。
剣が隊長を貫く。
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黒い靄が静かに消えていく。
隊長は苦しそうに笑った。
「……すまない。」
「王を……。」
「どうか……救ってくれ。」
その言葉を最後に、
静かに崩れ落ちた。
シルフィードは目を閉じる。
「……必ず。」
ハルトも拳を握り締めた。
「必ず王を救います。」
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フェルドは施設全体を見渡した。
「応急復旧は始められる。」
「職員達!」
「設備の確認を急げ!」
職員達が次々と動き出す。
通信は最低限だけ回復した。
しかし侵食は完全には消えていない。
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シルフィードは黒く染まった制御結晶を見つめる。
「こんな侵食……初めて見る。」
ハルトも頷いた。
「王城の異変とも繋がっている。」
アルが尋ねる。
「何か心当たりがあるんですか?」
しばらく沈黙した後、
シルフィードは静かに答えた。
「昔から巫女だけに伝わる場所があるの。」
「そこなら……。」
「この異変の理由が分かるかもしれない。」
ハルトが続ける。
「祠だ。」
「巫女と、巫女が認めた者しか入れない場所。」
シルフィードはアルを見る。
「アル。」
「一緒に来て。」
「あなたに見てほしいものがある。」
アルは迷わず頷いた。
「はい。」
『くぅ!』
クウも元気よく鳴いた。
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フェルドは笑みを浮かべる。
「ここは俺達ギルドが守る。」
「施設も王都も任せろ。」
「答えを見つけてこい。」
アル。
シルフィード。
ハルト。
三人は国家の未来を背負い、
祠へと歩き始めた。
異変の真実を知るために。
そして、
風の国を救う道を見つけるために。




