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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第4章:翠色の空(アルのフライト)
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第4章・第4話  天空観測統制域

シルフィードの後を追い、


アルとフェルドはギルドを飛び出した。


王都シルヴァレイアの中央部。


そこには巨大な塔群がそびえ立っていた。


白い塔が何本も空へ向かって伸びている。


まるで空そのものを支える柱のようだった。


「ここは……」


アルは思わず見上げる。


シルフィードが答えた。


「天空観測統制域」


「オルニスの中枢施設よ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


情報国家オルニス。


その心臓部とも呼ばれる場所。


全域監視。


通信網管理。


空路制御。


気流解析。


この国の情報は全てここへ集まる。


三人は施設内部へ入った。


多くの鳥族達が忙しそうに動いている。


壁一面には巨大な地図。


各地の観測記録。


空域監視記録。


侵食反応記録。


様々な情報が整理されていた。


アルは思わず周囲を見渡す。


「すごい……」


炎の国にも。


水の国にも。


こんな施設はなかった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


シルフィードは迷うことなく最上階へ向かう。


やがて巨大な観測室へ辿り着いた。


そこには一人の青年がいた。


腰には双剣。


引き締まった身体。


鋭い目。


しかしどこか人懐っこい雰囲気も感じる。


青年はシルフィードを見る。


「シルフィード様」


「急な呼び出しでしたので驚きました」


「何かあったのですか?」


シルフィードは真っ直ぐ答えた。


「記録を見せて」


「最近一年分よ」


青年は一瞬だけ首を傾げた。


しかしすぐに頷く。


「承知しました」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


青年は資料を取り出しながらアルを見る。


「そちらの方は?」


シルフィードが答えた。


「アルトゥスさん」


「神託にあった無色の少年よ」


青年の表情が少し変わる。


興味を持ったようだった。


「そうでしたか」


そして丁寧に頭を下げる。


「私はハルト」


「風の巫女様の側近を務めています」


アルも頭を下げた。


「アルトゥスです」


「よろしくお願いします」


「こちらこそ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ハルトは大量の資料を机へ並べる。


監視記録。


侵食反応。


異常発生地点。


観測結果。


シルフィードは迷いなく目を通していく。


そして。


ある資料で手が止まった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「やっぱり……」


小さく呟く。


フェルドも資料を覗き込む。


「何か見つかったのですか?」


シルフィードは地図を指差した。


そこには複数の侵食反応地点が記されていた。


一見すると無秩序。


しかし。


よく見ると違った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「アルトゥスさん」


シルフィードが顔を上げる。


「炎の国では?」


アルは思い出す。


ドラゴニスで起きた異変。


「最初は辺境でした」


「そこから徐々に王都へ近付いていきました」


シルフィードは頷く。


「水の国は?」


「同じです」


「辺境から中心部へ」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


静寂が訪れる。


シルフィードは再び地図を見る。


そして確信したように言った。


「やっぱり同じ」


「オルニスもよ」


フェルドの表情が変わる。


ハルトも資料へ目を落とした。


確かに。


侵食反応は年々中心部へ近付いている。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「偶然じゃない……」


シルフィードは呟く。


広域感知。


風の巫女として常に国全体を見続けてきた。


だからこそ気付いた。


点だった情報が。


一本の線として繋がった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「ハルト」


「はい」


「最初に侵食反応が確認された地点を全部出して」


「至急」


ハルトは即座に動き出す。


「承知しました」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


シルフィードは窓の外を見る。


遥か遠く。


王都の中心部。


その先にあるものを見つめるように。


そして小さく呟いた。


「もし予想通りなら……」


その言葉の続きを誰も聞くことはできなかった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


何かが。


確実に風の国の中心を目指している。


アルはそう感じていた。


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