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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第4章:翠色の空(アルのフライト)
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第4章・第3話 風の巫女

中央塔の最上階。


風神エアリオンを祀る神殿。


アルは長い階段を上り続けていた。


「高いですね……」


『くうー』


クウも少し疲れた様子で肩に乗っている。


途中で何度も振り返った。


窓の外には王都シルヴァレイア。


遠くまで続く空。


そして雲。


ここまで高い場所は初めてだった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


やがて最上階へ辿り着く。


大きな扉。


その向こうから風が流れていた。


アルは一度深呼吸する。


そして扉を開いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


神殿の中は静かだった。


吹き抜けの空間。


中央には風神像。


周囲には大きな窓。


そこから風が絶えず流れ込んでいる。


そして。


窓辺に一人の女性が立っていた。


長い翠色の髪。


風に揺れる巫女装束。


その姿はまるで風そのものだった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


女性はこちらを振り返る。


そして。


笑った。


「やっと来たね」


初対面とは思えない言葉だった。


アルは少し戸惑う。


「初めまして」


「アル・リンベルです」


女性は近付いてくる。


軽やかな足取りだった。


「知ってる」


「私はシルフィード」


「風の巫女」


「よろしくね」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


アルは頭を下げる。


「よろしくお願いします」


「固いなー」


シルフィードが笑う。


「もっと気楽でいいのに」


「そういう訳にはいきません」


「巫女様ですし」


「別に気にしないよ?」


「俺が気にします」


即答だった。


シルフィードは楽しそうに笑う。


「面白い」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


しばらく話した後、


アルは鞄へ手を伸ばした。


「こちらを」


封書を差し出す。


シルフィードは受け取る。


差出人を見る。


その瞬間。


表情が少しだけ変わった。


「セリーナか」


封を切る。


静かに読み進める。


やがて。


ふっと笑った。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「なるほどね」


封書を畳む。


そしてアルを見る。


「セリーナらしい」


何が書かれていたのかは分からない。


だが。


シルフィードは納得したようだった。


「どうかしましたか?」


「別に」


そう言って笑う。


「やっぱりあんただった」


「俺ですか?」


「うん」


シルフィードは窓の外を見る。


青空。


流れる雲。


そして風。


「気にしなくていいよ」


「そのうち分かるから」


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アルは首を傾げた。


意味が分からない。


だが追及しても答えてくれなさそうだった。


「それより」


シルフィードが話題を変える。


「オルニスどう?」


「綺麗な国だと思います」


「でしょ?」


「自慢だから」


どこか誇らしげだった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「でも最近は面倒でね」


不意にシルフィードが呟く。


「面倒ですか?」


「うん」


笑顔が少し消える。


「コラプト」


その一言で空気が変わった。


「やっぱり増えているんですね」


「かなりね」


シルフィードは頷く。


「観測所も忙しいし」


「ギルドも大変」


「空も騒がしい」


風が吹く。


窓の外では鳥型ヴィータ達が飛んでいた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「だからさ」


シルフィードが笑う。


「暇なら手伝ってよ」


「手伝う?」


「冒険者なんでしょ?」


「はい」


「なら依頼」


その言葉にアルも頷く。


断る理由はなかった。


むしろそのために旅をしている。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


シルフィードは満足そうに笑う。


「よし」


「決まり」


「明日ギルド行こう」


「俺もですか?」


「もちろん」


「人手は多い方がいいし」


「分かりました」


アルは頷いた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


神殿を出る頃には、


空は夕焼けに染まり始めていた。


オルニスでの最初の一日が終わる。


だが。


本当の始まりはこれからだった。


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