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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第4章:翠色の空(アルのフライト)
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4章・第2話 高空都市

「お前が無色か」


フェルドの言葉に、


アルは静かに頷いた。


「はい」


部屋に沈黙が流れる。


フェルドは机の上の封書へ視線を落とした。


既に内容は読んでいる。


だが、その内容について語るつもりはないようだった。


やがて小さく息を吐く。


「無巫女セリーナ」


「相変わらず説明が足りん」


思わずアルは苦笑した。


その気持ちは少し分かる。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「だが」


フェルドは続ける。


「信用するには十分だ」


「ありがとうございます」


「礼はいい」


そう言って椅子へ深く腰掛けた。


「それで」


「オルニスは初めてか?」


「はい」


「なら少しだけ教えてやる」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


フェルドは窓の外を指差した。


高く伸びる塔。


断崖に沿って築かれた街並み。


その各所に設置された観測施設。


「オルニスは情報国家だ」


「情報国家……」


「世界中の情報が集まる」


「空路管理」


「監視」


「通信」


「観測」


「それがこの国の役目だ」


アルは静かに聞いていた。


炎の国とも。


水の国とも。


まるで違う。


「だから空を見る」


「空ですか?」


「ああ」


フェルドは頷いた。


「空は嘘をつかない」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


その時。


扉がノックされた。


「失礼します」


受付の女性が入室する。


フェルドへ一枚の書類を差し出した。


それを見た瞬間。


フェルドの表情が僅かに曇る。


「またか」


短い言葉だった。


受付の女性も表情が硬い。


「はい」


「西空域です」


アルは黙って様子を見ていた。


何かが起きている。


それだけは分かる。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


受付の女性が退室した後、


フェルドは書類を机へ置いた。


「最近妙なことが続いている」


「妙なことですか?」


「コラプトだ」


アルの表情が引き締まる。


「増えているんですか?」


「目撃報告がな」


フェルドは腕を組んだ。


「まだ大規模な被害は出ていない」


「だが確実に増えている」


その言葉には確信があった。


情報国家だからこそ分かる異常。


そんな印象だった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


しばらくして、


フェルドが立ち上がる。


「そうだ」


何かを思い出したように言った。


「お前」


「時間はあるか?」


「あります」


「なら神殿へ行け」


アルは首を傾げた。


「神殿ですか?」


「ああ」


「セリーナからそう書かれている」


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


アルは少し驚いた。


フェルドは続ける。


「理由は知らん」


「聞いてもいない」


「だが」


「お前が来たらシルフィード様へ会わせろ」


そう書かれていた。


「分かりました」


アルは素直に頷く。


セリーナがそう言うなら、


何か理由があるのだろう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ギルドを出たアルは、


中央塔へ向かっていた。


見上げるほど高い塔。


その最上階に風神エアリオンを祀る神殿がある。


風が吹く。


どこまでも続く青空。


『くうー』


クウが嬉しそうに鳴いた。


「楽しそうですね」


『くう!』


アルは少し笑う。


そして再び歩き出した。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


その頃。


神殿最上階。


一人の巫女が空を眺めていた。


翠色の髪。


風に揺れる巫女装束。


風の巫女。


シルフィード。


彼女は目を閉じる。


風が囁く。


神託の日から何度も聞いた言葉。


無色の少年。


旅人。


風の国へ訪れる者。


そして。


シルフィードはゆっくりと目を開いた。


「やっと来たか」


その声は、


どこか楽しそうだった。


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