4章・第2話 高空都市
「お前が無色か」
フェルドの言葉に、
アルは静かに頷いた。
「はい」
部屋に沈黙が流れる。
フェルドは机の上の封書へ視線を落とした。
既に内容は読んでいる。
だが、その内容について語るつもりはないようだった。
やがて小さく息を吐く。
「無巫女セリーナ」
「相変わらず説明が足りん」
思わずアルは苦笑した。
その気持ちは少し分かる。
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「だが」
フェルドは続ける。
「信用するには十分だ」
「ありがとうございます」
「礼はいい」
そう言って椅子へ深く腰掛けた。
「それで」
「オルニスは初めてか?」
「はい」
「なら少しだけ教えてやる」
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フェルドは窓の外を指差した。
高く伸びる塔。
断崖に沿って築かれた街並み。
その各所に設置された観測施設。
「オルニスは情報国家だ」
「情報国家……」
「世界中の情報が集まる」
「空路管理」
「監視」
「通信」
「観測」
「それがこの国の役目だ」
アルは静かに聞いていた。
炎の国とも。
水の国とも。
まるで違う。
「だから空を見る」
「空ですか?」
「ああ」
フェルドは頷いた。
「空は嘘をつかない」
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その時。
扉がノックされた。
「失礼します」
受付の女性が入室する。
フェルドへ一枚の書類を差し出した。
それを見た瞬間。
フェルドの表情が僅かに曇る。
「またか」
短い言葉だった。
受付の女性も表情が硬い。
「はい」
「西空域です」
アルは黙って様子を見ていた。
何かが起きている。
それだけは分かる。
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受付の女性が退室した後、
フェルドは書類を机へ置いた。
「最近妙なことが続いている」
「妙なことですか?」
「コラプトだ」
アルの表情が引き締まる。
「増えているんですか?」
「目撃報告がな」
フェルドは腕を組んだ。
「まだ大規模な被害は出ていない」
「だが確実に増えている」
その言葉には確信があった。
情報国家だからこそ分かる異常。
そんな印象だった。
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しばらくして、
フェルドが立ち上がる。
「そうだ」
何かを思い出したように言った。
「お前」
「時間はあるか?」
「あります」
「なら神殿へ行け」
アルは首を傾げた。
「神殿ですか?」
「ああ」
「セリーナからそう書かれている」
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アルは少し驚いた。
フェルドは続ける。
「理由は知らん」
「聞いてもいない」
「だが」
「お前が来たらシルフィード様へ会わせろ」
そう書かれていた。
「分かりました」
アルは素直に頷く。
セリーナがそう言うなら、
何か理由があるのだろう。
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ギルドを出たアルは、
中央塔へ向かっていた。
見上げるほど高い塔。
その最上階に風神エアリオンを祀る神殿がある。
風が吹く。
どこまでも続く青空。
『くうー』
クウが嬉しそうに鳴いた。
「楽しそうですね」
『くう!』
アルは少し笑う。
そして再び歩き出した。
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その頃。
神殿最上階。
一人の巫女が空を眺めていた。
翠色の髪。
風に揺れる巫女装束。
風の巫女。
シルフィード。
彼女は目を閉じる。
風が囁く。
神託の日から何度も聞いた言葉。
無色の少年。
旅人。
風の国へ訪れる者。
そして。
シルフィードはゆっくりと目を開いた。
「やっと来たか」
その声は、
どこか楽しそうだった。
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