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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第4章:翠色の空(アルのフライト)
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第4章・第1話 翠色の空

オルニス高空国。


風を司る国家。


アルが王都シルヴァレイアへ到着したのは昼過ぎだった。


「すごいですね……」


思わず声が漏れる。


目の前には巨大な断崖都市が広がっていた。


切り立った岩壁。


空へ向かって伸びる無数の塔。


それらを繋ぐ吊橋。


見上げれば青空。


見下ろせば遥かな大地。


今まで訪れたどの国とも違う景色だった。


『くうー♪』


肩の上でクウが嬉しそうに鳴く。


「クウも気に入ったんですか?」


『くう!』


返事をするように身体を揺らした。


アルは少しだけ笑う。


長旅には慣れてきた。


だが、新しい国家へ来る度に緊張する。


今回も例外ではない。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


王都へ入ると風が強くなった。


建物の隙間を抜ける風。


塔の間を流れる風。


人々はそれを当たり前のように受け入れている。


「風の国って感じですね」


アルは周囲を見回した。


市場。


商店。


行き交う人々。


どこも活気に溢れている。


だが不思議だった。


慌ただしいのに騒がしくない。


皆が何かを急いでいるのに、


どこか余裕がある。


そんな空気だった。


「まずはギルドですね」


アルは鞄へ手を入れる。


セリーナから託された封書。


その中の一つ。


オルニスギルド長宛。


各国へ着いたら最初に渡す。


それがセリーナとの約束だった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


ギルドは王都中心部の近くにあった。


高い塔を利用した建物で、


他国のギルドとは少し雰囲気が違う。


扉を開く。


中には多くの冒険者達がいた。


依頼を確認する者。


報告を行う者。


装備の整備をする者。


その中を進み、


受付へ向かう。


「すみません」


受付の女性が顔を上げた。


「はい、どうされましたか?」


「ギルド長へお渡ししたい物があります」


そう言って封書を差し出す。


女性は封書を見る。


次の瞬間。


表情が変わった。


「こちらをどちらで?」


「無巫女セリーナさんから預かりました」


一瞬。


空気が止まる。


「少々お待ちください」


女性はすぐに奥へ消えていった。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


数分後。


アルはギルド長室へ案内された。


重厚な扉。


その向こうには一人の男が座っている。


年齢は四十代ほど。


鋭い眼光。


歴戦の冒険者を思わせる雰囲気。


オルニスギルド長。


フェルド・エアロス。


アルは軽く頭を下げた。


「初めまして」


「アル・リンベルです」


フェルドは答えない。


代わりに封書へ視線を落とした。


そして封を開く。


静寂。


部屋に紙をめくる音だけが響く。


やがて。


フェルドはゆっくり顔を上げた。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「なるほどな」


低い声だった。


「話は聞いている」


アルは少し驚く。


「聞いている……ですか?」


「ああ」


フェルドは頷いた。


そして改めてアルを見る。


まるで値踏みするように。


「無巫女セリーナ」


「その名で送られてきた封書だ」


「軽い内容のはずがない」


アルは黙って聞いていた。


「それに―――」


フェルドは机に肘を置く。


「お前が無色か」


その言葉に。


アルの身体がわずかに固まった。


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