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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第3章:碧色の深層(アルのダイブ)
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第3章・第19話  碧界

黒い濁流が爆発した。


轟音。


地下広場全体へ、

汚染水が津波のように叩き付けられる。


「散れ!!」


レイオスが叫ぶ。


アルとミレーナが左右へ飛ぶ。


石床が砕けた。


黒水が侵食する。


蒸気のような瘴気。


地下空間そのものが、

黒く染まり始める。


王がゆっくり腕を上げた。


「……飲み込め」


無数の黒槍。


汚染水。


濁流が三人へ襲い掛かった。



レイオスが前へ出る。


槍を回転。


濁流を弾く。


「アル!!」


「あぁ!!」


アルが飛び出した。


魔剣が黒水を切り裂く。


剣戟。


水飛沫。


だが。


王の汚染水は止まらない。


切っても再生する。


黒い濁流が、

次々と地下広場を埋めていく。


レイオスが舌打ちした。


「キリがねぇ……!」


アルが魔剣を振るう。


「――アクアショット!!」


碧い水弾。


黒水を撃ち抜く。


だが。


次の瞬間。


再び濁流が再生した。


王が笑う。


「無駄だ」


「淀みは尽きぬ」


黒い波が膨れ上がる。


その時だった。


ミレーナが前へ出る。


碧い紋章。


水流が、

彼女の周囲へ集まり始める。


王の瞳が細まった。


「……水巫女」


空気が変わる。


次の瞬間。


王が腕を振り下ろした。


無数の黒槍が、

ミレーナへ放たれる。


「っ――!」


だが。


その前へ。


レイオスが飛び込んだ。


「――通させません!!」


轟音。


黒槍直撃。


血飛沫。


レイオスの身体が吹き飛ぶ。


「レイオス!!」


ミレーナが叫ぶ。


だが。


レイオスは倒れない。


槍を地面へ突き立て、

無理矢理立ち上がる。


肩から血が流れていた。


それでも笑う。


「……詠唱を続けてください」


「水巫女様」


ミレーナの瞳が揺れる。


そして。


静かに目を閉じた。


地下水路。


空気中の水分。


広場に流れる水。


全てが、

ミレーナへ呼応し始める。


碧い光。


巨大水流陣展開。


ミレーナが詠う。


「巡り続ける碧き流れよ」


「淀みを祓い」


「争いを鎮め」


「命を繋ぐ水となれ」


「我が祈りを導とし」


「碧き加護を今ここへ――」


碧紋章が輝いた。


「――水巫女の加護

(アクア・エンチャント)」


轟音。


蒼い波紋が、

地下広場全体へ広がった。


その瞬間だった。


クウが震える。


「きゅう……!」


アルが目を見開く。


クウの身体へ、

碧い光が流れ込んでいく。


ミレーナの紋章。


水の印。


地下水脈。


全てが共鳴していた。


地下広場の水流が止まる。


王が目を見開いた。


「……何だ、それは」


クウが鳴く。


「きゅうううっ!!」


次の瞬間。


クウの身体から、

一滴の碧雫が分離した。


碧い小さなスライム。


地下空間へ、

碧い波紋が広がる。


ミレーナが目を見開いた。


「……印スライム」


レイオスが振り返る。


「知ってるのか?」


ミレーナは小さく息を呑む。


「……神殿の古い言い伝えです」


「各属性の印を繋ぐ、

神聖なスライムが存在すると――」


碧スライムが、

ミレーナへ近付く。


そして。


小さく跳ねた。


その瞬間。


ミレーナの紋章が、

さらに強く輝く。


同時に。


アルの魔剣が震えた。


碧い水流が、

刀身へ流れ込む。


白銀の刃へ、

碧紋様が浮かび上がる。


水流が刀身を覆う。


レイオスが目を見開く。


「……魔剣が」


アルが剣を握る。


膨大な水流。


水の印。


クウ。


水印スライム。


ミレーナの加護。


全てが、

魔剣へ集束していく。


アルが静かに呟いた。


「……碧装魔剣

(ネレイ)」


王が怒号を上げる。


黒い濁流が暴走した。


「認めん!!」


地下広場全体を埋め尽くす、

巨大汚染波。


だが。


レイオスが前へ出る。


「行くぞアル!!」


「あぁ!!」


レイオスが突撃した。


「――魚穿

(シータスペネト)!!」


激流のような槍撃。


王の濁流を貫く。


その隙へ。


アルが飛び込む。


魔剣一閃。


碧い残光。


王の死角へ潜り込む。


さらに。


「――魚閃

(シータスグリント)!!」


碧い斬撃。


黒水を切り裂く。


濁流が崩壊した。


レイオスが叫ぶ。


「今だアル!!」


アルがネレイを構える。


地下広場全体の水流が、

魔剣へ集束していく。


碧い世界。


流れが変わる。


淀みが、

浄流へ呑まれていく。


そして。


アルが振り抜いた。


「――奥義」


「《碧界

(アビシア)》」


碧流一閃。


地下広場を横断する碧い奔流が、

黒い濁流ごと王を飲み込んだ。


轟音。


地下空間全体が激しく揺れる。


そして。


黒い濁流が崩れ始めた。


王の身体から、

汚染水が剥がれ落ちていく。


黒い糸のような魔力が、

王の背後から引き剥がされる。


王が絶叫した。


「ま、待って……!!」


「嫌だ……!!」


「置いていくな!!」


「私は従った!!」


「全て捧げた!!」


黒い接続が崩壊していく。


王が絶望したように、

アルを見る。


「……来る」


「いずれ、

あの御方は目覚める」


「誰にも止められない……」


王の瞳が震えた。


「無色は……」


「必ず世界を――」


次の瞬間。


黒い接続が、

音を立てて断ち切れた。


地下広場から、

汚染が吹き飛ぶ。


王が崩れ落ちた。


静寂。


碧い水音だけが残る。


レイオスが荒く息を吐く。


「……終わったか」


ミレーナも膝をつく。


碧スライムが、

ミレーナの肩へ乗った。


クウが嬉しそうに跳ねる。


アルは静かに、

王を見下ろしていた。


水国アクアリオンの戦いは、

ここで終結した。

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