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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第二章:紅色の誓い(アルのトリガー)
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第2章・第15話 交錯する火雷

爆音が尾を引く。


熱と電撃が絡み合い、空気が震える。


ゼルヴァインは止まらない。


踏み込み、角度を変え、連撃。

雷の軌跡に炎が混ざる。


フレアが受ける。

拳を振るう。


炎が手袋に収束する。

炎纏手フレイムガントレット


衝突。


爆ぜる。


衝撃が床を砕く。


だが——


ゼルヴァインはさらに前に出る。


「遅い」


消える。


次の瞬間、背後。


一撃。


炎が弾ける。


フレアが滑る。

止まる。

笑う。


「いいな」


アルの喉が鳴る。


(……速い)

(……重い)


ただ強いだけじゃない。

動きが“噛み合ってきている”。


カイエンが低く言う。


「出力と制御、双方が上がっています」


アルは目を逸らさない。


(……見ろ)


速さじゃない。

“流れ”だ。


踏み込みの前、わずかに偏る。

力の乗る方向。


(……来る)


手をかざす。


「フレイムボール!」


炎が生まれる。


小さい。遅い。


ゼルヴァインが避ける。


(……当たらない)


歯を食いしばる。


視線を戻す。


フレアが押し込む。


一瞬、ゼルヴァインが横へ逃げる。


(……そこだ)


二発目。


「フレイムボール!」


さっきより速い。


掠る。


わずかに体勢が崩れる。


フレアが踏み込む。


拳。


爆ぜる。


(……通った)


呼吸が荒くなる。


(……見えてきた)


三度目。


フレアが引く。


ゼルヴァインが前に出る。


その“先”へ。


「フレイムボール!」


直撃。


爆ぜる。


一瞬、動きが止まる。


フレアが笑う。


「いいな」


踏み込む。


拳が叩き込まれる。


衝撃。


空気が歪む。


だが——


ゼルヴァインは倒れない。


踏みとどまる。


「……足りない」


歪みが揺れる。


再び、触れる。


色が抜ける。

輪郭がさらに歪む。


アルの思考に流れ込む。


——近い

——足りない

——違う


(……まだ上がるのか)


ゼルヴァインの瞳が揺れる。


「……そうか」


「まだ——上がある」


カイエンが叫ぶ。


「これ以上は危険です!」


フレアは笑う。


「分かってる」


拳を引く。


炎が膨れ上がる。


「だから——ここで止める」


ゼルヴァインも同時に動く。


雷が走る。

炎が重なる。


正面から衝突。


爆音。


衝撃。


視界が白く染まる。


アルは目を逸らさない。


(……今だ)


手をかざす。


炎が安定する。


「フレイムボール!」


放つ。


ゼルヴァインが避ける。


だが——読めている。


フレアが半歩ずらす。


進路が重なる。


直撃。


爆ぜる。


フレアが踏み込む。


炎纏手が収束する。


拳。


叩き込む。


轟音。


ゼルヴァインの体が浮く。


地面に叩きつけられる。


衝撃が広がる。


静寂。


煙が上がる。


アルの呼吸が荒い。


(……当てた)


影が、ゆっくりと立ち上がる。


だが——


崩れている。


色が抜けている。


形が保てない。


ゼルヴァインの膝が落ちる。


それでも、目だけはフレアを捉える。


「……まだ、だ」


声が掠れる。


「……やはり、お前か」


フレアは何も言わない。


ゼルヴァインの視線が揺れる。


「最初から……違っていた」


一拍。


「同じ場所に立っているつもりだった」


かすれた声。


「だが……違う」


フレアを見据える。


「お前は……最初から、そこにいる」


沈黙。


「だから——」


言葉が途切れる。


「……正しくない」


一拍。


「……だから、正すはずだった」


歪みが揺れる。


「王は——」


言葉が途切れる。


「……もう、侵されている」


アルの呼吸が止まる。


「戻らない」


かすれた声。


「……見れば、分かる」


体が崩れる。


光が抜ける。


最後に、わずかに口元が動く。


「……足りない」


そのまま——


崩れ、消える。


静寂。


風だけが残る。


アルが息を吐く。


「……終わったのか」


カイエンが周囲を確認する。


「……反応は消失しています」


フレアは動かない。


ただ、前を見ている。


「……これで終わりじゃねぇ」


低く。


アルが顔を上げる。


フレアが言う。


「今日は戻る」


一拍。


「明日——王城だ」


沈黙。


アルの喉が鳴る。


(……王)


胸の奥がざわつく。


夜風が吹く。


その冷たさが、妙に残る。


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