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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第二章:紅色の誓い(アルのトリガー)
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第2章・第14話 迫る影

歪みは、そこに在った。


形はない。

だが、空間が揺れている。


その中心に——一人、立っていた。


背を向けたまま、動かない。

静かだ。


フレアが止まる。


「……お前は、近衛騎士団長ゼルヴァインか」


男は、ゆっくりと振り向く。

その目に、迷いはない。


「遅かったな」


低い声。


アルの背筋が冷える。


(……こいつが)


カイエンが一歩前に出る。


「この施設への侵入、並びに破壊行為。あなたの仕業で間違いありませんね」


「確認する必要があるのか」


フレアが笑う。


「ねぇな」


空気が張り詰める。


「何をしてる」


「確かめている」


「何をだ」


「……価値だ」


アルの心臓が強く鳴る。


(……何を言ってる)


フレアが踏み込む。


「くだらねぇな」


ゼルヴァインの目が細くなる。


「お前はそうだろうな。最初から持っている側だ」


空気が変わる。


「覚えているか。学園での模擬戦」


フレアの目が細くなる。


「……ああ」


「届かなかった」


「同じ時間を積んでも——届かない」


アルの視線が揺れる。


「そして、成人の義。やはり、そうだった」


「選ばれたのは——お前だ」


沈黙。


フレアが吐く。


「だから何だ」


ゼルヴァインが言う。


「神は誤る」


カイエンが一歩出る。


「……それが今回の行動理由ですか」


「誤りは、正すべきだ」


フレアが笑う。


「巫女を消してか」


ゼルヴァインは否定しない。


アルの背筋が冷える。


(……本気だ)


その時、歪みが揺れる。


静かに寄る。

ゼルヴァインの背に触れる。


色が抜ける。

輪郭が歪む。


一瞬、体が透ける。

すぐに戻る。


ゼルヴァインは目を閉じる。


「……足りない」


歪みが、さらに深く触れる。


アルの思考に流れ込む。


——近い

——足りない

——違う


(……やめろ)


ゼルヴァインが目を開く。

瞳の奥が揺れている。


「……そうか。まだ——足りていないだけだ」


カイエンが低く言う。


「……侵食が進行しています」


フレアが構えを深くする。


「……いい」


ゼルヴァインが一歩踏み出す。


雷が走る。

炎が重なる。


アルの目が見開く。


(……火?)


「これが——正しい形だ」


フレアが吐く。


「……ふざけんな」


次の瞬間、ゼルヴァインが消える。


アルの視界から消失する。


(……速い!)


フレアの目前に現れる。


振り下ろされる一撃。

雷を纏い、炎を引く。


フレアが踏み込む。

拳を振り上げる。


炎が手袋に纏わりつく。

炎纏手フレイムガントレット


収束。


剣と拳がぶつかる。


爆ぜる。


衝撃が床を砕く。


熱と電撃が同時に弾ける。


アルの体が揺れる。


(……重い)


フレアが押し返す。


だがゼルヴァインは止まらない。


踏み込み、連撃。

雷の軌跡に炎が混ざる。


軌道が読めない。


フレアが最小の動きで捌く。

だが衝撃は逃がしきれない。


床が砕ける。


カイエンが叫ぶ。


「……威力が上がっています!」


アルが歯を食いしばる。


(……さっきより強い)


ゼルヴァインが低く言う。


「今度は——届く」


一歩踏み込む。


空気が歪む。


フレアが笑う。


「いいじゃねぇか」


炎が噴き上がる。


「来いよ、ゼルヴァイン」


拳を構える。


雷と炎が、正面からぶつかる。


爆音。


衝撃。


視界が揺れる。


戦いは——まだ始まったばかりだった。

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