第2章・第8話 燃え落ちる中枢
神殿を出た直後、街は騒然としていた。
「逃げろ!」「施設で何か起きてる!」
人々が外へ走る中、アルが目を見開く。
「……施設?」
フレアの表情が変わる。
「……狙ってやがるな」
低く言い、人の流れに逆らって歩き出す。
「行くぞ」
アルも続く。
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煙が見える。
黒く立ち上るそれと、焦げた匂い。
胸がざわつく。
やがて中枢施設が見えてくる。
崩れた区画。炎。
アルの足が止まる。
「……酷い」
フレアが舌打ちする。
「やりやがったな」
⸻
「フレア様!」
振り向くと、鎧の男が駆け寄る。
――カイエン。
「無事か」
「施設内で襲撃を受けました。竜に手を出され、職員も巻き込まれています」
フレアは一瞬で状況を見渡す。
倒れている職員。混乱。動けない者。
「カイエン」
「はっ」
「戦える奴は外周へ回せ」
「一般職員と負傷者は退避。絶対に巻き込むな」
一拍。
「中央は俺が抑える」
「了解!」
カイエンは即座に動く。
指示が伝播し、人が動き出す。
アルはその様子を見る。
(……場を動かしてる)
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奥へ進む。
倒れている女性と、その手当をする者。
「しっかりして……!」
フレアが低く言う。
「……元巫女候補か」
その時——
咆哮が響く。
振り向く。
炎を纏う竜。
アルの視線が止まる。
(……でかい)
これまで見たどの竜よりも大きい。
ワイバーンとは別物。
存在そのものが違う。
鱗は燃え、吐息だけで空気が焦げる。
(これが——守護生物)
フレアが言う。
「フレイムドラゴンだ。この街の守護生物だ」
その視線の先。
倒れた個体。
深い傷。
血。
アルの顔が変わる。
「……やられてる」
フレアは傷を見つめる。
「……妙だな」
「何が、ですか」
「ここは中枢だ」
一拍。
「外から簡単に手ぇ出せる場所じゃねぇ」
「……では」
「中に入り込んでるか——」
わずかに目を細める。
「普通じゃねぇやり方でやられたかだな」
⸻
フレイムドラゴンが咆哮する。
怒りと悲鳴。
「……暴れています」
「仲間をやられてる。そりゃキレる」
フレアが前に出る。
「下がってろ」
一歩。
「——鎮める」
空気が変わる。
見えない圧。
荒れていた炎が、静まる。
「戻れ」
声が響く。
竜の動きが止まる。
やがて——頭を下げる。
「……間に合ったな」
アルは息を呑む。
(……これが巫女の力)
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奥から現れる、一人の影。
「……人?」
だが違う。
色が薄い。
透けている。
輪郭が歪む。
「……なんですか、あれ」
フレアが低く言う。
「……人が侵されてる」
アルの背筋が冷える。
「……人も、なるのですか」
「……みてぇだな」
一拍。
フレアが吐き捨てる。
「コラプト・ヒューマン……ってとこか」
フレアが前に出る。
「……お前、何だ」
歪んだ影が笑う。
「人だったものだ」
一拍。
「だがもう違う」
「“選ばれた”」
わずかに首を傾ける。
「“上”がな」
⸻
戦闘が始まる。
重い。
ズレている。
削れない。
アルの剣が弾かれる。
「……硬い!」
フレアが踏み込む。
拳。
炎。
だが——浅い。
「チッ……」
押される。
フレアが言う。
「中級じゃねぇ」
アルが応じる。
「……それ以上です」
その瞬間。
フレアが掴まれる。
「っ——」
アルが動く。
「離れてください!」
踏み込み。
一閃。
フレアを解放する。
その動きに——
フレアの中で何かが重なる。
(……レオン)
アルは止まらない。
誘い、崩し、繋ぐ。
(あの時と同じだ)
フレアが動く。
合わせる。
「合わせろ!」
「はい!」
同時に踏み込む。
アルの斬撃。
フレアの拳。
一点へ。
「もう一撃いきます!」
「分かってる!」
核へ。
斬撃と打撃。
炎が爆ぜる。
崩壊。
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静寂。
アルが息を整える。
フレアは歪みが消えた場所を見る。
「……人が、ああなるか」
低く。
「これが歪みだ」
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フレアが立ち上がる。
「終わりじゃねぇ」
周囲を見る。
「確認するぞ」
二人は歩き出す。
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カイエンが戻る。
「避難は完了しました」
「被害は」
「軽傷多数、死者なし」
フレアが息を吐く。
「……上出来だ」
一拍。
視線を巡らせる。
「……妙だな」
アルが問う。
「何が、ですか」
フレアは短く言う。
「数が合わねぇ」
振り返る。
「カイエン」
「はっ」
「残存個体を探せ」
「二人以上で動け。怪しい区画は封鎖」
「外周にも伝達しろ」
「了解!」
空気が変わる。
⸻
フレアが奥を見る。
「……奥だな」
アルが頷く。
「行きましょう」
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二人はさらに奥へ進む。
終わったはずの戦いは——
まだ終わっていない。




