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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第一章:無色の旅立ち(アルのスタート)
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第1章・第6話 模擬戦

ざわめきが、広がっていた。


ギルドの一角。


簡易の訓練場。


円を描くように、人が集まる。


「……始まるぞ」


「無色だってよ」


「魔法なしでどうやるんだ?」


声が混ざる。


視線が集まる。


アルトゥスは、その中心に立っていた。


向かいには、先ほどの男。


剣を肩に担ぎ、余裕の表情。


「おい、あいつ……」


誰かが呟く。


「Cランクだぞ」


「なんであいつが出てきてんだ……?」


ざわめきが一段強くなる。


明らかに、格上。


アルトゥスは静かに構える。


「ルールは簡単だ」


男が言う。


「どっちかが降参するか、戦闘不能で終わり」


軽く笑う。


「安心しろ。殺しはしねぇ」


アルトゥスは頷く。


「……分かりました」


剣を抜く。


静かな音。


「へぇ」


男が目を細める。


「いい構えしてんじゃねぇか」


軽口。


だが、油断はない。


「始め!」


声が響く。


次の瞬間。


男が踏み込む。


速い。


一気に間合いを詰める。


剣が振り下ろされる。


アルトゥスは横にずれる。


ギリギリで躱す。


「……っ」


重い。


ただ速いだけじゃない。


圧がある。


二撃目。


横薙ぎ。


アルトゥスは後ろへ下がる。


間合いを取る。


「どうした!」


男が笑う。


「逃げてばっかか?」


アルトゥスは答えない。


視線だけが動く。


足。


肩。


剣の動き。


すべてを見る。


三撃目。


踏み込み。


速さが上がる。


「っ――!」


アルトゥスは弾く。


だが、重い。


腕がわずかに痺れる。


「ほら!」


四撃目。


追撃。


アルトゥスは下がる。


防ぐだけ。


押されている。


「やっぱ無理だろ!」


「相手Cだぞ!」


周囲の声が飛ぶ。


アルトゥスは聞かない。


ただ、見る。


呼吸。


間。


癖。


「……」


見えてくる。


男の動き。


強い。


だが――


単調だ。


踏み込み。


振り。


戻る。


その繰り返し。


「……そこか」


小さく呟く。


男が踏み込む。


同じ動き。


同じ軌道。


その瞬間。


アルトゥスは動く。


一歩、前へ。


「なっ――!?」


間合いを潰す。


剣の内側へ。


振り下ろされる前に、入り込む。


「くそっ!」


男が無理に軌道を変える。


その一瞬。


隙が生まれる。


アルトゥスは剣を滑らせる。


下から、打ち上げる。


「……!」


金属音。


男の剣が弾かれる。


体勢が崩れる。


そのまま。


一歩。


踏み込む。


刃を、首元へ。


止める。


「……」


完全に、動きが止まる。


「……参った」


男が息を吐く。


その一言。


一瞬だけ。


完全な静寂が落ちる。


そして――


「は……?」


「おい待て待て待て!!」


「今の見たか!?入ったぞ懐!!」


「Cランクだぞ!?相手Cランクだぞ!?」


ざわめきが一気に爆発する。


「嘘だろおい!!」


「魔法使ってねぇぞあいつ!!」


「無色だろ!?無色って言ったよな!?」


「なんで勝ってんだよ!!」


人が前に出る。


距離が詰まる。


ざわめきが止まらない。


「今のどうやった!?」


「いや動き見えなかったぞ!」


「踏み込みのタイミングおかしいだろ!」


声が重なる。


ぶつかる。


「対人慣れしてるってレベルじゃねぇぞ!」


「学園だとしてもあれは――」


「いや、あの入り方は実戦だ!」


評価が飛び交う。


「無色であれってどうなってんだよ……!」


「あり得ねぇだろ……!」


「おい、あいつ何者だ……?」


ざわめきは止まらない。


アルトゥスは何も言わない。


ただ、そこに立っている。


視線だけが、集まる。


評価と、疑問と、興味。


すべてが混ざったまま。


そして――


様々な声が飛び交っていた。


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