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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
第一章:無色の旅立ち(アルのスタート)
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第1章・第5話 冒険者ギルド

扉を押し開ける。


中は、ざわついていた。


声。


笑い。


金属の音。


様々な気配が混ざっている。


「……」


アルトゥスは一歩、足を踏み入れる。


空気が違う。


学園とも、神殿とも違う。


もっと、荒い。


クウが、ぴょんと跳ねる。


その音が、やけに小さく感じる。


「こちらです」


セリーナが迷いなく進む。


視線が集まる。


それも当然だった。


巫女が、ここにいる。


それだけで、異質だ。


「……巫女様?」


「どうしてここに……」


小さな声が混ざる。


アルトゥスは何も言わない。


ただ、ついていく。


カウンターの前で止まる。


受付の女性が顔を上げる。


一瞬、驚く。


すぐに姿勢を正す。


「セリーナ様……」


「お久しぶりです」


セリーナが軽く会釈する。


「本日は、どういったご用件でしょうか」


「彼の登録をお願いします」


受付が書類を差し出す。


「こちらにご記入ください」


アルトゥスは受け取る。


目を通す。


簡単な内容だった。


迷うことはない。


そのまま記入する。


「……完了です」


書類を返す。


受付がそれを受け取り、目を落とす。


そして――


その手が止まる。


「……え?」


小さな声。


だが、確かに漏れた。


「……無色……?」


その一言で。


空気が変わる。


「……無色?」


「今、無色って言ったか?」


ざわめきが広がる。


受付の女性は顔を上げる。


アルトゥスを見る。


信じられないものを見るような目。


「……本当に、無色で間違いありませんか」


確認の声。


アルトゥスが答える前に。


セリーナが一歩前に出る。


「問題ありません」


その一言で、空気が止まる。


否定はできない。


巫女の言葉だ。


「……失礼しました」


受付が頭を下げる。


だが。


ざわめきは消えない。


それでも、手続きは進む。


「では、ランクの決定に移ります」


一瞬だけ、間が空く。


周囲の視線がさらに集まる。


「通常であれば、初回登録はEランクからとなります」


アルトゥスは黙って聞く。


「今回は」


受付がセリーナを見る。


そして。


「セリーナ様の推薦により、Dランクからのスタートとなります」


ざわめきが一気に広がる。


「……は?」


「いきなりDだと?」


「どういうことだ?」


空気が変わる。


先ほどよりも、明確に。


アルトゥスは何も言わない。


ただ、受け止める。


受付がカードを差し出す。


「こちらがギルド証になります」


アルトゥスは受け取る。


軽い。


だが。


意味は重い。


「……ありがとうございます」


短く言う。


その時。


背後から声が飛ぶ。


「おい」


ざわめきが止まる。


アルトゥスは振り返る。


男が一人。


腕を組んで立っている。


視線はまっすぐ、アルトゥスへ。


「無色だかなんだか知らねぇが」


ゆっくりと歩いてくる。


「いきなりDってのは、どういうことだ?」


アルトゥスは動かない。


ただ、見る。


「魔法も使えねぇ奴が」


一歩、近づく。


「そんなランクでやっていけると思ってんのか?」


挑発だった。


はっきりと。


アルトゥスは静かに答える。


「……分かりません」


男の眉が動く。


「ただ」


続ける。


「やるしかないので」


空気が変わる。


強くはない。


だが。


揺れていない。


男は一瞬だけ黙る。


そして――


口元が歪む。


「……面白ぇ」


一歩下がる。


「なら、見せてもらおうか」


視線が鋭くなる。


「その実力」


周囲がざわめく。


張り詰める空気。


アルトゥスは動かない。


ただ、立っている。


クウが、ぴょんと跳ねる。


その音だけが、軽く響いた。


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