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無色と十二の旅(アルとジュウニのシルシ)  作者: Matyu
序章:無色の始まり(アルのプロローグ)
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序章 第13話  失踪発覚

朝。


母は、いつもより早く目を覚ました。


昨夜。


レオンは帰ってこなかった。


少し夜風に当たってくる。


そう言って家を出たまま。


最初は、少し長く歩いているだけだと思っていた。


けれど夜が深くなっても帰らず。


父が家の周辺を探しに出た。


それでも見つからなかった。


「……まだ?」


戻ってきた父に、母が尋ねる。


「ああ」


父は首を横に振った。


「見つからない」


「どこまで行ったのかしら……」


「分からん」


母は扉の向こうを見る。


帰ってくるかもしれない。


何事もなかったように。


ただいま。


そう言って扉を開けるかもしれない。


だが。


朝になっても。


その扉は開かなかった。


「俺、もう一度探してくる」


父が立ち上がる。


「私も行く」


「いや」


「でも――」


「レオンが戻ってきた時、誰もいなかったら困る」


母は何かを言おうとして。


やめた。


「……分かった」


「何かあったらすぐ知らせてくれ」


「あなたも」


「ああ」


父が家を出る。


母は一人になった家の中で。


レオンの部屋へ向かった。


扉を開ける。


昨日まで使われていた部屋。


荷物も残っている。


服も。


学園から持ち帰った物も。


これから旅立つために用意していた物まで。


何一つ持ち出されていない。


「……レオン」


自分からどこかへ行ったわけではない。


母には。


そう思えた。


ただ散歩に出ただけだった。


「何があったの……」


視線が、ベッドへ向く。


昨日の朝。


ここから普通に出てきた。


一緒に朝食を食べた。


昼間も何もなかった。


夕食も三人で食べた。


そして。


少し外へ出てくると。


それだけ言って。


いなくなった。


昼近くになって。


父が戻ってきた。


一人ではなかった。


近くに住む人たちも一緒だった。


「どうだった?」


母が駆け寄る。


父は首を横へ振った。


「見つからない」


「そんな……」


「昨夜、レオンを見た人がいないか聞いて回った。でも、誰も見てない」


「じゃあ、どこに……」


答えられる者はいなかった。


父が家の中へ入り。


しばらく黙ったあと。


「王都へ知らせる」


母が顔を上げる。


「王都に?」


「あいつのリングのことがある」


「……!」


「普通のリングじゃない。それを調べてもらうために、レオンは帰ってきた」


父は拳を握る。


「その直後にいなくなったんだ。関係ないとは思えない」


母も。


昨日見たリングを思い出した。


色のないリング。


誰にも意味の分からない紋様。


「セレスティア様に……」


「ああ」


「知らせないと」


父は頷いた。


それから。


捜索が始まった。


故郷の周辺。


レオンがよく歩いていた場所。


森へ続く道。


考えられる場所を、一つずつ探していく。


けれど。


どこにもいない。


呼んでも。


返事はない。


「レオン!」


父の声が森に響く。


「いたら返事をして!」


母も呼ぶ。


何度も。


何度も。


けれど。


返ってくるのは。


木々を揺らす風の音だけだった。


やがて。


母が足を止めた。


「……ねえ」


「どうした?」


「アルには……」


父の表情が変わる。


今。


アルは学園にいる。


入学したばかり。


新しい生活を始めたばかりだった。


「……まだ知らせない」


父が答えた。


「でも」


「まだ、何があったのか分からない」


「……」


「レオンが見つかるかもしれない」


その言葉が。


願いなのか。


自分たちへ言い聞かせているだけなのか。


二人にも分からなかった。


母はしばらく黙っていた。


そして。


「……そうね」


小さく頷いた。


「見つかってから、話せばいいものね」


「ああ」


「きっと、すぐ見つかるわよね」


父は。


すぐには答えられなかった。


それでも。


「ああ」


そう答えた。


その日のうちに。


レオンが失踪したという知らせは。


王都へ向かった。


成人の儀で現れた。


色のないリング。


誰にも分からない紋様。


その調査結果を待つために帰郷したレオンが。


わずか二日後。


姿を消した。


そして。


その知らせは。


無巫女となったばかりのセリーナのもとへも。


届くことになる。

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