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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第79話 負けて、残るもの



日差しが、まだ暑い。

真夏の太陽だ。


歓声が上がっている。

まだ湖では、勝ったチームが競技を続けてた。


ただ、自分たちは座って眺めている。

さっきまでは誰よりも大きい声を出していた。

そして、強い五年生に挑んでいた。


ただ今は、一緒に騒ぐ気には到底なれない。


相手のボートは沈めた。けど――次の瞬間、自分たちも沈んだ。


五年生に頑張った事を褒められたのはガイルだ。

水没させたのもガイルだけど。

落ち着いて冷静になると、欠点ばかりが目についた。


「ガイルだけのせいじゃねえ」

湖を見ながらレオは言う。

「俺たちの実力不足だ。」

「うん。自分も今回は風がタイミングよく出たけど、安定はしてない」

オリバーはうなずく。

「まあ……。俺、力は強いけど、雑っちゃあ雑だ、な。」

ガイルは鼻の頭をかく。


「作戦は悪くなかったと思うんだ」

レオが二人の顔を不安そうに見る。

「早めの魔法係一号二号が出来たよ。」

「相手が五年と分かってから予定変更したもんな」

「そうだった。」

ガイルが思い出したように悔しがる。

「風魔法が来ると思ってたのに、漕いでたら水がバシャーーーンって来たんだ」

「水が来た時の対処方法を決めてなかった……」

「オリバーのせいじゃない。」

小声で他に聞こえないようにレオが呟く。

「すぐに水をかけてたじゃん。あれ、良かったぜ」

ガイルが肩を叩く。

……普通に痛い。


「ふうーーーー」

大きく息を吐いてからレオが言う。

「来年の課題だな」

「いつか優勝出来たらカッコいいな」

ガイルがニカリと笑う。


その言葉に、本当の顔 になれない。

頬がひきつる。


職員室前の廊下。

飾られた写真。

父さんと、レオの父さんの笑顔。

ノア先生と、一緒に写っていたひまわりのような笑顔の女生徒。


あんな中に

自分が入れるんだろうか。



夕食の時ーー

父さんに今日の話をした。

父さんはニコニコしながら最後まで聞いてくれる。

自分たちのボートが沈んだところが終わると、深く息を吐いた。

呼吸を忘れていた様だった。

そして、急に肩を抱きに来た。

「頑張ったな」

突然で何が起きたのかわからない。

「そうやって、相手を見て、俺たちも変えていったんだ」

父さんの声が近くから聞こえる。

「え?父さんたち、強かったんでしょ?」

思わず父さんの顔を見る。

「ふん。そりゃ強いさ。でも最初から強いわけじゃない。覚えているのは負けの方が多い。」

父さんは照れているのか、おでこををゴチンとあてる。

「でも、負けたから次があるんだ」

「俺もライトも。そうやってきた」



写真では自身満々に見えた父さん。

そんな言葉が出るなんて、考えてもいなかった。

じゃあ。今日は悔しいけど……。

「……そんなこと言われたら、嫌でも頑張れちゃうじゃないか」

ジンワリと目が濡れる。

父さんはもっと強く抱いてくれた。

「……オリバー。」

「お前は五年生といい勝負したんだ。

それが事実だ」

父さんはニヤリと笑う。

「俺の子だもの。やるに決まってる。」

「赤ちゃんの時からお前を見てきたんだ」

自然と笑いが出る。

「赤ちゃんの時から知ってて当たり前だよ。

これ、前にも聞いた」

「おう。何回でも言ってやる」

父さんが優しく頭を撫でてくれる。


「ねえー。入れてー。僕も父さんの子どもだよー。」

弟のジャックが、わざわざ間に入ってくる。遊びたがってる。

「あら。ジャックは私の子よーー」

母さんがジャックを抱き上げようとして、みんなで大笑い。

父さんがジャックを引っ張ろうとしてまた大笑い。




失敗しても、次がある。

失敗しても、信じてくれる人がいる。


それだけ。

それだけだけど。


やっぱり。




夏の夜のせいだ。

これは汗だ。

そう強がってみたけど。


やっぱり目が濡れた。


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