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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第75話 ボートの季節



「ボートの季節だあ!」

ガイルが叫ぶ。


「おう!」

みんなも答える。


今年も、ボートの季節がやってきた。

どうしてもワクワクが止まらない。

今年もやってやる――そんな気迫がクラス中に満ちていた。


日差しは容赦なく照りつける。

暑い。でも、それも悪くない。

そういう季節だ。




「その前に」

「今年はどうチーム組む?」


「あ」


去年は、ガイル、レオ、オリバーの三人。

今年はユイトが加わる。


「僕は漕ぐのが速くないし……去年も一緒の子とで……」


ユイトは遠慮がちだ。


二人で一つのボート案も出たが、クラス九人。

人数の割り振りが難しい。




その時。


「なあ、ミナ。今年、俺たちとボートやらないか?」


ケントの声。

顔が真っ赤だ。


(これ、告白じゃねえか?)


ミナは驚いてエマとリリカを見る。

二人がうなずくのを見て、またケントを見る。


「……うん」

「でも、私、あんまり上手くできないよ」

「俺たちだって似たようなもんさ」

ケントが、嬉しそうに笑った。




(ってことは……)


エマたちと目が合う。

「ね。私たちと組もうよ」




ユイトが女子チームに入ることになった。


「え?女子が一人こっち来るんじゃなくて?」

ガイルは少し混乱したが、


ガイル・レオ・オリバー

ユイト・エマ・リリカ


この二チームに決まった。


エマはちらちらとレオを見る。

リリカは、いつもより笑顔が多い。

ユイトは変わらず穏やかだ。




レオが顔を寄せる。

「去年はスタートダッシュ。そこから魔法で揺らした」


オリバーが続ける。

「でも先輩たちは魔法係を二人にして、こっちを揺らしてきた」


……そこで、風を起こしすぎて吹っ飛んだんだった。

今年は気をつけないと。




「でだ。今年は――スタートダッシュからの、魔法二人攻撃だ」

レオがニヤリと笑う。


「ええー、それまんまじゃん」

「作戦って言えるの?」


「つまりだ。相手がゴールできなきゃいい。

でも、俺たちは先にゴールする。それが一番だ」

レオは言い切った。


……言われると、そんな気がしてくる。


「そうだな。それがいい!」

ガイルも乗り気だ。




「じゃあ役割だ」

「オリバーは抜く瞬間まで漕いで、魔法係一号」

「ボート一つ分離れたら、二号を俺がやる」

「いいなあ。俺が二号やりたい」

ガイルが言う。


「いや。体力あるお前は三号だ。とどめ役な」


「よっしゃ!俺かっこいい!」

いきなりポーズ。


「ガイルはいつでもかっこいいぞ」

レオが棒読みで言う。


「なんだよ!」


一瞬すねて――そのまま全員で笑う。




「なあ」

オリバーが口を開く。

「気がついたんだけど」

「転覆させるなら、風と、水入れるの、どっちがいいと思う?」


レオが止まる。

ガイルも止まる。


「……いいとこ突くな」


「水の方が効きそうだな。転覆しなくても重くなる」


「じゃあ、俺が水やる。オリバーは風」

「ガイルは三号で風な」


「了解!」




作戦は決まった。


あとはやるだけ。

今年こそ優勝だ。


三人で円陣を組み、拳を突き上げる。




ふと、思い出す。


職員室の廊下の写真。

父さんとノア先生。

そして、あの太陽みたいに笑う女の人。


あの人たちも、こうやってボートを漕いでいたのかもしれない。


そう思うと、妙に嬉しくなった。




暑い夏。


抑えきれないくらい、楽しい。


ナツアカネが一匹。


夏の中を、すっと横切っていった。




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