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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第72話 川日和


「おい。次、何やる?」


ガイルが椅子に寄りかかる。


「暇かよ」

レオが返す。


「いや、白鳥はすごかったよ?でもさ、そのあとだよ、そのあと」


「ぷっ」

ユイトが吹き出す。

「ガイルらしいね」


「えー?」

「なあ。例えばさ、また何か売るか、遊ぶか」


自然と三人の視線がオリバーに集まる。


「んー……」

少しだけ考える。

「今はあまり。知らないだけかもだけど、フキもタケノコも終わったし」


「んじゃ遊ぼうぜ。明日、川行こう。な、いいだろ?」

ガイルがそう言ったときだった。


「川へ行くの?」


そばにいたエマとリリカとミナがこっちを向いた。

「私たちもいい?」


急に言われて、ガイルが一瞬固まる。


「え、あ、うん。別にいいけど」


男四人で顔を見合わせて、うなずき合う。


「でも、川だぜ?俺ら――」

レオが言いかけたところで、


「下着一個余分に持っていけばいいかな?」

ユイトがさらっと言う。


「自分の弟も、多分来るけど……」

オリバーが付け足す。


「えー、弟くん来るの?楽しみー」

ミナが逆に喜んだ。


「私たちは下に水着着て行くから。ね?」

女子三人がうなずく。


リリカもミナも楽しそうだ。

エマは、少しだけレオを見ている気がした。



次の日――


「今回もガイルとオリバーの釣りチームと、俺とジャックの魚取りチームに分かれるけど、ユイトどうする?」


「僕は釣りかな」


レオが女子の方を見る。

「お前たちは?」


「私たちは見てる。ちょっと川に入るし、釣りも見る」




「よし、オリバー、ユイト。あのへんに糸垂らそうぜ」

ガイルが真っ先に意気込む。


「朝から急に気温が上がってきたから、今、魚も動きがいいはずだ」


ユイトとオリバーが同時に顔を上げる。


「……意外。ガイルってそんなこと考えてるの?」

思わず聞いてしまう。


「俺、生き物とか好きだよ」

「だって、かっこいいじゃん」

何でもなさそうに言う。


(へー……)


「そうだね。そういうガイルもかっこいいよ」


「よせやい。照れる」


ガイルは竿を伸ばしながら続ける。

「俺のことよりさ。なあ、また何か売って稼ぎたいんだよ。何も思いつかなくてさ。難しいんだもん。また考えてくれよ」

「自分で稼いで買うって、すげえ嬉しいんだよ。うまい肉も食いたいしな」


ニヤリと笑う。


「うん。みんなで何か取ろう」

オリバーも少し笑った。


同じ感覚をガイルも持っていた。それが少し嬉しい。


「父さんが褒めてたよ。子どもなのにいい品持ってくるって」

「このまま商人もいいんじゃない?」

ユイトがにっこりする。


「そこは冒険者だろ」


ガイルが針を投げる。

「お!早くもだ」


「あ、僕も!」


「オリバー、網!網!デカいわこれ、重い!」


「すごーい!」

「僕のも負けないよ!」


なんとか引き上げる。


三人で大騒ぎしていると、リリカがやってきた。


「もう釣れたの?」

魚を見て目を輝かせる。

「こんな大きいの獲れるんだ。ユイトすごいね」


「い、いやあ……」

ユイトが照れる。


「え、俺の方が大きいんだけど?」


納得いかなそうなガイルの肩を、オリバーがぽんと叩いた。




一方――


ジャックはエマとミナに見守られながら川に入る。


「ジャック。そっちから川縁に沿って魚追ってくれ」


「わかった、レオ兄ちゃん」


ゆっくり移動する。


石に滑る。


「キャッ!ジャック大丈夫?」

ミナが声を上げる。


「大丈――」


足が崩れる。

ぐらり、と体が傾いた。


「ジャック!」

レオの声が鋭くなる。


そのとき――


風が、吹いた。


横から押すように。


水面が一瞬だけ乱れる。


ジャックの体が、わずかに流れから外れた。


「……っ」


踏み直す。


石をつかむ。


なんとか立て直した。


水しぶきが上がる。


「……だいじょうぶ」


「無理すんな!」

レオがすぐに近づく。


「ごめん……」


「謝んな。足元見ろって言っただろ」

そう言いながらも、肩をしっかりつかんだ。


エマとミナも駆け寄る。

「ほんとに大丈夫?」


「うん……」


少しだけ間。


レオが川を見る。

「……今の、流れ変わったか?」


「え?」

ミナが水面を見る。


もう、いつも通りの流れだ。


少し離れたところで、オリバーはそれを見ていた。


風が、ふっと吹く。


(……気のせいか)


何も言わない。


ただ視線を外した。





昼になり、火を起こして魚を焼く。

「今回、かなり取れたんじゃねえ?」

「釣り、楽しかったね」

「獲るのも面白いんだぜ」

ワイワイと話は尽きない。


リリカがパンを出す。

「母さんが、食べてって。手作りなの」

ミナとエマもリンゴやウインナーを出す。


「すごいな」

レオが目を丸くする。


「うまそう」

「みんな、ありがとう!」

ユイトが笑う。


「うわーい!」

ジャックも嬉しそうだ。


みんな、自然と笑っていた。


美味しい魚と、にぎやかな食事。


悪くない。


むしろ、いい。



川の水の冷たさも、

夏の日差しも、

みんなの声も。


全部、気持ちよかった。



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