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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第71話 いつもの朝



朝の空気は、いつも通りだった。

少しひんやりしていて、静かで。


昨日のことが、夢みたいに思える。


ゆっくりと、目を開ける。


天井は変わらない。

聞こえてくる音も、いつも通りだ。


外で誰かが動く気配。

台所の方から、かすかな音。

「起きたの?」

母さんの声。


「うん」

短く返す。

体を起こす。


少しだけ、軽い気がした。

気のせいかもしれない。


顔を洗う。

水が冷たい。

でも、それもいつも通りだ。


外に出ると、風が吹いた。


弱い風。

髪が、わずかに揺れる。


足が止まる。


ふと、昨日の光景がよぎる。


白い影。

空に広がる羽。

風。


すぐに、消える。


「おーい!」

遠くから声。

ガイルだ。

「遅えぞ!」


「今行く」

歩き出す。


土を踏む感触。

変わらない。


レオもいる。

いつもの顔。


「昨日のやつ、やばかったな!」

ガイルが早速話し始める。


「ね?すごいでしょ?」

ユイトも少し得意げだ。


「毎年じゃないんだって?」

「うん、風が強い年だけらしい」


そんな会話が続く。


オリバーは、少しだけ後ろを歩く。


風が吹く。

今度は、ほんの少しだけ。


でも――


分かる。

昨日と、同じ。


完全じゃない。

でも、似ている。


足を止めるほどじゃない。


でも、気づくくらいには。


手を、少しだけ開く。

何も起きない。


当たり前だ。


でも、

嫌じゃない。


「どうした?」

レオが振り返る。


「いや」

首を振る。


少しだけ考えて、

「……なんでもない」

そう答える。


レオはそれ以上聞かない。

ただ、軽く笑った。


それでいい。


また、歩き出す。


風が、後ろから吹いた。

背中を押すみたいに。

少しだけ、足が軽い。


前を見る。


いつもの道。

いつもの景色。


(……まあ、いいか)

それでいい気がした。


今日は、また暑くなりそうだ。

朝の陽差しに、

そんな強さを感じた。


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