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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第61話 次は何を売る?

「なあ、次、何を取る?

また、肉、食おうぜ」


ガイルがレオとオリバーに話しかける。


いや、相談というより、ねだっているようにも見えた。


春の終わりの風が、教室を通り抜ける。

気持ちのいい天気だ。


子どもたちで取った桑の実を町で売った。

父さんが仕事ついでに連れていってくれた。

そのお金で串肉を買って食べた。


美味しかったなあ。

油と塩の味。

また食べたい。


でも――安くはない。


山で取って、町まで運んで、売る。

それだけの手間をかける価値はある。


……と思う。


「なあ、ユイト」

レオが聞いてくる。

「おじさん、次に町に行くの、いつ頃かな」


「えーと……いつも二週間ごとだから、来月の中旬頃かな」


「それだと、桑の実はもう終わりだな」

「何か、別のものを取った方がいいかも」

オリバーが顎に手を当てて考えている。


オリバーは大人しい。

ガイルやレオと一緒にいると目立たないけど、

近くにいるとわかる。


慎重だ。

理屈で考える。


魔法の課題も、いつも先に終わらせる。

魔力量が多いわけじゃない。

ただ、人よりずっと考えている。


――時々、怖がっていることもある。

理由は知らない。


でも。

今は、前を向いている。


「その頃なら、ワラビかタラの芽か……」


「それ、どこにあるんだ?」


「今のうちに場所を探しておかないと。

町に行く前日に、一気に取れればいいな」


「あ……山といえば」

思い出す。


「父さんが、熊に気をつけろって……」

言った瞬間、少し怖くなる。


「本当。お前たち、いいよな」


不意に声がした。

ケントだった。

「遊んでばっかりでさ」


教室の空気が、少し止まる。

女子たちの視線がこっちに向く。


「んー?いいじゃん」

ガイルが気にした様子もなく言う。

「やることやって、楽しんでるだけだろ?」


「その通りだな」

レオも笑う。


「ってわけでさ」

ガイルがニッとした。

「一緒にやりたかったら、声かけろよ」


「……お、おう」

ケントはそれ以上何も言わなかった。


「ワラビとタラの芽か」

レオはすでに次を考えている。

「それ、町で売れるのか?」


「村でも食べない人いるしなあ……」


「どうなんだろ」


「えー?俺、肉食いたい!」

ガイルがぶれる。


「せっかくやるなら、確実に売れるやつがいいな」

レオ。


「安全なものがいい」

ユイト。


「時期と条件が合うもの……かな」

オリバー。


意見がまとまらない。


ムムム。


「売るって……難しいな」

オリバーがぽつりと言う。


「だな。相手がいるからな」

レオがうなずく。


「父さんが言ってた」

ユイトが思い出したように言う。

「商売は、“求められてるものを用意しろ”って」


「難しいなあ……」

ガイルが椅子を傾けながらぼやく。


少しの沈黙。


オリバーが顔を上げた。


「……でも、やってみないとわからないよ」


三人が見る。


「まずは試してみよう」

「市場調査も兼ねてさ」


「……いいな、それ」

レオが笑った。


「じゃあ次は――」


「ワラビとタラの芽だな!」


「よっしゃあー!いつ取りに行く!?」

ガイルの目が輝いた。



空は青い。

遠くで、少し早いホトトギスの声。


季節が、また一つ進んでいる。


自分たちも――


少しだけ、前に進んでいる気がした。


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