第54話 卒業式の気持ち
チョコイベントの後もエマはレオを見ている。
でも、レオはいつもと同じ。
この二人はどうなる?
ガイルは姉ちゃんが卒業と知って大騒ぎ。
卒業式も泣いちゃって......。
オリバーは自分の気持ちに気が付くか?
切ない春がやってくる。
強い風を起こして。
少しずつ成長する二年生。
一緒に楽しんでいただけたらと、思います。
――クラスメイトの春――
あんなにあった雪はほとんど溶けた。
地面が見えるようになった。
春の芽が出ている。
今日は、学校が終わったら、春の野草取りだ。
「たくさん取れるといいな、オリバー」
「そうだね。ヒヨコグサあるかな。」
「草に、名前があるの?」
三人で靴を履き替える。
玄関でクラスメイトが、おしゃべりをしていた。
「また明日ー!」
軽く手を振って別れる。
エマはレオを見ていた。
でもレオはいつもと同じ顔だった。
―結局、渡せなかったのかもしれない。
――ガイルの叫び――
上級生も帰宅時間みたいだ。数人の先輩達が歩いていた。
そうだ。六年生は、もうじき卒業だ。
胸がチリっと、痛くなる。
「そういえば、中学部って、どこにあるの?知ってる?」
レオとガイルに聞いてみる。
「んー?確か、こことは、ちょっとだけ、離れてるけど、隣町に近いところだったと思う。」
「姉ちゃんが、言ってた。」
レオがなんて事ないように答える。
「ええ!姉ちゃん、卒業?本当?」
ガイルが大きな声で吠える。
「俺の姉ちゃんがあああ!いやだあああ!」
「ガイル。うるさい。しかも、俺の姉ちゃんだし。」
レオが即座にツッコむ。
でもガイルは、聞いてない。
「くそう。俺も一緒に卒業してだなあ、中学部行く!」
燃える目で断言する。
「はいはい。」
レオは呆れている。
――牧場で野草詰み――
家に帰り、ジャックとジュニアを連れて、レオ、ガイル、オリバーは、牧場へ行く。
野草取りだ。
いちばん喜んでいたのはジャックだった。
「わーい!ジュニア。どこにも行かないで食べるんだよ」
仔牛だったジュニアは、もう、だいぶ大きい。
それでもジャックは、ジュニアの世話を焼いている。
ジュニアもジャックの言うことを聞いて、そばにいる。
地面にはナズナのロゼッタがたくさんあった。
「これが、ナズナなんだ。食べれる。茹でると美味しいよ。」
ガイルに説明する。
「難しいな。草だろ?たんぽぽなら、わかるんだけど。」
ガイルは、困った顔。
「たんぽぽは、まだ伸びてないねえ。」
あたりを見回すがまだ育っていないようだ。
「もう少したてば、たんぽぽ、取れると思うよ。去年たくさん取れたから」
「おう。」
ガイルがにっこりと返す。
レオはもう、ナズナを取り始めている。
――牧場の風――
たしかに、たんぽぽを去年取った。
思い出した。
その春には、エリオットが学校からいなくなった。
そして、
今年、お姉ちゃんが卒業になる。
エリオットと姉ちゃんとでは、全く違う。
けど、知ってる人がいなくなること。
それは、自分の一部がなくなるような、そんな気がした。
これは―、
......なんだろう。
さみしい?
急に息が出来なくなる。
牧場いっぱいに、風が走った。
春の風だ。
――卒業式――
こんな日が来なければいいのに。
何度も思った。
でも、チョコイベントの日に見た。
姉ちゃんと笑い合っていた、背の高い男子生徒を思い出す。
そうすると、さっきまでの思いは、小さくなる。
勝てるわけがない。
そんな気は、していた。
体育館に整列する。
歌が始まる。
姉ちゃんが、学校に来るのは
今日で最後だ。
見える。
きれいに整えられた髪。
真っ直ぐな背すじ。
喉が詰まる。
だめだ。
風は、起こさない。
起こしたら――壊れる気がした。
視界が、にじむ。
これは未練だ、わかっているけど、
レオの家に行けば、
また会ってしまう。
その事が、細い糸のように残っていて、切ることが出来ない。
そんなことを考える自分が、少し嫌だった。
隣から、すすり泣く音。
ガイルだった。
「姉ちゃーん」
「なんでお前が泣くんだよ」
レオが小声で言う。
その時。
姉ちゃんが、ふとこちらを見た。
そして――
小さく手を振る。
「あ!」
ガイルが顔を上げる。
「今、俺に手を振ってくれたよな!?」
泣きやんでいる。
.....違うだろ。
そう思った。
でも。
(いいな)
胸の奥が、きしんだ。
ガイルじゃなくて。
自分に向けてほしかった。
(......ああ)
やっとわかった。
これは――
さみしいじゃない。
春なんて来なくていい。
でも、
春は、
それでも、来てしまう。
強い風を起こして。
長い冬の終わりを告げていた。
牧場に野草詰みに来ているオリバー。
ふとしたことでも姉ちゃん関連に心の風が。
レオは三年生出の魔力測定と属性確認が気になります。
あたたかくなる春。
それぞれ心は揺れます。
またご一緒に楽しんでください。
次回もお楽しみに。




