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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第53話 ハートの行方


とうとうチョコイベント当日。

エマは レオに渡せるのか?

ルーカスの想いは届くのか?

そしてオリバーは――


雪解けの季節。

少しだけ大人になる、二年生の一日です。


よろしければ一緒に楽しんで行ってください。

――チョコイベント当日――



冬の晴れ間。

屋根の雪が溶け、つららの先からポタタタタと滴が落ちる。

陽の光を受けて、きらきらと輝いていた。


朝、教室に入った瞬間に分かった。


――いつもと違う。


空気が、少し落ち着かない。

席に座っても、視線があちこちに動く。

ひそひそとした声。


机の中を何度も確認する子。

やけに静かな子。

逆に、明るく振る舞う子。


みんな、そわそわしている。


(今日、なんだよな)


チョコイベント。

正確には、昨日作ったハート型のホットケーキを配る日。


それだけのはずなのに――

教室の空気は、まるで違っていた。




――レオとガイルの朝――



「おはよー!」

レオが入ってくる。


「さっきさ。下駄箱で上級生が……」


包みをこっそり見せる。

明らかにチョコだ。


「おはよー!」


ガイルも続く。


「……なんか、いつもと違う」

小声で言いながら、こちらも包みを見せる。


「こっちが男子から。こっちが女子」

明らかに男子の方が多い。

(……男子からの方が人気だ。)


レオが吹き出す。

「なんだそれ!」


「俺、知らないよ!」


三人で笑う。


雪合戦のあとから、二人は目立っている。

教室でも視線が集まっていた。

オリバーは、ふと周りを見る。


エマはいつもの場所。

リリカとミナと一緒。


でも――


何度かレオの方を見て、すぐ逸らしていた。




――跳ねる心臓――



ふと、廊下に目がいった。


上級生。


手の込んだ編み込み。

すらりとした手足。

伏せた目。


レオの姉ちゃんだ。


ドクン。


心臓が跳ねる。


息が苦しい。


……風は、出さない。


起こさない。


姉ちゃんは笑っていた。

誰かと話している。


並んで歩く相手――

背の高い六年生の男子。


そのまま、遠ざかる。


世界が一瞬、遠のいた。


(……お似合いだ)


気づけば、拳を握っていた。

手を開くと、爪の跡が残っている。


ゆっくり息を吐く。


心臓だけが、まだ騒がしかった。



「ねえ、オリバー」

ルーカスが小声で話しかける。


「ちゃんと持ってきた?」

机の中を指す。


「一応ね」


包みを軽く触る。


「よかった……」

ほっとした顔。

でもすぐ、少しだけ真剣になる。




――ホットケーキを配る日――



ノア先生が入ってくる。

「さて。配りましょう」


ウインク。

「家庭科と魔法実習の作品です。チョコイベントではありませんよ」


(......そういうことにしておくんだな)


一瞬の静寂。


――ざわっ。


空気が動く。


椅子の音。

足音。

笑いと、ためらい。


少しずつ、動き出す。


「……よし」


ルーカスが立つ。

包みを握る手が、少し震えている。

深呼吸。

そして――歩き出した。


向かった先は、エマ。


「エ、エマ!」


少し裏返る声。


「なに?」


いつも通り。

でも、少しだけ固い。


ルーカスは差し出した。

「これ……昨日のやつ!」

言い切る。


沈黙。


エマは見て――

ふっと笑った。


「ありがとう」

受け取る。


「あとで食べるね」


「お、おう!」


戻ってきて、机に突っ伏す。

「……終わった……」


オリバーは、少しだけ息を抜いた。



教室のあちこちで、同じ光景。


渡す。

受け取る。

笑う。

照れる。


ミナとリリカは並んで動き、ユウトとケントに渡していた。



そして。


視線が止まる。


エマ。

包みを机に置いたまま――


レオを見ている。

机の中に手を入れる。

出す。


包みを両手で持つ。

でも、脚はそのままだ。

……動けない。



ガタタッ。


「せんせー!トイレ!」

「俺も行く」

レオとガイルが立つ。


「あ!」

エマも立つ。


レオが振り返る。

ガイルが言う。


「男子トイレだぞ?」


一瞬の静寂。


「ばか!」

エマの声が響いた。


「やれやれ」


ノア先生が、小さく笑う。



つららの水が、雪を溶かしていく。


夜になれば、また凍る。

でも、また溶ける。


繰り返しながら――

少しずつ春になる。


そのゆっくりした流れが、


楽しくて。

でも、

少し、もどかしかった。

春は別れの時期。

レオの姉ちゃんは小学部を卒業します。

卒業式にガイルは泣いてしまいます。

その時オリバーは――


それぞれの 恋と呼べるかわからない気持ちが交錯します。

次回もお楽しみに。

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