表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/98

第51話 雪合戦のあとで ― 廊下の写真

吹雪の中の雪合戦は終わった。

クラスメイト全員で戦った、大騒ぎの試合。

思いがけない結果のあとには、さらに意外なことが待っていた。

ガイルもレオも、なぜか先輩たちにモテモテ。

それを見て、エマは少し慌て気味。

そしてオリバーは、学校の廊下で父さんの写真を見つけて驚く。

でも、その隣には――もっと驚く写真があった。

北の田舎。

小さな小学校。

今も昔も、ここには友情がある。

寒い季節なのに、少しだけ心が暖かくなるお話です。

よろしければお付き合いください。

――落ち着かない――


雪合戦は終わった。

でも、まだ終わっていない気がした。

吹雪が続いている。

カンジキで雪を踏みしめながら歩く。

吹き飛ばされないように気をつけて登校する。


「あれがガイル? 奴はとんでもねえよなあ」


雪合戦は無効試合になったとはいえ、廊下ですれ違うと大柄な男子の先輩たちに反応される。


「俺、またなんか悪いことした?」


ガイルが落ち着かない。オリバーはそれを見て思った。

(……いや、あいつ、いつもやらかしてるよな)


「あれがレオ? やだあ、なんかかっこいい」


旗を掴んだ子として、今度は女子の先輩たちまでレオを見てひそひそ話している。


「俺、またなんか悪いことした?」


レオも落ち着かない。オリバーはまた心の中でつぶやく。

(……見られてると悪いことしたと思う時点で、もうアウトだよ)


雪合戦のあとから、二年生はなぜか上級生の注目を浴びている。

オリバーは、注目されている二人の間にいる。そして、注目されていない人間だ。


それが嬉しい。

褒められもしないし、嫌われてもいない。

でも、クラスメイトとの会話は少し増えた。

絶妙に、いい感じだ。それが嬉しい。


――職員室の廊下――


今日はレオが学級当番だ。

ノア先生に頼まれて、授業の本を職員室へ返しに来た。

その手伝いで、オリバーも一緒に運んでいる。


本は思ったより重く、自然と視線が下を向いた。


職員室にはそれほど用事もない。

だから、廊下に飾られたトロフィーや賞状、優勝記録なんて今まで気にしたこともなかった。

ただ今日は、本を持つのに下の方を見ていただけだ。

ちょっと気になっただけ。


職員室に入る。


「ああ、ありがとうございます。助かりました」

ノア先生の穏やかな声。


「先生。職員室の廊下にある……」


そこまで言うと、先生はもう気づいた様子だった。


「これですね」


ノア先生が廊下の写真を指さした。


「これが、オリバー君のお父さんです」


ニコニコした、がっしりした少年が写っていた。


「そしてこれが、レオのお父さんです」


隣には、やっぱりがっしりした体格の、レオによく似た少年が写っていた。


――知らなかったこと――


「え?」


「え?」


完全にハモった。


「おや。この事ではないのですか? てっきり私は……」


ノア先生も少し驚いた様子だった。


「聞いていないのですか。あなたたちの親御さんは、学生時代に非常に仲の良い友人だったのです」


そして写真を軽く指さす。


「これはボート大会で優勝した時のものです」


オリバーも聞いていなかった。

レオも初めて聞いたらしく、目を丸くしている。


レオは父親とあまり話をしないようで、戸惑いながらも真剣に聞いていた。


廊下には、歴代のボート大会の優勝チームが並んでいた。


ふと、古い優勝写真に目が止まる。


そこに写る少年が、なんだかノア先生に似ている。


オリバーが顔を上げると、先生は「しまった」という顔をした。

本当に、一瞬だけ。


次の瞬間には、いつもの穏やかな笑顔に戻っていた。


そして内緒です、というようにウインク。

知られたくないらしい。

オリバーは軽く頷き、別のものに興味があるふりをした。


聞けなくなってしまった。

でも、それはどう見ても若いノア先生だった。


肩幅の広い少年と、なぜか女子学生との三人チームだったようだ。

女子がいても優勝できるんだ、と思った。

女子学生は、太陽のように笑っていた。


――白状――


家に帰ってからも、あの写真が頭から離れない。


夕食のとき、さっそく聞いてみた。


「父さん。ボート大会で優勝してたんだね。すごいね。知らなかったよ」


父さんは頭をガシガシとかいた。

照れている。


「ああ。見たのか」


「昔だ。ライト……えーと、レオの親父とな。組んでたのさ」


「ホント頼りになる奴でな。たくさんヤンチャしたさ。そんで、ふたりでよく怒られたもんだ」


「恥ずかしい話さ」


「そうなの?」


「子どもに話せないことさ」


……気になる。


「ノア先生もボート大会で優勝してたんだね」


父さんは、少し遠い目をした。


「あの人は特別だ」


「俺が入学した時には、もう伝説だった」


「あの人がいたから、俺は冒険者に憧れたんだ」


ノア先生が伝説?

冒険者?


新しい情報は、新しい謎を呼ぶ。


「最高にかっこよかった」


父さんは言葉を切った。


「……昔のことさ。まあ、冒険者になる前に母ちゃんに出会ったからな」


「これ、もう言ったか?」


横で聞いていたジャックが口をはさむ。


「ねえ。母さんの方がかっこよかったの?」


父さんはいつもの顔に戻った。


「おう。今の父さんもかっこいいだろ?」


そう言ってジャックを抱っこしてチューをする。


「嫌だあ。髭が痛いよ。ちゃんと剃ってる?」


「今朝剃ったさ」


母さんも笑った。


――つながる遺伝――


夢を見た。


夢の中で、ノア先生と写真の女生徒は冒険をしていた。

ノア先生は若く、女生徒は笑っていた。


でも、なぜか岩が落ちてきた。


混乱の中で、先生は泣いていた。

空には竜が飛んでいた。


目が覚めると、汗をかいていた。


翌日。


昇降口でレオと会った。


「おはよう」


レオはいつものようににっこり挨拶をする。


「なんだかオリバー、今日は元気ないな」


「うん。ちょっと夢見が悪くて。大したことじゃないんだ」


「昨日さ、うちの父さんに聞いたんだ。オリバーの父さんとのこと」


「すんげえ仲良しだったって」


「うん。聞いたよ」


「仲良しの遺伝だな」


レオが、昨日見た父さんと同じ顔をした。


「本当だ」


すんげえ仲良し認定され、こっちまで嬉しくなる。


「え~? 俺も“すんげえ仲良し”だろ?」


ガイルが割り込んできた。


レオがニヤニヤする。


「んー。ガイルは遺伝じゃないからな」


「突然変異だな」


「なにそれ? よくわかんない」


三人で笑う。


笑いながら歩いていると、クラスメイトの女子に会った。

エマ、ミナ、リリカだ。


「おはよう」


「おはよ」


後ろをついて、みんなで教室へ向かう。


上級生の女子とすれ違った。


「レオ君よ」


小声が聞こえる。


急にエマがレオの隣に来る。


「なんだよ」


「いいの。なんか問題ある?」


「ないけど」


去年はルーカスのお手紙事件があった。

そろそろチョコイベントが気になる時期だ。


エマも意識しているのかもしれない。

でもレオは、たぶん何も気づいていない。


エマの隣からガイルがレオに話しかける。


「なあレオ。さっき“突然ベンリ”って言った?」


「ナニソレ? マンガ?」


「言ってねえよ」


「お前、たまにすごい聞き間違いするよな」


三人でまた笑った。


目の前の二人は、まだ二年生だ。


でも、職員室の廊下にあった写真の中の父さんたちも、きっと最初から“そう”だったわけじゃない。


雪の中で騒いで、くだらないことで笑って、少しずつ仲良くなっていったのかもしれない。


同じ、この場所の空気を感じながら。


窓には、風と雪がぶつかっている。

ガタガタと強い音がする。

隙間風も強い。


北国で、田舎だけど。


父さんも、ノア先生も、仲間と出会った。

そして今も、かっこいい。

素敵だと思う。

そう思うと、なんだか少しだけ嬉しかった。

ここで出会えるなら、悪くない。

二年生の冬。


イベントは雪合戦だけではありません。


男の子も女の子も、ちょっとドキドキする季節。

去年より、少しだけオマセになってきた女の子たち。


さて、この先どうなるのか。


次のお話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ