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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第110話 初めて自分たちの魔法で商品を売る



たくさんのかごに たくさんの柿。

天気は晴れ。

ガタゴトと揺れながら町へ行く。


「助かります」

「こんなたくさんの柿、自分たちじゃあ、運べないもの」

「荷馬車に乗せてもらえてラッキー」

ユイトの父さんに、口々にお礼をいう。


「今回は柿かあ。お前たちもよく良い品、見つけるなあ」

「へへへ。」

「これも良い値がつきそうだ。で、今回はその金で何買うんだ?」

ユイトの父さんに言われてハタと気がつく。

考えていなかった。

でも、みんな同じ意見みたいだった。

「もう、ヨダレが出始めちゃった」

「俺も」

「実は僕も」

肉だ!

「ケバブ、食べてー。」

「太いウインナー!粗挽き!」

「うわあ!止まらない!」

「だめだ!もう食べたい!」

「まだ売ってもいねえだろ!

荷馬車の中で大騒ぎになった。


ワイワイしているうちにいつもの店に着いた。

ここでリナが働いている。

扉を急いで開ける。


「店長!来たぜ」

ユイトの父さんが最初の声をかける。

こちらを振り向いたリナは、すぐに駆け寄って来た。

「オリバー!いらっしゃいませ!」


「あれ。俺たちもいるんだけどな」ガイルがぼやく声が聞こえた気がした。


「店長さん。柿を買ってくれよ」

レオはもう交渉に入っている。

「おお。こりゃ良い柿だ。それもたくさん!」

店長は目を大きくした。


「なあ。俺たち、氷柿作れるんだ。店先で売らせてくれよ。」

「……てか、売れるかな?」

「氷柿?面白いこと考えるなあ。」

店長はレオの作る氷柿を見て、チョットだけ考えて、すぐにOKをい出した。

「いいぞ。売ってみろよ。余ったら、普通に買い取ってやるぜ。」

「ただしだ。魔法は自己責任だぞ。問題を起こすなよ。

俺が横についていてやることはできないからな。」

「やったああ!売ってやるう!」

「ありがとう店長さん!」


すぐに店先で準備開始だ。

「氷柿でーす!」

「すぐにできまーす!」

男性が一人やってきて珍しそうに覗き込んだ。

「一個いくらだい?」

……やば!値段を考えてなかった!

急いで店の中に入る。

「店長さん!いくらなら売れる?」

はげた頭を撫でながら言う。

「おまえたち。先にそれ考えろよ」

「そうだけど!」

「まあ、最初は一個銅貨一枚で売ったらどうだ。様子で変えてけ」

「わかった!ありがとう!」


さっきの男性に値段を言うと、あっさりお金を寄越してくれた。

「すごいな。これは冷たくて美味しそうだ。家まで溶けずにいそうだな。」

そしてハンカチに包んで大事そうに持って行った。


「売れちゃったよ」

「銅貨一枚?すげえ。」

「ニコニコだったね」

「家の子供にあげるのかなあ」

「奥さんかも」

「自分かも?」

「それより、高く売れるんだな」

「すごいね」

ガイルは受け取った銅貨を眩しそうにみていた。

手のひらの銅貨は、確かに光っていた。

でも、桑の実や、タラの芽を売った時とは違う感覚だ。

なんだか、嬉しかった。

自分の力で商品の価値を上げられた。


そのあとは一生懸命働いた。

午後の日差しも手伝って売れたのだ。

少し日も傾き、お腹も空いて来た頃、リナが出てきた。

「チョット見ていて良いって店長が。」

「そうなんだ。」

店長なりの、リナへの気遣いだろう。

「すごいね」

「本当。こんなに売れるなんて思っていなかったよ」


リナはニコニコとみている。

自分のことのように。


リナの顔立ちは変わらない。

けれど、その表情は大きく違っていた。


白鳥祭からまだ数ヶ月しかたっていないのだから当たり前なのだけど。

まだ強い日差しがリナの顔に当たり、金髪がキラキラしていた。

目はもう、キョロキョロもオドオドもしていない。

まっすぐな瞳だ。

自然に笑う。


(この子を守りたい)

そんな気持ちが、また胸に湧いて出てきた。


暑い秋の陽。

高い空と

入道雲。


晴れやかな気持ちと

落ちつかない気持ちが

まじっていた。


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