表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
臆病な魔法使いは、小学部で静かに暮らしたい ――なのに気づけば仲間たちと笑っていた  作者: 南山


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/117

第111話 こっち側



リナと並んで店先に立つ。

ガイルやレオ、ユイトがそばにいた。


町行く人たちが流れていく。


リナは柿を見たくなったのか道端に移動した。

その時だった。

背の小さな少年が、リナに何かを投げた。

リナは思わずそれを受け取った。

少年はものすごい素早さでどこかに行ってしまった。

リナはその後ろ姿を見ると急に青ざめた。


誰だろう。

ガイル、レオ、ユイトと、投げられた荷物をみる。

「何これ?」

ガイルが指差す。

皮の財布だった。


リナは何も言わず、立ち尽くしていた。

身動きもしない。

こんなリナを見るのは初めてだ。


三人の警官が走ってきた。

息を切らせている。

「おい!少年を見なかったか?」

「え?ああ。あっちへ行ったぜ」

レオが指差す。

そのまま警官は走り出す。

一人がリナの手のものに目を止めた。

「おい!それは何だ!」

近寄ってくる。

手には警棒が光っていた。


「これは。」

リナが手を動かすと、ジャラッ と音がした。

お金だ。

すぐにわかった。


「お前仲間か!」

「痛い!」

リナが叫ぶ。

背の高い警官に腕を捻じられた。


「何言ってるんだ。誰だかわかんない奴が、走りながら投げたんだ」

オリバーが大きな声で叫ぶ。


「俺たちが証人だ」

ガイルも叫ぶ。

「子供の言うことなんて信用できるか!」

「こっちへこい!」


リナの顔をみた警官が眉根を寄せて言う。

「お、お前。この辺りでスリしてた奴だろう。見覚えがあるぞ」

「仲間か!」

リナは顔色がなくなる。

息を止めたような顔になった。

「私。」

絞り出すようにそれしか言わなかった。


「何言ってるんんだ!リナは!ここにいただけだ!」

「署で話を聞く。スリの話をな」


もうそのあとは記憶も途切れ途切れだ。

手にしていた氷柿を警官に投げつけていた。

柿の次は氷球だった。

もう夢中だった。

リナが連れて行かれたらおしまいだと思った。


気がつくとガイルもレオもユイトも同じことをしていた。

警官の騒ぎ声をきいた店長が、急いでやって来た。


リナのことを説明してくれた。

「気をつけるんだな!」

そう言って、やっと警官は納得して帰った。


「ばあか!何に気をつけるんだよ!」

警官がいなくなってから、レオが店の中で叫んだ。

「俺たちのことなんて全然聞かないんだ」

ガイルも怒っている。

「リナ、腕、怪我してない?」

腕をさすっているリナに声をかける。

頷いているだけだったリナは、泣いていた。

「あの子、一緒の仲間だったの。スリの仲間だったの」

「多分、後で私のところに取りに来るつもりだったと思う」


「私、あの子を裏切った気になってしまったの。投げられた財布を隠さないといけないのかと。逃げないといけないかと思ったの!」


リナは一気に話した。

半分叫んでいた。


誰も何も言わなかった。

店内の時計の秒針がやけに響いていた。


「それでも。リナが捕まるのはおかしい」

やっと言えた。

「そうだよ。リナは悪いことしてないよ」

「リナは被害者だぜ」

「だな」


リナの唾を飲む音が聞こえた。

「……そうだよね。私はもう、スリはしない。決めたんだ。こっち側だもんね」

リナの言う『こっち側』は普通の人という意味だと思う。

「そう。『こっち側』だよ」

背中を撫でる。

リナはまた、泣いていた。


店長はしばらく黙っていた。

それから重い声で言った。


「おい。リナのことはいい。

が、お前たち、魔法の氷で警官を攻撃したことは、許されないぞ。

あの騒ぎで、警官は気がついてないかもしれないが、今後、また同じことが起きたら、……わかるな」

「はい」

「すみません」

「気をつけます」


店長は大きく息を吐いた。

「魔法で人を傷つけたら、普通に手で傷つける罪の倍、重くなるんだぞ」

「えええ?」

「そうなの?」

「知らなかった!」

「おいおい。そんなことも習わないのか?」

「不慮の事故でもその扱いだから、みんな普段はあまり魔法を使わないんだぜ」


「そうだったんか」

「魔法は自己責任って本当にそういう意味だったんだ。」

「当たり前だろ。少し大人になったな」

店長はオリバーの頭をグシャグシャと撫でた。

「お前の勇気には驚いたぞ。よくやった」

店長はニヤリと笑っていた。

同じように笑いたかった。

でも、胸の中がぐちゃぐちゃだった。



見ててもらえたという気持ちと、警官に悪いことしてしまったという気持ちと、でも、リナを守れたという気持ちと。


やっぱり混ざって、

自分も泣いてしまった。


「あーあ。店長が泣かしたー!」

レオの声が聞こえた。



秋の空。

入道雲。


少しずつだけど、

色々な感情を

教わっている。


でも、


早く大人になりたかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ