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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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第109話 不安の始まり



「アチー。まだ暑いなあ。また、氷柿食いてえ」

レオが呟く。

もうあの授業は一週間前のことだ。

「ネーミングセンスが氷柿。ぴったりだね」

ユイトは変なところに感心している。

「むしろ、今頃の方が熟してて食べ頃な気がする」

自分は半分熟していて、半分固いほうが好きだ。

この辺はこのみが分かれると思っている。


「あのさあ。」

ガイルが急に挙手をして意見を言い始める。

「近所の人なんだけど。」

「近所の人がどした?」

「もう。年寄りな訳よ。でさ。柿を取ってくれって。

少しその家に渡してくれればあとは全部取ってくれって言われたんだよ。それも、タダで。木になってると熊が来るといけないからってさ。」


「すげえ。」

みんな息をのむ。

「どのくらいなってるかによるけど」

「売ったら」

「それは大きいな」


レオが気が付いたように跳ね上がる。

「なあ。氷柿を売ったら、どうなる?」

「良いアイデア!」

「店長の店先で売ろうぜ!」

レオが大きな目をして周囲を見回す。

「普通に売るより高い値で売れるんじゃないか?」

「良いねえ」

意見がまとまりそうだけど、なんだろう。

チョット何かが胸に引っかかって気になった。


「良いのかなあ。」

「オリバー、何言ってるんだ。良いに決まってる。」

「たくさん取れると良いな」

みんなやる気になっている。

「ユイト。お父さんにいつ町に行くか聞いてくれよ」

「それに合わせて収穫しよう」

「いいねえ」


ユイトの父さんは運よく来週に町へ買い出しにいくようだった。

前日にみんなで柿を取った。

ガイルの近所の柿の木は立派だった。

「これはすごいな」

みんな驚いて木を見上げた。

オレンジ色に色ついた柿。

たくさんの収穫になった。

実際ものすごく美味しかった。


リナにも手紙を送ってある。

久しぶりに会える。

すごく楽しみだ。


そんなワクワクする気持ちが大きすぎていた。

最初に感じた不安をもう、忘れてしまっていた。

もう、誰一人。

疑問にも思わなかった。


魔法は勝手に使ってはいけないと、一年生の時に教わっていた事なのに。



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