第106話 去年とは違う風
太陽が照りつける。
風が少ない。
汗ばかりが出る。
今年もボート大会の時期になった。
みんなのやる気は上がっている。
「今年も一丁頑張るぜー!!」
ただ今年のメンバーは去年と違う。
いつも同じになってしまいがちなので、シャッフルしようと意見が出たからだ。
「ええー?」
「今のままでいいよ」
「でも、確かに他の人とやってみたい気もするかも。」
「来年もシャッフルする?」
くじ引きの結果、三つのグループ分けができた。
レオ、オリバー、エマ。
ガイル、ユイト、リリカ。
ケント、ルーカス、ミナ。
三人で一つのボートを漕ぐ。
クラス単位での戦いだ。
「よろしくな、オリバー」
レオがにっこりする。
「また、一緒になったね」
挨拶してるとエマがやってきた。
「初めてチーム組むわね」
明るい笑顔。
「レオ。オリバー。最初に行っておくわ。私、漕ぐのも、魔法も得意じゃないのよ」
「嘘つけ」
即座にレオがニヤついていう。
「去年の漕ぎっぷり、すごかったぜ」
「あ、あれは。私必死で頑張って......」
「あれだけ漕げれれば大丈夫さ」
何てこともないようにレオが言う。
「エマ。知ってると思うけど、自分もガイルとかレオとは全然歯が立たないんだ。でも、何とかやってるんだよ」
エマにそうっと言った。
実際、あの二人に体力で勝てるとは思えない。でも魔法だって勝てているわけでもない。
「そっか」
エマは顔を前に向ける。
パンッ!
両手で自分のほっぺを叩いた。
「よし。頑張る。」
決心した瞳がこっちを向く。
「でも、私にちゃんと言ってよ。
言ってくれれば私、それを頑張るわ」
「そうこなくっちゃ」
レオが肩を組む。
自然と三人が輪になる。
近い。
エマが驚いている。
レオは気にしてない。
「俺たち。優勝するぞ!」
――
練習は上手くいかなかった。
今までと漕ぐ位置も変わり、バランスが取れなかった。
レオもガイルがいなくなったせいか、力みが入るようになっていた。
「あの能天気、いい仕事してたんだなあ......」
レオが漕ぎながら呟くと、隣のボートがスイーっとやってきた。
「俺がなんだって?」
ガイルがにやにやしている。
「何でもないよ。」
レオがそっぽを向く。
エマも去年ほどの力強さが見られない。
レオに合わそうとしているようだ。
ガツンッ!!
オールがぶつかる。
「ごめんなさい」
エマが反射的に謝る。
レオが息を吐く。
「......ごめんさい」
又、謝っている。
気まずい雰囲気が流れる。
去年はこんなことなかった。
人と合わすのってこんなにも難しいのか。
どうしたらいいんだろう。
「レオ!」
「もっと、声を出そう。去年は大きい声が出てた。
テンポよく、一、二‼一、二‼って。」
「そうね。声を出しましょう!」
「そうだな!その通りだ!」
上手くいく。
いい調子だ。
「あいつら急に良くなりやがって」ガイルの声がした。
――
「あとは作戦だな」
「去年は水魔法に苦しめられたんだよね」
「五年生にな。」
「オリバー。」
レオの真剣な顔。
「エマは前のチームでは、漕ぎ手だった。でもやっぱりオンナだ。力はオリバーの方が強そうだ。」
「分かってる。」
レオはエマの方を向く。
「作戦は去年の俺たちがやってたのがいいと思う。」
エマがうなずく。
「まずは三人が漕いでスタートダッシュ。」
「次に少し、ボート一つ分くらい距離を稼いで、魔法係一号が魔法で相手を妨害。」
「しばらくしたら、魔法係二号がまた魔法をって作戦」
「分かった」
「去年は風魔法の練習してたら、水魔法が来たんだ。対策を考えないと。」
「エマ、何かいいアイデアあるか?」
「そうねえ。......。もう、いっそ水魔法が来た時点で、三人とも魔法係になって、相手を早く沈めるっていうのはどう?」
「いいね!それいこう!」
レオがエマの背中を叩く。
エマが前のめりになる。
「あ。ごめん」
「大丈夫。驚いただけ」
ゆっくりそむけながら上げたその顔は赤く見えた。
「やっぱ。ガイルとは違うんだよなあ。体ちっせえから軽いわ」
(え。エマとガイルを比べているの?)
そう思った時、エマの顔は固まっていた。
そして、
「私、もっと大きくなるんだから!」
そう言ってリリカの方へ行ってしまった。
「え。俺、変なこと言った?」
「う、うん。間違ったことは言ってないんだけどね」
太陽が暑い。
まだ、夏は続く。




