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臆病な魔法使いは、小学部で目立たず生きたいのに巻き込まれていく ――言えなかった想いが、少しずつ世界を変えていく  作者: 南山


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104話 手紙と願い

「お姉ちゃん!待ってた!」

祭から帰ると、

つむじ風みたいに、軽い体が胸に飛び込んできた。



置いていったパンは、まだ、残っていた。

「ちゃんと食べないと。体が良くならないよ」

「食べてるよ」

軽く拗ねる。

「それより、お話し、して!祭の事。私も来年は行きたいな。」

「お姉ちゃんの恩人に会いたい」

お願い、の、目になる。

かわいい。

「お礼は、……言ったよ?」

「それでも!

そうだ!ヒーラー様には、まだお礼言ってないよ!」


今日は、お店が定休日。

私もお休み。

お礼の手紙を書くことになった。


私を治してくれたヒーラー様は、たまたまこの町の教会に来ていた。

普段は、遠くの街の治療院にお勤めだということだった。

教会に行けば教えてもらえるだろう。


一緒に手紙を書くのも手伝ってもらおう。


教会に着くと、見知ったシスターたちが出てきてくれた。

「あなた、本当に良くなったわね」

「顔色が良いわ」

「働いているの?すごいわ」


ヒーラー様へのお手紙を一緒に手伝ってもらう。

私だけでは、失敗しそうだ。


妹の書きたい内容はもう、覚えている。

何回も聞いた。


姉(私の事)を治してくれてありがとうございます。

大好きな姉さんなんです。

本当にありがとう。


手紙のあとに


私も、ありがとうと書きたかった。


でも、その言葉だけじゃ足りない気がした。




私なんかの字で良いのかとも思ったけど、妹はここまで、歩けないだろう。すぐに疲れるから。




私は、字が上手くない。

だから、ゆっくりと集中して書く。



シスターたちが私の頭の上で話してる声がしている。



「ここの治療院、有名よね。」

「腕の良いヒーラー様たちがいるのよね」

「ねえ、知ってた?あのヒーラー様って、出身がこの辺りなんですって。」

「だから、数年おきの巡回でここを希望して来られたのかしら」


何とか書き終えて、封をする。



そこで、はたと、気が付いた。

「ねえ。ヒーラー様は、どんな病気でも治せるの?」

もしかして、妹も元気になれるかもしれない?


シスターたちは、顔を見合わせた。

「私たちには、わからないけど……。」

「お金は、かかるわよね。」

「やっぱり見て頂かないと、何とも言えないと思うわ」


言われてみれば、当たり前のことだ。

診察も受けずに、確かなことなんて分かるわけ無い。


それでも、諦めきれない。

お金を貯めて、

いつか、

妹を見てもらいたい。


あの、ヒーラー様なら。


「いつ、おいでになりますか?」

「そうねえ。今年は、来てくださったから、二.三年後かしら。」

「でも、あの方とは、限らないわよ」


「はい!わかりました!」


そう。

それまで、お金を貯めればいい。

どうせすぐには貯まらないんだから。

頑張って働こう。



石畳。

ついこの間、事故した通り道。

スリだった自分。


「今は、働くこと考えてる」

不思議。


オリバーたちと出会って、何かが変わった。

何も変わっていないのに。

まるで、

つむじ風が、クルリと円を描くように。

でも、心地いい。



リナは、前を向いた。


心がほどけて


そのまま、走り出す。



小さな風が、背中を押した気がした。


ー前へ。



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