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平穏を望む転生魔王、今度こそ世界を変える  作者: 彼岸茸
第十一章

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46 導きの終焉

本日 2 回目の投稿です。

 月明かりだけが照らす、廃墟と化した王都の一角。

 その静寂の中、ネザルたちは再集結していた。


 魔力供給路の三箇所を破壊した。

 これで教皇の無限とも思える復活は阻止できたはずだ。


「ゼギス様、どうかお願いします。必ずや教皇を止めてください」


 ミリエルが聖塔(ソフィエル)の最上階を見上げる。


「大将なら大丈夫だろ」

「そうそう。ゼギスちゃんならやってくれるよぉ」


 気楽に言うのはグラディオスだ。

 彼に同意するピリムはいつの間にか、セラフィーナが淹れた紅茶の香りを楽しんでいる。


「私たちができることはやった。後は結果を待つだけだ」


 ネザルが告げた。その声音に不安や焦りは欠片もない。

 ただ、かつての主を信じているだけだ。


 *


「魔力が来ない……?」


 突如、宙に浮かぶ光の輪が消え、魔力が途絶えた。


「私の魔力が……尽きるはずはありません」


 動揺する教皇フォルに向かい、ゼギスが幽輝剣(アトルムルクス)で斬りかかる。


「貴様の魔力ではないだろう?」


 教皇は神律剣(エルミナス)で受ける。魔力の供給がなくなろうと、その力まで失ったわけではない。

 しかし、教皇の表情に焦りが滲む。


「ネザルがやってくれたのですね。さすがは元魔王軍の参謀」

「よく分からねえが、今がチャンスってことだろ?」

「ならちゃっちゃとするニャ!」


 セフィリスが感心し、ドルガンとリスカは気合いを入れ直す。

 三人もそれぞれの武器を手に、教皇を攻める。


 教皇は二振りの神律剣で四人の猛攻を防ぐ。剣の腕は落ちていない。

 さらに浮遊する三本の神律剣を生み出す。ゼギスたちの攻撃を自動で防ぐ厄介な剣だ。


 ゼギスの剣を受け流し、その背中を斬ろうとする。

 それを防いだのはセフィリスの響律剣(アークヴァリア)だ。直後に回し蹴りを繰り出す。


 蹴り飛ばされた教皇をドルガンの拳が待ち受けるが、浮遊する神律剣がドルガンの邪魔をする。

 その隙にリスカが音もなく忍び寄り、教皇の首を狙う。その間にも神律剣が割り込むが、蛇咬の一撃で破壊される。リスカは銀蛇で追撃し、教皇の法衣が切れる。


 ゼギスとセフィリスが同時に攻撃を仕掛けるが、ここで教皇が【聖裁煌剣】を発動する。

 今までと違い、自身を巻き込む形で、天井から無数の光の剣が降り注ぐ。

 これによりゼギスたちは距離を取らざるを得ない。

 対する教皇は浮遊する神律剣で光の剣を打ち消していた。


 教皇は続けて【穿光槍陣】を複数同時に、かつ連続で展開し、ゼギスたちを近寄らせない。

 動きが制限されたゼギスたちの足元に魔法陣が出現する。【光檻聖籠】だ。

 逃げ場がなく、全員が光の檻に捕らえられる。


 しかしシエラを除く四人は即座に檻を破壊する。シエラの檻はゼギスが壊した。

 その間に教皇はドルガンに接近し、手に持った神律剣で連撃を繰り出す。

 ドルガンは手甲で防ぐが、左の手甲が破壊され、そのまま左腕を切断される。


 一瞬にやりと笑った教皇の顔面を、ドルガンが()()で思い切り殴りつけた。

 シエラが即座に治癒していたのだ。


 後方に殴り飛ばされた教皇をさらにゼギスの剣が襲う。間に宙を舞う神律剣が入るが、織り込み済みだ。

 ゼギスに重ねるように飛び込んでいたセフィリスの細剣が、教皇の胸に横一文字の傷をつける。


 さらにリスカが教皇の背中を二本のダガーで斬る。

 宙に浮く神律剣は二本残っていたはずだ。

 しかし、一本は今しがたゼギスが破壊し、もう一本はドルガンが残った右の手甲で握り潰した。


「まだです!」


 教皇が叫び、【聖裁煌剣】を発動する。

 それに対し、シエラが結界魔法で対抗する。受けるのではなく、斜めに設置する。破壊されることに変わりはないが、降り注ぐ光の剣の軌道を逸らすことができた。


 ゼギスたちの猛攻は続く。

 教皇に魔力供給していた光の輪が再び現れることはない。


 度重なる攻撃を受け、教皇の体に傷が増えていく。


「やめなさい! 私が……私こそが、導く者なのです!」


 それでも教皇は浮く神律剣を生み出し、魔法を連発する。


「世界を救えるのは……私だけです!」


 神律剣は破壊され、魔法は避けられる。

 セフィリスの響律剣が煌めき、リスカのダガーが何度も斬り裂き、ドルガンの拳が打ち抜く。

 ゼギスが上段に構える。


 教皇を守る神律剣は手に持っていたものも含め、すべて破壊されている。


「貴様は導く者でも世界を救う者でもない。ただの一人の人間族だ」


 教皇が魔法を唱えるよりも速く、ゼギスが幽輝剣を振り下ろした。


「がはっ」


 大量に出血し、教皇は口から血を吐く。

 それでもなお立ち上がった。


「私が……私こそが……」


 教皇の体が眩い光を発する。

 出血が止まり、傷が塞がる。

 外部からの魔力供給は途絶えたままだ。


「もうやめてください! その魔力は命を削ってるだけです!」


 シエラが悲痛に叫ぶ。

 それを無視して教皇は再び神律剣を生み出す。


 ゼギスたちは身構えた。


 だが、それ以上何も起こらなかった。

 そしてぼろぼろと教皇の体が崩れ始めた。

 燃え尽きた木炭のように。


 最初は四肢の末端からだった。


「違う……こんなはずでは……」


 少しずつ体の中枢に向けて灰化が進む。

 やがて顔にも灰化が及ぶ。


「赦し……赦してくれ……誰か……赦し――」


 そのまま全身が灰となって散った。


 ゼギスたちはその様をただ茫然と見ることしかできなかった。

 やがてゼギスが呟いた。


「何百年もどれだけ多くの命を奪い、歪めてきたと思っている。誰に赦しを請うつもりだったんだ、貴様は」

「人として死ぬことも、叶わなかったんですね……」


 シエラがせめてもと指を組み、祈りの言葉を唱えた。


 大広間に満ちていた神聖な空気はいつの間にかなくなっていた。

 ようやく戦いは終わった。


 ゼギスは広間の端に行き、地上を見下ろす。

 見えるのは瓦礫ばかりだ。ただ、戦の虚しさだけが広がっていた。

 教皇が同じ景色を見て何を思ったのかは知る由もないが、おそらくゼギスが感じたものとは別のものだろう。


「本当に終わった? もう動きたくないニャ」


 床に大の字になって寝転んだのはリスカだ。


「あん? 何を言ってやがる。終わったら祝杯だろうが」


 ドルガンが笑う。だが、どこか力がないのは、さすがに疲弊しているのだろう。


「ドルガンって元気ニャ」

「酒のために生きてるからな」


 そのやり取りに、小さな笑い声が戻ってきた。

 響律剣を静かに鞘に収めたセフィリスが、ゼギス同様地上へ目を向ける。


「復興には長い時間がかかりますね」


 ゼギスの隣に並んだシエラが微笑む。


「それでも、人は立ち上がります。森人族も、獣人族も、地人族も、魔人族も……そして人間族も」

次回投稿は明朝の予定です。

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