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平穏を望む転生魔王、今度こそ世界を変える  作者: 彼岸茸
第十一章

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43 神の剣

本日 1 回目の投稿です。

 ゼギスとシエラは長い階段を上る。

 リウスに邪魔されて以降は、光ノ騎士団が現れることもなく、順調に歩を進めた。


「だいぶ上ってきたが、大丈夫か、シエラ?」


 立ち止まり、気遣うように問いかけるゼギスに、シエラは笑顔を返した。


「大丈夫ですよ。ゼギスこそ、状態異常を何度も使ってましたけど、魔力は足りますか?」


 教皇フォルとは話し合いで済めば、それに越したことはないが、そう簡単にはいかないだろう。

 リウスでさえ話が通じないのだ。神聖教会の頂点ともなれば、なおさらだろう。


 おそらく戦闘になる。

 高齢のフォルがどれだけ戦えるのかは未知数だが、彼には若返りの秘術がある。


「俺は大丈夫だ。シエラは魔力回復薬を飲んでおかなくていいのか?」


 元々膨大な魔力を持つゼギスはまだ余裕がある。

 対するシエラは魔力が多い方ではあるが、ゼギスほどではない。ここに来るまでに何度も魔法を使っている。

 洗脳されたゼギスを癒すための【聖律環界】で、一度魔力は枯渇したが、魔力回復薬は飲んでいる。

 その後、ハイ=ゼリオルや光ノ騎士団との戦闘で魔力を消費してきたので、少々心許ないのは確かだ。


「そうですね。飲んでおきます」


 魔力回復薬を一本取り出し、飲み干す。


「味がもう少し良かったらいいんですけど」


 苦笑しつつ、冗談っぽく言うシエラ。教皇との戦いを前に、少しでも緊張をほぐすためだ。


「ふっ、同感だな。全部終わったら、シエラが改良したらどうだ?」

「いいですね、それ。そのためにも勝ちましょう」


 シエラは魔力が十分に回復したのを感じる。


「行こう」


 ゼギスが手を差し出す。シエラは一つ頷くと、その手を取る。



 階段を上り切ると、純白の扉があった。派手な装飾はないが、神聖さと荘厳さを併せ持っている。

 ゼギスが手で押し開ける。


 白亜の大広間が広がり、空中には魔法陣のような光の輪が浮かんでいる。その一つひとつが淡く輝き、空間を神聖さで満たしている。


 奥で地上を見下ろしているのは、神聖教会の教皇その人だ。

 彼は破壊された街並みに目を向けたまま、静かに声を発した。


「リウスは召されましたか」


 穏やかな声音だ。


「ああ。腹心が死んで残念か?」


 外を向いたまま、教皇は否定した。


「神のもとに行ったのです。喜ばしいことであり、私から言うべきことは何もありません」

「誰がどうなろうと、何も思うことはないということか」

「どちらでも同じことですから」


 ゼギスは肩を竦める。


「もう……やめてください」


 シエラが一歩前に出る。人々を洗脳し、迫害を続ければ、どこかで破綻するだろう。

 現時点で被害は大きくなっている。それは地上を見下ろす教皇にはよく分かるはずだ。洗脳と迫害の結果、ゼギスたちが蜂起し、王都が破壊されるに至った。

 今からでも、双方が矛を収めればこれ以上の被害は防げる。


 シエラの声に、ようやく教皇が二人の方を見る。


「魔力を随分と増やしましたね。ミリエルが破門だけで済ませようと進言したのも、正しかったということです」


 教皇はいつものように好々爺然とした笑みを浮かべている。


「《クラリス・コード》に洗脳魔法陣を組み込んでいたのはなぜですか?」


 シエラは教皇に会ったらそのことを尋ねなければと思っていた。

 幸いシエラには効果がなく、魔法陣自体はドルガンが破壊してくれた。

 それでも信じていたものに裏切られたことだけは確かだ。


「全ては世界のためです」

「洗脳することがなぜ世界のためになるんですか?」

「よりよい世界に導くためには必要なこと。そして誰かがそれをやらねばなりません」


 シエラには教皇の言っていることが理解できない。

 洗脳によって自由意志が制限された世界が良いものとは思えない。


「なるほどな。貴様はただ神を気取りたいだけだ」

「全ては神のご意志」


 ゼギスの言葉にも、教皇はただ穏やかに笑うだけだった。


「尤も、ミリエルが裏切るとは想定外でしたが、それも神のご意志なのでしょう。試練を乗り越えてこそ、世界を導けるというもの。シエラ、其方の魔力も世界のために使わせていただきます。破門された身であろうと、神は寛大ですから」

「話が通じないな」

「ゼギス……」


 ゼギスを見上げるシエラが首を横に振った。


「教皇を止めましょう」

「そうだな」


 幽輝剣(アトルムルクス)を抜いたゼギスが、即座に教皇に斬りかかる。

 しかし、刃が届く寸前に防がれる。金属の甲高い音が響く中、ゼギスが目にしたのは、宙に浮かぶ長剣だった。


神律剣(エルミナス)と言います。この老いた身にも優しい、自動で危機から助けてくれる剣です。まさに神の加護」


 幽輝剣を止めた剣とは別の神律剣がゼギスを狙う。

 シエラが低位結界魔法【障壁】で防ぐ。

 さらに別方向からもう一本がゼギスに迫るが、これはゼギスが幽輝剣で弾く。


「三本とは厄介な」


 ゼギスは一旦下がり、教皇との間合いを開ける。

 教皇の周囲に三本の神律剣が漂っている。


「シエラ、自分の身を守ることを最優先しろ」

「でもゼギスは?」

「なんとかするさ」


 幽輝剣と自分の体に【腐朽】を纏わせ、再び駆ける。

 神律剣が何本あろうと壊してしまえばそれまでだ。


 宙を自在に動く神律剣は教皇を守り、ゼギスの邪魔をする。

 横一閃に教皇の首を狙った一撃が神律剣によって逸らされる。


「なに?」


 ゼギスの目が驚愕に見開かれる。

 【腐朽】に触れた神律剣はいまだ健在だった。


 その隙を神律剣が狙う。聖騎士の剣のように普通ならゼギスに刃が届くことはない。

 しかし、嫌な予感がしたゼギスは咄嗟に身をよじって剣の軌道から外れる。

 避けきれず、頬を浅く斬られた。


 頬にできた傷に触れ、血が出ていることを確かめる。

 傷自体はすぐにシエラが治癒魔法で治した。


「神律剣は国王が使っていた王律剣(エルグラディウス)の原点です」


 教皇が説明する。

 要するに魔法をすべて無効化する効果があるということだ。


 ゼギスが試しに、火傷系の高位状態異常【灼傷】を刃に宿し、教皇目掛けて飛ばす。

 だが神律剣がゼギスの魔力を斬り、霧散させた。


 教皇の言葉に嘘はない。


「ならば剣で倒すまで」


 三本の神律剣に目を配りつつ、教皇に攻撃を仕掛ける。

 神律剣の動き自体はそこまで速くはない。三本あるのが厄介で、教皇に幽輝剣が届かない。


 シエラの援護の下、ゼギスは果敢に教皇を攻める。

 全て神律剣に防がれるが、そのうち一本がピキリと音を立てた。次の一撃でその剣が折れ、光の粒子を残し、溶けるように消えた。


「万能ってわけではないな。王律剣よりも脆い」


 そうと分かれば、やることは一つだ。

 先に神律剣を破壊する。



 静かな大広間に、幾度となく剣同士がぶつかり合う音が響く。

 やがて、残りの剣も半ばから折れ、宙に溶けた。

 そこで止まらず、教皇に向けて上段から斬り下ろす。


「まだ終わりませんよ」


 教皇の笑顔は崩れず、新しく生み出された神律剣が、幽輝剣を受け止めた。

 ゼギスは舌打ちをして、距離を取る。


 今度は教皇の周囲に五本の神律剣が浮遊している。

 さらに空中に漂っていた光の輪が一際強く輝き、光矢が放たれた。


「ゼギス、上です!」


 シエラの注意で被弾しなかったが、戦闘中に避けるのは困難だ。


「助かった、シエラ。だが手が足りん」


 ゼギスの声に焦燥が混じる。

 そこに複数の足音が聞こえてきた。


 セフィリス、ドルガン、リスカの三人だ。ヴェルガルドが消えたことを確認し、聖塔を駆け上ってきたのだった。


「神の試練はかくも厳しいものですか。良いでしょう。全力でお応えします」


 静謐な大広間に、教皇の声だけが響いた。

 空気はよりいっそう澄み渡り、神聖さを増した。

次回投稿は本日夕方の予定です。

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