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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
4章

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95話「魔術兵10」


 ユーリアが言った本題とは、もちろん増援の話だ。



「さきほども申しましたが、わたくしには3年生50名をお貸しする用意があります。ご要望とあれば現役の魔術兵も150おつけいたします」



 その見返りはなんだろう?

 手塩にかけて育成した学生をタダで貸すわけがないのだから。


 それに、いくら精鋭の50とはいえ、絶対数が足りない。


 どんなに個体として強くても、休息が必要だ。

 負傷すれば休養も必要になる。


 それに対して魔物どもは無尽蔵に沸き続ける。


 数が足りない。


 だけど。

 数が足りないことくらい、ミルトンの惨状を何日もかけて見て回ったユーリアならわかっているはず。


 どうしても、確認しておかなきゃいけないことが1つある。



「お返事の前に1つ質問します。なんで、王国軍がミルトンに来てくれないんですか?」



 これはずっと気になっていたことだ。

 行きの旅路でルイーズからミルトンの成り立ちを聞いてから、ますます疑問が膨らんでいた。


 なんで王都は魔物に対する重要な守備拠点であるはずのミルトン防衛に本腰をいれないのか?


 いくらミルトンが王国領ではないと言っても、不自然だ。


 ミルトンが陥落すれば、魔物どもは領内になだれ込んでいくかもしれないのに。


 王女の私兵集団しか送らないというのは、不自然すぎる。



「ミルトンは王国領ではないから防衛の必要なし。国軍の総司令官がそう判断されたからです」


「だけど、ミルトンが落ちれば、王都だって危険に!」


「そう、わたくしはわかっております。ですが、あの方たちはなにもわかっていないのです。いいえ、なにも理解したくないのでしょうね。見て見ぬふりをしていれば悪いことはおきない。そんな淡い夢に浸っていたいのでしょう」



 あの方たちってのは、実権を握っている宰相派のことだろう。


 これではっきりした。

 宰相派は、すでにミルトンを見捨てている。


 王都が大編成の正規軍を送ってくれる可能性はゼロだ。

 うすうすわかってはいたけど……。


 こうなったら少しでも戦力をかき集めて帰るべきだろう。

 50じゃ少ないとかなんとか文句を言ってる場合じゃない。



「王女様、仮に学生と魔術兵をお貸しいただくとして、こちらはなにを提供すればいいんですか?」


「状態異常武具と属性武具、合わせて1000セット」



 まあ、そう来るわな。

 そのくらいならもう問題になる数じゃない。


 ユーリアとの面会から1か月、討伐大会の間にわたしは狂ったように武具を作り続けていたから、そのくらいの数ならすぐに揃えられるだろう。


 この際、ユーリアが大量の武具でなにをやらかすつもりなのかは考えない。


 どうせわからないし、わかったところでわたしにはどうでもいい。


 問題は単純な算数だ。


 ユーリアが自由にできるのが魔術兵と学生200だけだとしたら、1000セットも必要ない。


 あとの800はどの軍に装備させるつもりなのか?


 考えられる候補は、アレだな。



「できない、とはもうおっしゃらないのですね」


「できますから」


「それは頼もしい!」


「ですが、そこまで大量になるとコストが相当かかります。そして、王女様の使い方によってはわたしもリスクを背負うことになります。見返りが50と150の肉壁ではぜんぜん見合いません」


「では、なにを差し出せと?」



 あ、この反応は予期してたな。

 話を切り出しやすくて助かる。


 アゾラールを派遣してくれと頼もうかと思ったけど、思いとどまった。


 あれはおそらくすごい魔術師だけど、団体行動は苦手なタイプだ。

 団体行動の極みとも言える軍隊では絶対に浮く。


 浮き散らかして、周囲を混乱に巻き込む可能性が非常に高い。

 アゾラールやめ。


 本来の目的だけに絞ろう。



「ディ・ソラリ軍も貸してくれませんか?」


「……」


 ユーリアは即答せずに、考えるそぶりを見せる。

 浮いている800セットがディ・ソラリ軍のためのものなら、算数の辻褄が合う。


 考えるそぶりをした挙句、ユーリアは首を振った。



「ディ・ソラリ閣下は王国軍の将軍。命令を下せるのは王陛下ただお1人。王女ごときが閣下を動かすことなどできかねます」



 嘘だな。

 それが本当なら、即答していたはずだ。


 ディ・ソラリがミルトンに来たのは、たぶん国王の命令じゃない。

 国王はあのときすでに病に臥せっていたはずだから、実権は宰相派が握っていたはず。

 かといって、宰相が遣わしたのでもない。


 もしディ・ソラリを送ったのが宰相なら、ベスは直接フォーリア家に連れていかれていたはずだ。


 フォーリア家は宰相派の重鎮なのだから、わざわざ王女のところを経由する理由がない。


 よって、ディ・ソラリをミルトンに派遣したのはユーリアである。

 証明完了!



「嘘だとお思いのようですね。ですが、本当に閣下を動かす権限などわたくしにはありません」


「でも、アミリアヌスのときは……」


「腹心のフォーリア家から依頼を受けて、エリザベスの救出をディ・ソラリ閣下に命令したのは宰相様です。わたくしではありません」



 ん?

 それは変な話だな。

 順を追って論理的に考えたら嘘になるはずなんだけど、ユーリアに嘘をついている様子がない。



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