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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
4章

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94話「魔術兵9」


 校長室に入ってきたひょろ長い魔術師は、ベスを見るなり額に手を当てて大げさに嘆きはじめた。



「オゥ、ベス! ベスガール! こんなところで油をセールしてたデスか!?」


「アゾラール先生」


「ノゥ、授業サボるはよくないデス。せっかくの才能をトラッシュにしてしまいマース!」


「はい、申し訳ございませんデス!」



 おいベス、一瞬で引きずられてるぞ……!


 どうやらひょろ長男は、アゾラールという名前でベスの先生らしい。


 アゾラール。

 その名前はミルトンを出る前にリュドミラから聞かされた『要警戒人物リスト』に入っている。


 たしか、かなりの実力者とのこと。


 どれどれ。

 かわいいベスの教鞭を取ってるやつがどの程度の人物か、ごあいさつするとしようかね。


 と、わたしが『鑑定』しようとしたとき。




 いきなりアゾラールの顔が目の前に出現した。




 は?


 今、息がかかる距離に面長の顔がある。


 体はひょろ長だけど、意外にも顔は整っていて、尖りアゴマニアなら好きそうだ。


 て、そんな場合じゃない。

 一瞬前まで5メートルは離れてたはず。

 移動する素振りすらなかった。


 なにが起きたの?


 アゾラールはわたしを凝視して、



「オゥ、魔力感じないデス。気のせいデスか」



 と、不可解そうに言って手を下ろした。


 手を上げていた、ということはつまり構えを取っていたのだ。

 おそらく攻撃のために。



「おやめなさい」



 なんだこいつワープしたのか?

 ワープしながら、しかも攻撃体勢を整えたのか?

 そんな魔術あるのか?


 つーか『鑑定』がバレたのか?

 それにしたって反応が早すぎる。



「お2人ともおやめなさいと言っているでしょう」



 ユーリアの声にハッと気づくと、周囲が剣呑な雰囲気になっていた。


 エリンが今にもアゾラールの背に斬りかかろうと身を低くして構え、そのエリンを牽制するようにレベッカもまた剣の柄に手をかけている。


 テルマ、ルイーズも即座に動ける姿勢で、シェリル1人だけが直立不動のまま涼しい顔。


 周りからはアゾラールがなんの脈絡もなくいきなりわたしに飛びかかったように見えているはずだ。


 エリンの反応は本来なら正しいし、ありがたい。

 むしろまだ斬ってないのが不思議なくらいだ。


 けど、今は、この反応はまずい。


 ユーリアの静止に、レベッカが視線はエリンに向けたまま剣からゆっくり手を離す。


 だが、エリンはまだ攻撃態勢を解かない。

 むしろ、殺気がどんどん膨れ上がっている。


 その殺気が臨界点を超えようとしたとき。


 いきなりアゾラールが土下座した。



「失礼しましたデース!!!」



 ほとんど剣技を放ちかけていたエリンが呆気に取られて止まっている。



「レディ、アポロジャイズするデス! なにかデンジャーを感じたのデスが、拙者の思い違いだったようデース!」



 アゾラールはぽりぽりと頭をかきながら立ち上がり、わたしから離れた。


 それを見てようやくエリンも攻撃態勢を解く。


 こいつ、『鑑定』を察知して回避したのか?


 もう1回。

 試しに、もう1回、鑑てみるか?


 すると、また瞬時にアゾラールの姿が消えた。


 今度出現したのは元いたところから、2メートルほど離れた場所。

 出現先にあった置台に接触し、花瓶が下に落ちて割れた。



「ノゥ!! 罪なき花瓶がデストラクション!」



 アゾラールがキッとわたしに視線を向けてくるけど、わたしは「なにも存じませぬ」というすっとぼけた表情でぶんぶん頭を振る。


 アゾラールは不思議そうに首を傾げた。



「オゥ、また勘違いデース! 拙者トゥデイ調子悪いデスね!」



 間違いない。


 どうやっているんだかわからないけど、こいつは鑑定の能力発動を察知してワープしている。


 言動を聞けば、魔術攻撃の類を受けたと思っているようだけど、わたしから魔力を感知できないから戸惑っている、そんなところだろう。


 しかも、このワープ回避って自動発動じゃないの?

 本人の意思でコントロールしているなら、花瓶を割るようなマヌケはやらないだろう。


 これは……おもしろいぞ。


 鑑定!

 アゾラールがワープ。

 鑑定!!

 アゾラールがワープ。

 鑑定ッッッ!!!

 アゾラールがワープ。


 アゾラールが見てくるたびにわたしは真顔でぶんぶん否定する。

 笑いをこらえるのに苦労した。


 これは「反応」じゃない。

 「反射」だ。

 間違いなく本人の意思と関係なく反射で自動発動してる。



「ノーウ!!! この部屋、魔力狂ってマス! ゴーストデーモンいるデス!」



 謎のワープを繰り返す奇行を見かねたのか、ユーリアが取り繕うようにフォローを入れてくる。



「アゾラール先生は外国出身でいらっしゃるのですよ。言葉が多少不自由なのは多めに見てあげてくださいね」



 いやフォローするのそこ!?

 言葉なんてどうでもいいわ!



「少々変わったところがおありですけれど、先生はまごうことなき真の魔術師。王都にも先生ほどの傑物は2人といません。エリザベスの指導者としてこれ以上の人材はいないと自信をもって言えますわ」



 たしかに。

 『鑑定』の気配を察してワープ回避、しかも反撃の構えまで取っていた。


 これで実力者じゃないなんてことは、ありえない。


 ユーリアが動じていないところを見ると、アゾラールが不意にワープするのはわりとよくあることのようだ。


 べつに『鑑定』を察知されたのはこれが初めてじゃない。


 剣聖フェリシアも察していたし、ディ・ソラリもなにか気づいている様子だった。

 きっと強いやつにはなんとなく伝わってしまうんだろう。


 だけど、反撃されかけたのは初めてだ。

 しかも初見で。


 ついつい遊んでしまったが、アゾラールがその気なら死んでたなー。


 今までバレないと思ってTPOわきまえずに鑑定してきたけど、これからはタイミングを選ぶべきかもしれない。



「この部屋よくないデース! さあ、ベスガール! 授業に戻りマスよ!」


「はいデス! 先生!」



 2人は駆け足で出ていった。

 あかん、もう影響バリバリに受けとるで……。


 そういえば、ベスは影響を受けやすい子だったな。

 なんか、取られた気がする……。


 嵐のようなやつが去り部屋に静けさが戻ると、ユーリアはわたしに向き直った。



「さて、本題に移るといたしましょう」



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