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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
4章

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91話「魔術兵6」


 魔術学校の学生といっても、少年少女ばかりじゃない。


 たしかに十代の若者が多いけど、壮年期の大人もそれなりに混じっている。


 義務教育が存在しない世界だから、年齢層が幅広いのは納得できる。


 というか、この凄惨な光景を見ていると年齢層なんてどうでもよくなってくる。




 ここは魔術学校じゃない。

 魔術兵学校だ。


 なるほど。

 「本物」の魔術兵を見せるって、こういうことだったのね……。


 なーにが「魔術を使うプロ」を養成している、だ。

 正確には「魔術で戦うプロ」を養成している、だろ。



「この3年生が当校最初の卒業生になる予定です。入学時には200人以上いましたが、来年には約50人が卒業して魔術兵団に配属されるでしょう」


「4分の1しか残らなかったんですか……」



 いなくなった150人はどうなったんだろう……?


 退学して実家に帰りおっかさんに叱られてるだけならいいけど、きっとそんな甘くないんだろうなあ……!



「4分の1も残った、と言ってくださるかしら。わたくしは2割も残れば御の字と思っておりましたので。彼らのがんばりを誉めてやってくださいませ」



 誉めるもなにも……。


 こんなガチ勢にわたしごときがかける言葉なんてあるわけない。

 正直、ここで偉そうに見学してるのすら居心地が悪い。



「さて。この訓練をご覧になって、なにかご意見はございまして?」



 ユーリアの笑顔は自信満々。


 ケチつけられるものならつけてごらんなさい、と言わんばかりで。

 ほぼドヤ顔だ。


 うーむ。

 わたしならあんなマジメに戦わずに、状態異常でハメて楽する訓練をするけど、あんまり余計なことを言わんとこ。


 ケチをつけたと思われて怒らせたらアレだし、差しさわりのないことでてきとうにお茶を濁しておくとしよう。



「そうですねー。今は魔術ばかりに見えますけど、武器戦闘も混じるとよりそれっぽくなるんじゃないかな~って思ったり…………っ!?」



 ユーリアが途中で目をカッ! と見開いた。

 気に障ったのか!?



「それは盲点でした……お恥ずかしい。さすが親方、慧眼ですわね。さっそく訓練に取り入れさせると致しましょう」



 ああー学生さんごめーん。

 いらんこと言った!


 ただでさえハードな訓練の日々を送っているのに、余計な重荷を……!



「この50名の卒業予定は来年ですけれど、すぐにでも増援としてお渡しできます」


「え? この学生さんを?」


「ええ。学生身分の今なら、校長のわたくしの権限で自由にできます。そうですわね。実地演習とでも名目をつければよいでしょう」



 ミルトンみたいな人類最前線の魔境でいきなり実地演習とは、学校どころかもう軍隊も超えちゃってんな。


 完全にブラック学校だ。

 絶対に子どもを入学させたくない。



「兵数がご不安ということであれば、現役の魔術兵どももお付けします。少々手続きにお時間を頂くことになりますけれど、肉壁程度には役立つでしょう」



 肉壁て。

 ちょいちょい言葉が悪くなるなこの王女。


 わたしは後ろに立っているルイーズを振り返った。

 現役プロの目からこの学生たちの実力がどう見えているか知りたかったのだ。


 ルイーズはすがりつくように杖をぎゅっと握りしめ、口をものすごく折れ曲がったへの字にしていた。


 ドン引きってやつだ。

 ありがとう、みなまで聞くまでもないようだ。



「お返事はまた後でお聞かせいただくとして、そろそろ校舎へ参りましょう」


「校舎、ですか?」


「ええ。エリザベス嬢は当校の1年生ですから」




 1年生ですから。

 1年生ですから。

 1年生ですから。




 今。


 今、なんつったこの王女?


 ベスがこの魔術学校の、否、子どもに行かせたくない学校ランキングぶっちぎりナンバー1の超絶ブラック学校の1年生って、そう言いやがったのか?


 まさかね~。

 ありえませんわ。

 そういや、こっちにきてから耳かっぽじったことなかったし~。



「エリザベス嬢は魔術兵として優れた素養をお持ちです。魔術の才能はそこそこのようですけれど、飲みこみが早く、なによりも判断力が抜群と聞いております」



 どうやら聞き間違いではなかったらしい。


 なるほど。

 そうくるか。


 やけに和やかで、やけにスムーズに話が進みすぎてるからおかしいとは思ってたんだ。




 この女、ベスをブラック学校にぶち込んで本格的に人質にしやがったな!




 学生たちの苛酷な訓練を見せつけたのは、実力を誇示して値を吊り上げるという目的もあるにはあるんだろうけど。


 本当の目的は。



「言うことを聞かなければ将来ベスもこうなるぞ」



 と脅しをかけることだったのだ。


 敵!


 こいつは敵だ!


 事ここに至っては一戦もやむなし!


 戦じゃあ戦!!!


 その思いで振り向くと、後ろのエリンが力強くうなずき、当然のように剣の柄へ手を伸ばした。


 わたしは即座にぶんぶん首を横に振りつつ、声を出さずに口の動きだけで「ダメ! ダメ!」と伝えた。


 エリンは不満そうに口を尖らせて、剣から手をはなした。


 いや危ね……。

 わたしまで脳筋になるところだった……。



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