↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/135

90話「魔術兵5」


 王立魔術学校訓練場。


 周囲を校舎や寮の建物に囲まれた訓練場は、まるで人目から隠れるような立地だ。


 というか、明らかに隠すためだろう。


 ルイーズによると、学校の敷地を囲む塀には「インビジビル破り」の対抗魔術が施されていて、ステルス侵入ができないようになっているらしい。


 わたしは、訓練場の横でユーリア王女の隣に座って学生たちの訓練模様を見学している。


 学生たちの訓練は、昨日見た魔術兵たちの訓練とはぜんぜん違う。

 それはもう天と地ほど違う。




 昨日魔術兵がやっていたのは、いわゆる「的当て」に近い。


 長々と詠唱して魔力を練り、動かない置物に自分のタイミングで魔術を放つ。


 中には目を閉じて集中している者もいた。


 つまり、魔術の訓練だ。

 戦闘訓練ではなかった。


 だけど、今目の前で繰り広げられているのは、どこからどう見ても戦闘訓練だ。


 激しく、速く、流動的。


 1対1、もしくは複数対複数が敵と味方に分かれ、互いに攻撃をしかける。


 相手に本気で当てるつもりで魔術を放ち、逆に相手の魔術を効果的に発動させないように邪魔していく。


 悠長に目を閉じて集中する者などいない。


 全員が足を止めることなく敵を倒すために激しく動き続ける。


 昨日見たような派手な爆炎はほとんど上がらない。

 それが逆に恐ろしい……。



「いかがですか? スズキ親方」



 この熾烈な訓練を学生に課している校長――ユーリアが優雅な笑みを浮かべた。



「怖いです……」


「そうでしょう? わたくしもいつも震えます」



 わたしはさらに怖くなった。

 この光景を前に笑顔を維持できるのは、なかなかのアレな胆力だ。


 なにしろ学生はマジで魔術を当てにいっているのだ。

 というか、当ててる……。


 1対1では『火球』や『石岩弾』などの小さな魔術が高速で飛び交う。


 威力は小さくても「速い」魔術で敵の足止めを狙う。


 相手が足を止めたら、より大きな魔術で制圧していく。


 当然、相手はその思惑通りにやらせないように動く。




 魔術戦を見るのは初めてだけど、見学しているうちに、あることに気づいた。


 魔術を邪魔する手段は意外にも豊富らしい。


 30分ほど見ていただけでも2つの手段に気づいた。



---

 1、術の発動前に敵の集中を中断させる


 2、(発動後)術の発生前に魔力を相殺する

---



 1つめは素人でもわかる。

 敵が銃を撃つ前に、手から叩き落としてしまうのと同じだ。


 2つめが銃撃とは違う要素で、たとえ術を「発動」されてしまっても、その「発生」前ならキャンセルさせることができるようなのだ。


 たとえば、指定地点に「熱」と「衝撃」を発生させる『爆炎』の火魔術の場合、指定地点までは無害な魔力が飛んでいくことになる。


 この無害な魔力は「待機魔力」と言うらしい。

 術の発生待機中ということだろう。


 指定地点まで到達した待機魔力はそこで初めて『爆炎』として発生し、爆発を起こす。


 この「術者から指定地点まで」の間に、待機魔力に対抗する魔力を当てれば、術を相殺してキャンセルできるようだ。


 火魔術の待機魔力の場合、水魔術の魔力を当てればキャンセルできる。


 ざっくり言えばそういうことらしい。


 まあ、魔力量の差によっては相殺できなかったり、いろいろ条件はあってかなり高度な技術みたいだけど、そこらへんの細かい部分は見てるだけじゃわからない。


 だから、キャンセルさせないように、発動とほぼ同時に発生して飛んでいく『火球』や『石岩弾』のような小さい魔術が飛び交うことになるのだろう。


 いきなり必殺技を使おうとしてもダメ、ってことね。




 複数戦は1対1の延長みたいなものだった。


 前衛が相手を翻弄し、後衛が一撃で致命傷を与えられる大きな魔術を準備する。


 まるで冒険者のパーティ戦みたいだ。

 訓練というより、ほとんど実戦に近い。


 威力の小さな魔術は当てにいくけど、爆炎のような高威力の魔術はさすがに外している。


 だけど、狙いはギリギリの場所。


 安全マージンを意識してあまりにも大きく外しすぎると、すかさず教官から叱責が飛ぶ。



「貴様、外しグセをつけるつもりか! もっとギリギリを攻めろ!」


「はっ、申し訳ありません!」



 教官陣にはどう見ても魔術師じゃないやつが混じっている。


 露骨に鬼軍曹っぽい雰囲気や佇まいから察すると、たぶん現役の軍人だ。


 ここはほんとに魔術学校なの……?




 そんな激しさだから、当然、負傷する学生も現れる。


 軽い火傷程度ならかわいいもので、なかには骨折や深刻な打撲を負う学生もいた。



「このために優秀な治癒術師をつねに待機させています」



 ユーリアの言葉どおり、学生が負傷すると、すぐに治癒術師が駆けつけて癒しを与える。


 それでも癒しきれない重傷者はリタイアして医務室かどこかへ運ばれていく。



「昨日親方は防具の弱さから魔術兵の弱さを見破られましたね。うちの学生たちの装備はどうですか?」


「整ってると思います」



 学生たちはほとんど全員がDランク防具の制服を身につけている。


 なかにはCランク防具を装備している者も数人いる。

 制服が色違いだから、たぶんエリート学生なんだろう。


 1人、Dランクまでしか扱えない「装備力」なのに、Cランクを装備している学生がいた。

 あれだとせっかくCランク防具を身に着けていても装備していることにはならず、防御性能はゼロになる。

 裸と同じだ。


 ここが実力主義の社会だからだろうけど、見栄って怖いな……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。