↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/135

87話「魔術兵2」


 庭園。


 案内されたのは、兵営には似つかわしくない庭園だった。


 小ぢんまりとしているけど池があり、周囲に植物や花が植えられた白い屋根付きの東屋もある。


 王女ユーリアはそこにいた。


 輝く金髪、華やかな装い。

 そしてテーブルにはティーセット。

 優雅なお茶の時間のようだ。


 ここ、兵営ですよね?



「遠路はるばる、ようこそおいでくださいました」



 ユーリアは、長旅の労いを口にした。

 それから着席を促したので、わたしは座った。


 エリンたちはシェリルとともに東屋の外で待機している。



「いかがでしたか? 我がカルバニア王国が誇る魔術兵団は?」


「そのー、新鮮でした」


「ふふっ。新鮮ですか。おもしろい感想ですこと」



 ユーリアはお茶を飲んだ。


 今回も、客に飲み物を出すつもりはないらしい。

 渇水戦術が徹底しているところを見ると、カルバニア王国はそういう風習なのかもしれない。



「どうしてこのような場所にお招きしたか、疑問にお思いでしょう」


「はい」


「あなたが王都にいらした理由は理解しています。増援をお求めなのでしょう?」


「はい。それもあります」



 たしかに目的の1つではあるけど、本音を言えば、そっちはおまけだ。


 事前に聞かされた情報は、増援の依頼が成功する見込みはほとんどないと示している。


 わたしの目的は一も二もなくベスに会うこと、だ。



「ここには今15部隊、150名の魔術兵が所属しております。この兵たちを増援としてお貸しする、と申し出たら、いかがされますか?」


「ここの魔術兵を?」



 ぶっちゃけいらねー。


 わたしの直感はそう告げていた。

 これは鍛冶師の勘だ。


 まあ、わたしの一存で「いらない」とは言えないけど……。



「いらない、と顔に書いてありますわね。それは無礼ではなくて?」



 ユーリアは音もなくカップをテーブルに置いた。

 冷たい目でわたしを眺める。


 見るでも、睨むでもなく、ただそこに存在する物体を眺めている、そんな感じで。


 こんなに冷たい視線は初めて経験する。



「答えてくださいますか」


「いや、その、わたしごときがどうこういう問題じゃ――」


「正直に」


「いりません!!!」



 言っちゃった……。

 はずみで……。

 プレッシャーがすごいんだもん……。


 ご自慢の魔術兵にケチをつけたんだから、これで増援の件はご破算だな!


 ミルトンのみんなごめーん。

 わたしはこれから無礼打ちになるだろうから、直接謝ることはできそうもないけど、あとのことは任せたよ……。



「本当に無礼ですね。一流の鍛冶師にとって、一介の王女など敬意に値しない、と」


「そういうことでは……」


「ではお聞かせ願えますか。なぜいらないと?」


「……防具が、しょぼいからです」


「防具? それはどういう意味ですの?」



 ユーリアが不思議そうに声を高くした。


 もういいや、どうせクビだ。

 リアルに吊られる方の。


 城壁に並んだ、300の恨めし気な首吊り死体のことは今でも覚えている。


 遅ればせながらあの列に加わるんだ。


 でも、その前に言いたいことを言ってやる。



「たとえ訓練であっても、優秀な冒険者は弱い防具を身につけません。つねに万が一の事態を想定しているからです。でもここの魔術兵はみんな弱い防具をなんとも思っていないようでした。だから、いりません。弱いと思うので」



 はい決定!

 クビ吊り決定!

 城壁の目立つところ開けとけよ!


 ところが、ユーリアはふっと表情を緩めた。


 なんか笑ってる?



「本当におもしろい方。わたくしがあなたでも、この魔術兵はいりません」


「ええ?」


「しょせん寄せ集めのクズ集団ですもの。押しつけられても迷惑なだけですわ」


「クズ……って、王女様が設立したんじゃ……」


「わたくしが用意したのは魔術兵団という容れ物。ですが、兵員を選んだのは別人です。冒険者崩れ、学院の落ちこぼれ、食い詰め者。魔術師としてはどうあれ、兵士としては使い物にならない者たちばかり。おおかた宰相様のいやがらせでしょう。あのような弱兵では、危機に瀕したミルトンでお役に立てるとは思えません」



 あれー、なんか風向き変わった?


 クビ吊られずに済む?



「お詳しいんですね、ミルトンに」


「ふふっ、自惚れが強いお方ですのね。わたくしがただあなたとお会いするためにミルトンへ参ったとでも?」


「いえいえそんなまさかー」



 そう思ってたけど!

 自意識過剰なのは昔からですとも!




 聞けばユーリアは開会式の後、帰ったフリをしてお忍びの滞在中、自分の目でミルトンや周辺の状況を見て回ったのだそうだ。


 だから、ミルトンの置かれた危機的状況を正確に把握しているつもりだ、と。


 ふー。


 どうやらクビを吊られずには済みそうだ。

 だって、創設者本人が「寄せ集めのクズ集団」とまで言ってるんだから。


 それを「いらない」って言ったくらいでクビ吊るはないでしょ、さすがに?


 しかし……。


 魔術兵団を創ったユーリア自身が使えないと言うし、それを聞けばさっきルイーズが「発動が遅い」とわざわざピンポイントで弱点を指摘したのも納得できる。


 ここの魔術兵には、戦闘には絶対に必要な「速度」が致命的に足りていないのだろう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。