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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
4章

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86話「魔術兵1」


 新市街のゴミゴミした街路を抜ける。

 シェリルに連れていかれたのは、物々しい兵営だった。


 密集した街並みから少し離れた小高い丘。


 そこにドン! と鎮座する兵営は、広々としていて、数百人単位が生活できそうだ。


 丘を上る。


 近づくと、石材などの建築資材の風化具合から、最近できたばかりに見える。


 門兵はシェリルを見ると無言で通してくれた。




 なぜ兵営に連れてくる……?

 もしや。

 いきなり軍事力を誇示して威嚇してくんのか!?




 などと身構えたけど、敷地内に入ってみると一般的な兵営と毛色が違うことに気づいた。


 魔術師のローブだらけなのだ。


 普通の兵営なら武器を持った兵士たちが練武しているであろう訓練スペースでは、魔術師たちが戦闘魔術を練習していた。


 自然のものではない炎の渦や氷の槍が飛び交っている。


 派手に見えるけど、その魔術がすごいのかどうかは、わたしにはわからない。


 横の席に座るルイーズをチラ見しても、とくに感心している様子はない。

 そんなに……って感じか。


 見渡してみると、他にも兵営らしくない景色がちらほらある。


 そこらじゅうに描かれた魔術陣。


 謎めいた文言が刻まれた陣幕。


 松明やランタンのかわりに淡い自然光を放つ魔石。


 ほんのりと漂うオリエンタルな香り。


 朗々と響く音楽的な詠唱。


 間違いない。

 ここは魔術兵団とやらの兵営だろう。

 王女が今年になって設立したとかいう。


 まあ、それがわかったところで、わたしがここに連れてこられた理由はさっぱりわからないわけだが。


 わかるのは、みんな身なりが立派ってこと。


 ローブは仕立てがよく高級そうだし、激しい訓練をしているのに清潔感があるから、衣服にはかなり気を使っているようだ。




 ファッションとして。

 戦う者の装いとしてではない。




 目に映る魔術兵たちを『鑑定』してみたけど、城門の兵士と同じでやっぱり武装がしょぼい。


 ほとんどがEランク、よくてもD。


 とはいえ、「戦士職」と違って「魔術職」の武装は実力とイコールではないことがよくある。


 武器の扱いに習熟することに興味がない人が多いせいか、冒険者ランクはCなのにEランク武器しか装備できない、なんてアンバランスなのも見たことある。


 さすがに防具面でそこまでアンバランスな冒険者は見たことないけど。


 その点、戦士職はなんだかんだいってわかりやすい。

 武装や体つきを見ればある程度わかる。


 細身に見えるけど強い、ってパターンもこの世界ではよくあるけど、その逆の、筋骨隆々だけど弱い、というパターンは皆無だ。


 筋肉キャラはちゃんと強い。

 パワーイズマッスル! なのである。


 そんなわけで、ここの魔術兵が強いか弱いかわからないので、隣に座ってる同業者に聞いてみることにした。



「ルイーズ、この連中ぶっちゃけどう? 強そう?」


「ふぇっ? わ、わたしに聞くんですか?」


「いや構えなくていいから。参考として聞きたいだけだから」


「……あのう、耳をお借りしても?」



 とルイーズは声を低くした。

 わたしはうなずいて顔を近づけた。



「実力がバラバラのようなので一概には言えませんけど、中には威力が高い高位の魔術を使える方もいるみたいです。ただ……」


「ただ?」


「発動が遅いです……全体的に……」


「なるほど。よくわかった」



 聞いてみたけど、やっぱわかんなかった!


 しかし、素人でも魔術の発動が遅いことが有利要素にならないのはわかる。


 前の世界で「メールやメッセージの返信が遅いやつは無能」って何回も何回も何回も言われたから、それは身に染みてる。


 つまり、ポンコツってことか。


 そのとき、1人の魔術兵が放った爆炎が近くのカカシに命中して派手に炎上させ、その熱気が御者席のわたしにまで伝わってきた。




 ……ポンコツはいいすぎか。


 なかなかやるじゃねえか。


 びっくりしたぞ。


 つーかわざとだろこのやろう、こっちチラ見してたの知ってんだぞ!




 ここの魔術兵たちの攻撃性能はともかく。

 防具にはがっかりだ。


 矢面に立たない魔術師だからって防具をサボっていい理由にはならない。


 ミルトンの冒険者なら、借金してでも防具をより良いものに更新しようとする。

 そこはサボらない。


 そういう冒険者をさんざん食い物にしてきたわたしだから断言できる。

 弱い防具を平気で装備していられるやつは弱い。


 ……増援候補、この人たちでもないよね?




 にしても、これを見せる王女の意図はなんなんだ?


 兵士の訓練風景なんて一応軍事機密だろうし、なんでわたしに見せるんだろう。


 魔術兵団は王女が設立したというし、自慢したかったのか?

 おもちゃじゃあるまいし。




 中庭につくとシェリルがひらりと馬を降りた。


 いちいち所作が華麗だ。

 惚れそう。


 わたしたちも馬車から降りる。


 シェリルは馬の手綱を使用人に預けてから、こちらを向き直った。



「すぐお目にかかりたいゆえ到着次第お通しするように、と申しつかっておりますが、よろしいですか?」


「あーそうですね……」



 と、エリンたちを振り向くと、みんなが力強くうなずいた。

 心構えは万全らしい。



「行けます」


「ではこちらへどうぞ」



 わたしたちは中庭から兵舎の回廊を通って、奥へ進んだ。



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