71話「討伐大会4」
討伐大会7日目。
今、わたしの目の前には、特徴的な毛皮の襟付きマントを着た赤いロングヘアーの冒険者が立っていた。
王国全土にその名を轟かせるほど有名な、国家級冒険者のレベッカ。
そのレベッカが、わたしに同行を求めてきているのだ。
時は討伐大会初日に遡る。
―――
ミルトンの中央広場。
神殿のお膝元である広場には、朝から大勢の人が集まっている。
これから討伐大会の開会式が開催されるのだ。
わたしも三部会の代表者として出席していた。
広場には、いつもはないイベント用の専用設備が設置されている。
いちばん目立つのは、地面より少し高い、演台つきの舞台。
これは司会や主催者がスピーチや説明なんかを行うための場所だろう。
今はまだ冒険者ギルドのスタッフたちが忙しそうに作業している。
演台の左手側には掲示板が2つ。
1つは学校の黒板程度の大きさで、そこには討伐目標のリストが記載されている。
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・魔物の名前
・脅威度ランク
・おおよその出没数
・目撃場所
・獲得ポイント
・報酬
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その辺りの情報が簡潔に列記されている。
これは参加している冒険者用だろう。
同じ情報は冒険者ギルドにも掲載されているはずだけど、大会期間中は「ギルドに行かなくても確認できるように」という配慮かもしれない。
近くには臨時の受け付けらしきブースがあるので、討伐の依頼受注や報告処理などもあそこでできるようだ。
もう1つの掲示板は選挙のポスター掲示板を縦にも横にも広くした感じで、とにかく大きい。
あれには冒険者パーティの名前がずらりと列記されていて、その横には獲得ポイントの項目がある。
開幕前だから、まだどのパーティも獲得ポイントはゼロだ。
いわゆる順位表だろう。
討伐の結果をリアルタイムに反映させて、観客たちにも順位をわかりやすく伝えるためのものだろう。
討伐を競技として盛り上げるために観客も巻き込んでいこう、という意図と思われる。
たしかに、その意図はうまくいっているようだ。
まだ開会前だというのに、大掲示板の前には多くの人が集い、熱っぽい声が飛び交っている。
ただ……。
その盛り上がりの中心にいるのは『賭け屋』なんだけど。
賭けの対象は大会の最終結果だけじゃなく様々で、デイリー順位のような小刻みな項目や、不謹慎なものになると「最速脱落パーティ予想」なんてものもあるようだ。
プロの賭け屋が設定した絶妙なオッズに射幸心を刺激されて、朝っぱらから銅貨や銀貨が乱れ飛んでいる。
賭けで大盛り上がり、ってのは主催するギルド側としては微妙な気持ちかもしれないけど、競技とギャンブルは親友みたいなものだから、しょうがないね。
それにミルトンはギャンブルを禁じていないし、そもそも賭け屋用のブースがしれっと設置されている時点で、ギルドも黙認しているのだろう。
最後の特別設備。
演台の右手側、掲示板の向かい側には貴賓席がある。
スタジアムの観客席のように傾斜がついた階段づくりで、上段席と下段席に分かれている。
わたしが座っているのは上段席だ。
一応これでも三部会の代表者なので、来賓扱いなのだ。
ただし、上段席はどうやら二等の来賓用らしい。
席が狭くて椅子の作りも雑だし、「礼儀として呼ぶには呼んだけどしょせんオマケだよ」という主催側の本音が透けて見える。
なんでだろう……。
椅子の品質が悪いだけでちょっと不愉快な気分になるものなんだなぁ……。
席次にこだわる人がやたらと多いのも納得だね。
一等の御来賓用は下段席だ。
席数が少なく、広々として豪華だし、食べ物や飲み物を置くためのちょっとしたミニテーブルもついてる。
まだ席には誰もいない。
こうなってくると気になるのは、
「いったい誰が下段席に招かれているのか?」
ということだ。
仮にもミルトンの重鎮である三部会の代表者様を二等客扱いするほどの重要人物ってことになるわけだけど、正直そんな人物思いつかない。
いや、自分が大物だと言いたいわけじゃないですけれど!
そんなつもりはぜんぜんないですけれど!
それはともかくとして。
「そろそろ始めてくれないかな……」
朝早くから呼び出されたせいで眠い。
冒険者がたくさん街に滞在している今、鍛冶屋は書き入れ時で毎日とても忙しい。
暇があったら仮眠したいのに……。
「ふぁ……」
わたしが欠伸をかみ殺したとき、人々がざわめいた。
みんなが指さしているほうを見る。
神殿の大階段を、盛装に身を包んだ見るからに身分の高そうな一団が下りてくる。
とくに目立つのは、先頭を歩く若い女性だ。
年齢は十代後半から二十歳くらい。
編み込みの入った綺麗な金髪に、目鼻立ちが整ったきめ細かい白い肌。
高貴を絵に描いたような美人だ。
なによりも目を引くのは、目の覚めるような真っ赤なドレス。
ところどころに白い差し色が入っているのがまた華やかさを引き立てている。
おかしいな……。
わたしが紅白の正装をしてたときはたぶんバカみたいに見えてたのに、あっちは同じ紅白でも品と格を感じさせるぞ。
まあ正装って、巫女服なんだけど。
その女性が華やかすぎて、接待役と思われる隣の大神官の聖衣がみすぼらしく見えてしまう。
「うわーすっげー美人」
わたしは思わずアホみたいな声を出してしまった。
この世界に来てからいろんなジャンルの美人に出会ってきたけど、正直あれは別格。
ただ見目麗しいだけじゃない。
歩く姿、大神官へ向ける優し気な微笑み、民衆の歓声に応えて手を振る柔らかな仕草。
すべてが優雅で、高貴オーラをびんびんに放っている。
誰だアレ?
アレが誰だかわからないけど、確実に言えるのは、一等貴賓席に座るのはあの女性だろう。
なんならそこの賭け屋に全額ベットしてもいいくらい自信がある。
「ユーリア・シベリンド・カルバニア。王国のお姫様さ」
急に隣から解説が飛んできたので、びっくりして横を見る。
リュドミラがいた。




