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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
3章

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68話「討伐大会1」


 お祭りは、いい。


 わたしは神殿の大階段の途中に座り、大勢の人でにぎわう中央広場を見下ろしながらそんなことを思った。


 広場には、お祭りの風景にふさわしく、臨時的に設置された色んな施設が立ち並んでいる。


 冒険者ギルドの出張ブース。

 飲食店の屋台。

 衣類や宝飾品の出店。

 人形劇団の公演テント。

 占い師の館。

 武具屋の臨時店舗。


 詰めかけた人々の身分や職業や人種も種々雑多だ。


 朗々と歌い上げおひねりを稼ぐ吟遊詩人。

 虎視眈々とビジネスチャンスを窺うドワーフの交易商人。

 お祭り気分にかこつけてイチャつく地元カップル。

 華美な衣装を見せつけるようにねり歩く貴族。

 火吹き芸を披露する大道芸人。




 そして、冒険者。




 目立つのは、やはり冒険者たちの姿だ。

 固まって行動するパーティもいれば、ソロ冒険者もいる。

 とにかく数が多い。


 それもそのはず。

 なにしろ、このお祭り――討伐大会の主役は冒険者たちなのだから。


 ついに討伐大会が始まった!




―――




 冒険者ギルドミルトン支部長デンゼマが「討伐大会」開催を王国全土に告知してから1か月。

 ついに大会が幕を開けることになった。


 正直、1か月という猶予期間は短かったと思う。


 ここから比較的近い南のドワーフ王国でも馬車で5日、東の王都まで7日かかる。


 ミルトンは、カルバニア王国では西方に位置するため、王都のさらに東から来るとなるともっと日数がかかる。


 北方からのルートはさらに時間を要する。

 グルガン山脈をぐるりと迂回しなければならないからだ。


 鳥人の活躍のおかげで、大会の告知自体はあっという間に全土に広がった。


 とはいえ……。

 告知を受けてから、参加の意思がある冒険者はその土地での用事や旅支度を済ませ、それからようやく旅路へとつくわけだ。


 王都くらいの近場なら余裕をもって行動することができるだろうけど、遠方地からとなると急いで駆けつけても大会に間に合うかどうかギリギリのラインだ。


 それでも、今ミルトンには数多くの冒険者が集っている。


 大会開催期間中につく討伐報酬のボーナスがそれほどウマ味なのだろう。


 時間と費用と労力を天秤にかけても、十分に魅力的と言えるだけの見返りを期待できるからこそ、わざわざ遠征してきたのだ。


 だけど、それだけが冒険者を突き動かす動機じゃないとわたしは思う。


 これはわたしが冒険者の真似事みたいなことを経験したから言えることだけど、冒険稼業は金だけのためにやるには割に合わないことが多い。


 ミルトンが大量の魔物の危機に晒され、周辺住民にも少なくない被害が出ていることは、すでに王国内には知れ渡っているだろう。


 いっちょ人助けでもしてやりますか、という漢気。

 名を上げるチャンスだ、という名誉欲。

 入れ食い状態の魔物を狩りまくるぜ、というハンター気質。

 困っている人を助けるのに理由なんかいるかい? というヒーロー病。

 ヒャッハー祭りじゃ祭りィィィィ! というただのお祭り狂人。


 色んな原動力があるだろうけど、金銭以外のなにかを求めるからこそ、冒険者は冒険者なのだ。


 わたしはそんな冒険者を愛してやまない。


 なにしろ、こうして集まった金づ……じゃなくて冒険者はわたしを稼がせてくれる。


 もうね、インバウンド特需ってやつ。


 今も、広場に出した臨時店舗が稼ぐ金貨の音がチャリンチャリンと聞こえてくるようだ。




 外の地域から来た冒険者には「状態異常耐性防具」や「毒」「麻痺」「睡眠」などの状態異常武器が革新的な強武具に見えるらしく、飛ぶように売れていく。


 お祭り期間中のイベント価格ということで、ちょっと気持ちお高めに価格設定してもお構いなしでバンバン売れる。


 たとえば。

 ふだんは「銀貨100枚」で売っている武具に、「銀貨200枚」という価格設定をする。


 そのままではただの便乗値上げになってしまって感じが悪いから、討伐大会記念セールとして25%オフの「銀貨150枚」というご奉仕価格で売り出す。


 するとあら不思議。

 冒険者は定価より「銀貨50枚」ぶんお得なセール価格で武具をゲットできて、わたしも「銀貨50枚」得する。


 ウィンウィン。

 なぜかみんなが得してる!


 日本では常套手段だったけど、こんな詐欺めいたやり口はこの世界にはあるまいて。


 笑いが止まらないとはこのことだね。


 これで冒険者を愛さずにいられるだろうか?

 否、どんなに冷めた人間でも愛に目覚めてしまうね!


 しかも、これから目玉の新商品を投入する予定だから、ますます売り上げは加速するに違いない。


 そんなわけで、広場を見下ろすわたしの顔は終始ニヤニヤしてしまうのであった。



「あこぎだ!」



 というご意見も少しは聞こえてくる。

 けど、ぜんぜん気にならないね。


 わたしは冒険者の命を守ることには興味があるけど、彼らのお財布事情を守ることにはぜんぜん興味がない。


 むしろ、冒険者は自ら進んでわたしにゼニを供出するべきだと思う。


 わたしに開発資金を与えることは、ひいては全冒険者の利益になるんだから。


 ということは、わたしにゼニを払うのは「冒険者の仕事の一環」と言っても過言じゃない。

 現状では供出金が足りないくらいだ。


 ……ん?

 なんかこの思考、どこかで聞いたことがあるような。


 「冒険者はお布施が仕事」と言い切って顰蹙を買った誰かに似ているような……。


 ……んげっ、あいつか!

 わたしの思考パターンってカイシンと同じなのかよ。


 うん。

 言葉には気をつけよ。

 言葉には。




 ちなみに、荒稼ぎした売上金の散財先はすでに決まっている。


 「熱属性」「雷属性」の耐性素材を得るために、それらしい素材を片っ端から取り寄せるつもりだ。


 溶岩地帯にだけ生息するという、獄炎鳥。

 つねに雷鳴が轟く雷光樹の森に住むという、雷天馬。


 そういう実在の怪しい魔物だけじゃなくて、植物や鉱物資源など、噂レベルであっても、可能性があれば取り寄せる手配をしている。


 ゆえに、わたしはあこぎな真似をしてでも稼がねばならないのだ。


 にしても。


 冒険者は討伐大会の特別ボーナスでニッコリ。

 わたしは大会特需でニッコリ。

 地元住民のみなさんも魔物が減ってニッコリ。


 得しか存在しないなんて、この討伐大会はすばらしい期間限定イベントだ。

 デンゼマ、ほんとに有能な支部長かもしれないな。

 仲良くしといてよかった!


 そういえば。

 大会に参加しているエリンは、今頃どうしているんだろう?


 今朝は「大物食っちゃうよ~!」と張り切って出かけていった。


 この大会の結果次第ではCランクに昇格という話もでているそうだから、うまくいっているといいなぁ……。



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