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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
3章

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60話「永氷花2」


 わたしは工房に帰ると、ダンジョン探索の準備に取り掛かった。


 まず、最強装備を用意した。


 てってれー!



『武器』

---

・こん棒(+10): 攻撃力200(Cランク)


 (麻痺)(睡眠)(毒)


---

・こん棒     : 攻撃力10 (Dランク)


 (麻痺)(睡眠)

---




『防具』

---

・革鎧 (+10): 防御力400(Cランク)


 (麻痺・睡眠・毒耐性)


---

・皮の小盾(+10): 防御力400(Cランク)


 (麻痺・睡眠・毒耐性)


---

・隠れ身のマント  : 防御力1  (Cランク)


 (インビジブル)(騎乗向上)


---



 武器は2種類。

 魔物用と人間用だ。


 魔物用は当然として、旅の道中で野盗などに襲われたときのために、人間用の武器もちゃんと用意した。


 魔物用は、攻撃力の高いCランクの『こん棒』に状態異常てんこ盛り。

 昏睡打撃で仕留めきれなかったとしても、毒のスリップダメージで自動的に死に至らしめる凶悪コンボ。


 こんなのが敵として出てきたら「ハメだ!」って騒ぐね、わたしなら。




 人間用は、Dランク未強化の『こん棒』。


 こちらは麻痺と睡眠の状態異常だけ。

 悪党といえどできるだけ殺したくないから、わざと攻撃力を低く抑えてある。



「悪人の命にも平等に価値があるんです!」



 なんてきれいごとを言うつもりはなくて、ただ単にキルマークをもう増やしたくないからだ。


 あの赤黒いペイントアートは未だにたまに夢に見る……。




 なぜこん棒なのか?


 わたしは包丁もろくに使ったことがない刃物の素人だし、能力値も一般人と同じで低体力だ。


 もし攻撃力の高い刃物なんて使おうものなら、鞘から抜くときにスパッ! と自分を切って即死。

 そんなオチが見える。


 だから刃物には手を出したくない。


 防具は、防御力、状態異常耐性ともに最高品質の強化済みCランク。

 店に並べたらかなりの値がつくだろう。

 これも鍛冶師の役得かな。




 ミルトンからダンジョンまでは約1日。

 往復で2日だけど、それは旅慣れた冒険者の話だから、多めに見つくろって3日。

 ダンジョン探索も多めに2日見ておく。


 というわけで5日分の食糧と水を用意した。

 保存のきくパンと干し肉、魚の干物、果物。


 途中で補給できる目当てがないので、食糧はたっぷり用意した。


 あと、馬屋で馬を2頭借りた。


 1頭は自分で乗る用。

 もう1頭は食糧、水、応急処置キット、寝袋、簡易テント、衣類、予備の武具類などを積む運搬用だ。


 一応、万が一、念のため、しぶしぶ、嫌々、カイシンの試作ヒールポーション(毒)も袋に入れておいた。




 冒険者ギルドにはすでに「ダンジョン探索行動計画書」を提出してある。


 あらかじめこれを提出しておけば、遭難したらすぐにそうとわかり、捜索隊を出してもらえる可能性があるのだ。


 昔はこんな制度なかったので、遭難したパーティはそのまま行方不明になることが多かったらしい。


 デンゼマが支部長になってからセーフティネットとして始まった制度で、義務ではないけど推奨されている。


 さすがデンゼマ。

 生真面目さが生んだいい制度だ。


 エリンが遠征討伐隊に加わって数日留守にしているので、採取旅行に出ることをゴンドに伝言しておいた。


 今回はウサギを連れていくことにした。

 1人は、やっぱり寂しいから。

 ウサギはめんどくさがったけど、肉を人質にしたら折れた。


 これで準備は万端。

 永氷花採取の旅、イクゾー!




―――




 早朝にミルトンを出発した。

 目的地の『湖水のダンジョン』までは徒歩で1日ほどというから、馬なら数時間もあればつくだろう。


 馬で街道を東へ向かっていく。

 快適だ。


 今のわたしは『隠れ身のマント』につけた特殊効果「騎乗向上」のおかげで乗馬の達人だから、ほとんど体力を消耗しない。




 道中、東からこちらにやってくる冒険者たちとすれ違った。

 ほんの2時間ほどでソロ冒険者数人とフルパーティ2組。

 これはいつもより多い。


 東には王都がある。


 気になったので挨拶がてら話を聞いてみると、冒険者ギルドミルトン支部が主催する討伐大会に参加してひと稼ぎするためにわざわざ王都からお出まししたらしい。


 大会の結果次第で賞金が出るうえに、期間中、討伐報酬そのものにもかなり色がつくようだ。


 デンゼマのやつ、いったいどれだけカネを積んだんだ?


 いや、街の予算から資金を拠出する承認を出したのはワグネリアだから、カネを出したのは彼女か。

 うーん、それも違うか。


 ワグネリアにはミルトンの実質的な運営を一任しているけど、対外的には三部会の代表責任はまだわたしにあるわけで、名目上はわたしが承認したということになる。


 つまり、わたしが討伐大会のスポンサー様なのである!


 まあ、突き詰めるとカネの大元はミルトン市民のみなさんが払った税金なんですけどね……。

 安全保障費で開くお祭りおいしいです……。


 なんにしても討伐大会の宣伝がうまくいっているようでよかった。




 徒歩で1日の距離、ということだったけど、馬に乗っていたおかげで、やはり5時間ほどで目的地のすぐそばまで来ることができた。


 まだ昼前だし、この分だと今日のうちからダンジョン探索できるかもしれない。


 念のために地図を確認、と。


 この辺りで街道をそれて森に入り、しばらく行ったところにある湖のそばに目当てのダンジョンはあるはず。




 わたしが地図とにらめっこしていると、



「ヨシノ……」



 と、声を潜めたウサギが寄ってきた。



「ネズミがいるのじゃ……」


「……あ、ほんとだ」



 見れば、樹の根元の草むらにシロクサネズミが群れていた。

 草を食んでいるようだ。


 白くて丸っこいボディが集まってるのを見てると、なんだか『お餅のアイス』を思いだした。


 あぁ……思いだしたら口のなかに唾液が……。

 冷たくて甘いスウィーツが食べたくなってきた。


 この世界の野卑で滋味あふれる料理も悪くないけど、スウィーツのレベルは日本にまったく比べるべくもない。


 植物油と砂糖と香料てんこ盛りの、ケミカルで、脳にダイレクトにぶっ刺さるようなあの甘味……懐かしい。

 あれぞ合法ドラッグ……。



「逃げてしまうのじゃ……」


「はいはい」



 まあ、ウサギの言わんとすることは察した。

 獲れたてホヤホヤの新鮮なお肉をご所望ってことだろう。


 この世界の人はウサギを見るとだいたい「ネズミ」扱いする。


 近くでよく見ると耳の長さがぜんぜん違うんだけど、遠目で見るとマジでウサギとシロクサネズミは同種の動物にしか見えない。


 いいのかしら、ほんとに、狩っちゃって……?

 まあいっか、本人が気にしてないんだから。



 タイムトゥハント。



 と、声に出さずに呟きながらわたしはマントのフードを目深に被った。

 これで「インビジブル」が発動したはず。


 音を立てないように気をつけて馬から下りて、草むらにそーっと忍び足で近づく。


 腰からこん棒(弱)を引き抜いた。

 こん棒(強)だとミンチ肉にしてしまうからだ。


 動くなよーそのままそのまま……。


 あと2歩でこん棒の射程に入るところまで近づくと、群れの1匹が頭を上げて短い耳をひくひく動かし――




 逃げた。




 それを合図にしたように、白い群れは、いきなり逃げだした。

 まさに脱兎のごとく散っていく。


 本気で逃げる野生動物を追いかけてどうこうできる能力は、わたしにはない。

 あきらめてフードを脱いだ。


 しかし、小動物にも「インビジブル」が効かないのかー。

 魔術師には効かず、神官にも通用せず、ネズミにすら看破された。

 ドワーフ秘蔵の魔術道具も案外使えないなぁ。


 馬のところに戻ると、ウサギがむくれていた。



「道具が――」



 悪いんだよ、わたしはグズじゃないんだよ、だってそもそも猟師じゃないんだよ。

 などと言い訳かまそうとすると、ウサギが「シッ……!」と小声で制止した。


 ウサギはむくれているわけではなく、真剣な面持ちで、ある方向をじっと凝視しているようだった。


 わたしもその方向に目を向ける。


 そのとき。



「ェーーーーー!!!」



 悲鳴が聞こえた。


 人間の、若い女性の悲鳴だ。


 続いて獣の唸り声が聞こえてきた。

 かなり近い。


 ネズミたちは、きっとあの音を察して逃げだしたんだ。


 わたしは先ほどネズミが群れていた草むらまで小走りで進み、樹の陰に身を隠し、半身になって様子をうかがった。


 見れば30メートルほどの距離に人の腰丈くらいの岩があり、その上に少女がいた。

 岩の周りに、黒い獣が数匹いる。


 取り囲まれた少女は、獣を近寄らせまいと必死で小枝を振り回していた。


 黒い獣は、懐かしの腐肉狼(スカベンウルフ)だ。


 てめえら、久しぶりじゃねえか!


 タイムトゥハント、アゲイン。



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