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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
2章

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36話「思惑」


 こいつらどうかしてるよ。

 やっぱり三部会なんて来るんじゃなかった……。


 さっきまで冷静に対応策を話し合っていたのに、総督が演説をぶちかますと、突然、戦争モードになってしまったのだ。


 どう守るとか、どう戦うとか、そういう具体的なことを抜きにして、王国の威信とか騎士の名誉とかぬかし始めた。


 騎士のなかには、感極まって半泣きになってるやつもいる。




 あぁ、こりゃ滅びたなミルトン……。




 そうと決まれば急いだほうがいい。

 工房に帰ったら、さっそく引っ越し先を探さないと。


 わたしはべつにどこでも商売ができるから、ミルトンにこだわる必要はない。

 けど、指導者層がこのノリなら、王都も怪しいなぁ……。


 カルバニア王国、まるごと滅亡すんじゃね?

 できるだけ遠くに逃げよう。


 ベスは当然連れて行くとして、エリンやゴンドたちはどうするんだろう?


 生まれ育った土地を捨てさせるのは忍びないけど、滅びる土地に居座って命を落とすのはバカらしいとかなんとか言えば説得できるかな?


 テルマやルイーズも連れて行くとしたら、馬車が必要になるな。


 馬屋に金を多めに握らせておいて、他から横取りされないようにしておかないと。


 でも結局、どこへ移住するかが決まらないと動きようがない。




 そんな感じで、頭の中で脱出計画を練っていたとき、さらにとんでもないことが起こった。


 遅れて出席してきたケモ耳のセクシーなお姉さんが、総督と口ゲンカをしはじめたのだ。


 口で激しくバトってたと思ったら、総督がなんと剣を抜いて、本物のバトルに発展しやがった。


 こいつらアホとちゃうか?

 うん、ミルトンは100%滅亡する。




―――




 そんなわけで、会議がお流れになるとわたしはとっとと総督府を後にした。

 いや、後にしようとしたんだけど……。


 例のケモ耳のお姉さんに呼び止められた。


 足もとまで届く魔術師っぽいローブを羽織っているものの、そのなかは太もももあらわなホットパンツとタンクトップみたいな裸同然の格好だ。


 さっきもおみ足を見せびらかしていたし、じゃっかん露出狂の気があるのかもしれない。



「おたくがヨシノ・スズキ?」


「はい。そうですけど……」


「噂聞いてるよー、デキる親方だって。耐性防具を作ってるんだよね?」


「そうです」


「ってことは、対応型だ、おたく」


「はぁ……」


「アタシ、どうも対応って苦手でさ。ガン攻めが好きってゆうか、自分から攻めたいタイプなのねー」



 なんの話をしてるんだこいつ。

 やっぱやばいやつだな。


 リュドミラはケモ耳をひくつかせつつ、目を細め、耳元で囁く。



「どう? アタシとやってみない?」



 はい、やべえやつ確定。



「いやーどうなんでしょう? ちょっとわたしにはまだ早いというか、フォーエバーにネバーしたいというか……」


「メンバーはこっちで選ぶけど、使えそうな人材がいたら誘っていいから。あ、Dランク以下はダメ。犬死にするだけだし」


「ん?」


「で、属性耐性ガン盛りのCランク防具、いくつか用意して。できるっしょ?」


「はあ……?」


「あとは侵攻ルートだよねぇ。ま、それは現地で剣聖に相談するって感じかなー」


「あのー、なんの話をされてるので?」


「え? なにって、廃都を攻める話」


「廃都を攻める……」


「言ったじゃん。アタシ、ガン攻めが好きだって」



 想像の10倍くらいやべえやつだった。


 魔物の軍団が来そうでやばいから防御を固めようって話をみんながしてるのに、1人で敵の本拠地にカチコミをかける算段をしているらしい。



「あの、わたしただの鍛冶師ですけれども」


「あー謙遜しなくてもだいじょうぶだいじょぶ。そんなすぐ必要ってわけじゃないから。ちゃんと準備期間はとるし。軍勢が来るって言っても、だいぶ先になるっぽいしね」


「わたし、鍛冶師で」


「知ってる、なんでも秒で直せるすっごいメンテ術が使えるんでしょ? 戦場じゃ頼りにしてるよー?」


 どうやら死亡確定の特攻話に巻き込まれつつあるらしい。


 冗談じゃない。

 わたしは逃げる。


 どうやってこのヤバい人を煙に巻こうか考えていたのだが。



「いたぞ! その獣人女を捕まえろ!」



 という衛兵の声に救われた。


 つづいてガチャガチャと鎧を鳴らす足音がいくつも聞こえる。



「あ、ヤベッ。じゃ、やっといてねー」



 と、リュドミラは颯爽と逃げていった。

 ぴゅーって感じだ。

 その後を衛兵たちが追いかけていく。


 やっといて?

 考えといて、とかじゃなくて?

 提案じゃなくて、もう確定事項なのですか?


 ……やはり、一刻も早くミルトンから逃げなければ!



「おいヨシノ」



 と、また背後から呼び止める声。



「なんだよもう! 今日はお腹いっぱいだよ!」


「おい、どうした?」



 ワグネリアだった。



「なんだ師匠か……なんの用ですか」


「とんでもないことになったな」


「ですね」



 わたしは、遠ざかっていく捕り物騒ぎを見ながら言った。


 あのまま捕まって牢にぶち込まれてくれれば、余計な心配ごとが1つなくなって助かるのだけど。


 しかし、さっき見た魔術の実力を考えると、そうはならないだろう。



「アレじゃねえよ。あんなのどうでもいい」


「え? じゃあなにが?」


「このままだとミルトンがやばいって話だ」


「そうですね。終わりって感じですよね」


「おまえ、どうするつもりだ?」



 友人一行を連れて逃げます! とは言えなかった。


 薄情者や卑怯者呼ばわりされるくらいならなんともないけど、裏切り者扱いはまずい。


 へたすりゃ、逃亡を妨害される恐れがある。

 ワグネリアがそうすると決まったわけじゃないけど、身内以外には逃亡計画を知られるわけにはいかない。



「おまえ、逃げるつもりだろ?」



 バレてる!?



「ななななんのことでしょうか!?」


「隠しても顔に書いてあんだよ。おまえは逃げるやつだって、おいら知ってるからな~」



 クソっ、もう遅いか。


 かくなる上は、ヤるか? ヤっちまうか?

 かわいいベスたちを守るためなら、この手を血に染めることもやむなしだ。



「どうせ逃げるんなら、おいらと一緒に来い」


「え、親方逃げるんすか? それは卑怯ってものではないですか?」


「どの口が言うんだよ……」



 ワグネリアは呆れたように苦笑いした。



「おいらは逃げるんじゃねえ。助けを呼びに行くんだ」


「助け……どこに?」


「ヒドンガルド」


「ヒドンガルド?」


「南のドワーフ王国だ」



 南。

 このとき、わたしの脳はフル回転をはじめた。


 ヒドンガルドという地名は初耳だけど、南という方角は悪くない。

 敵の本拠地である廃都は、北のグルガン山脈にあるからだ。


 つまり、ワグネリアに同行すれば、助けを呼びに行く使者のフリをしながら、方向的には逃げることになる。


 もし、ドワーフ王国の救援がめでたく実現したら、ヒーローみたいなドヤ顔で凱旋帰還すればいいし、ダメならそのままさらに逃亡生活を続ければいい。


 どっちに転んでも損はない。

 けど、疑問が残る。



「なんでわたしを連れていきたいんですか?」


「ドワーフ族の同胞を説得するには、人間の代表者が必要だからな。その点、一流鍛冶師のおまえなら同胞も親近感を持つだろうし、適任だ」


「ああ、なるほど……」



 ドワーフ族は全員鍛冶の達人だったかな、たしか。

 しかし、どうやら凱旋帰還のルートは消えたようだ。


 わたしなんかを人間代表に選ばざるを得ない時点で、ミルトンの滅亡は決まったようなもの。



「総督があんな調子じゃあ、王都の救援は望めないだろ。どうだ?」


「行きますっ!」



 わたしは親指をグッと立てて即答した。


 ベスやエリンの意見も聞かずに決めてしまったが、どのみちここに残るという選択肢はありえない。


 説得は必要だろうけど、きっとわかってもらえるはず。

 にしても、本格的に逃げるとなると、準備しなきゃいけないな。



「出発は明朝。城門で待ち合わせな」



 今日は忙しくなりそうだぜ……。



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