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転生鍛冶師ラストダンジョン手前の街で新人冒険者を救う神になる!  作者: 飛来甲殻類
1章

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22話「初めての冒険の旅」


 毒を使う魔物は意外に多いらしい。


 話としては知っていたけれども、致死性の猛毒まで使うやつは少ないようだから、今まで見過ごしていた。


 なにしろ冒険者は毒よりも物理的な手段で即殺されることのほうが圧倒的に多いので、わたしは防御力を優先していたのだ。


 とはいえ、毒を食らえば動きや思考が鈍るし、じわじわと体力を削られもする。


 直接の死因にはならなくても、結果的に毒が原因で命を落とすことはあるのだ。


 エリンが毒の存在を認識できず、なんでもかんでも魔物の瘴気が引き起こす呪いのせいだと思っているのは神官どものせいだけど、わたしにも責任がある。


 物理防御ばかりに目をむけて、状態異常についてなにも考慮していなかった。


 それは命を預かる鍛冶師の怠慢だ。




 神殿から工房に帰ると、昼になっていた。

 ウサギはまだ毛布にくるまって幸せそうに眠りこけていた。



「にゃーにゃー……もう真鯛は食べれんにゃー……」



 猫か!

 夢の中でお楽しみ中のところ悪いけど、用ができたし、起きてもらおう。



「ウサギ!」


「むにゃ……」


「起きてよ!」


「…………なんなのじゃ? せっかくいい夢を見ておったのに……」


「ごめんって。魚買ってきたから。ほら」



 わたしは帰りがけに市場で買ってきた魚をザルから取って床に置いた。



「ヌレエフパーチかー。このへんの川魚は生臭いのじゃよ……水質がよくないんじゃ」


「いらないの?」


「いるのじゃ!」



 ウサギは川魚に食いついた。

 寝起きなのに食欲旺盛で、すぐに平らげてしまった。



「で、なんじゃ? おぬし用があるんじゃろ?」



 わたしは今朝の出来事をかいつまんで説明した。



「あのさ、防具に状態異常耐性ってつけられないかな?」


「可能なのじゃ」


「よかった!」



 状態異常耐性がある防具はゲームでは定番だけど、この世界にもあるかどうかわからなかった。


 不可能、と言われたら話が終わってたから一安心だ。



「精錬の延長なのじゃ。適切な素材であれば、耐性効果がつくのじゃ」



 素材かー。

 なんでも素材が必要なんだなぁ。



「どんな素材があればいいの?」


「ケースバイケースじゃけど、だいたいは原因物質じゃな」



 原因物質か。

 今回のケースだと『大サソリの毒』が必要、ということだ。


 より具体的にいえば、毒を発生させる臓器や器官だ。

 なんだか某モンスターハンターみたいになってきた。



「ってことは大サソリの討伐が必要だね。冒険者ギルドに依頼をださないと……」



 と、わたしがつぶやくとウサギが吹きだした。



「な、なに?」


「冒険者に採取に行かせるつもりか? それは名案じゃ! ブラボーなのじゃ!」


「なにかおかしいの?」


「おぬし、たまには脳みそ使わんと腐ってしまうぞ。あ! 脳ダレが耳から垂れておるぞ! 少ないのう! 脳みそ少ないのう!」



 なんだこいつ煽りスキル全一か?


 これでもわりとフルに使っているつもりである。

 まあ、フルに使ってその程度か、と言われたらもうどうしようもないんですけれども……。


 ウサギは二足歩行形態をとって、前足を上げた。

 チンチン、ではなくアドバイスポーズだ。



「なんでもかんでも呪いのせいにしてしまう連中に、毒の発生器官を特定して採取してこいと? 毒という概念すら怪しい連中に、発生器官という概念を理解できるわけがないのじゃ。それともバカでかいサソリの死体をまるごと山から運ばせるつもりか?」



 つまり、それは。


 いや。

 それだけは、できれば勘弁してもらいたい……。



「『鑑定』アビリティには素材を見分ける機能もついとるんじゃ。便利じゃのー至れり尽くせりじゃのー」



 なんでちょっと棒読み気味なんだよ……。


 てことは。

 わたしが直々に大サソリ討伐に同行しなければならない。

 そういうことか……。


 天寿を全うするまで、できればミルトンの街から一歩も出たくなかった……。


 戦場から遠い安全な後方ポジションで、偉そうに理想をふりかざしつつ、自分だけの平和と安寧をむさぼりたかった……。


 だけどこうなったらしょうがない。


 わたしははじめて「冒険の旅」に出ることになった。




―――




 冒険者ギルドに出した依頼は「大サソリ討伐と護衛」だ。


 当然というか自然の流れというか、エリンのパーティが引き受けてくれることになった。


 エリンにはもっと養生してほしかったんだけど、本人が「絶対にやる!」と言い張った。


 目的地のスコルピ村には、ミルトンから徒歩で5時間ほどでついた。

 これといって特徴のない農村だ。


 村名に名残りがあるように、農業を本格的に始める前は大サソリ猟を村の生業にしていたらしい。

 なかなか血の気の荒いご先祖さんをお持ちで……。


 街から出るのは初めてだし、せっかくだからファンタジーな農村がどんなものかすこし見て回ろうかと思ったけど、3秒で飽きた。


 うん。

 ディスイズ農村。

 観光には向かないね。


 地方のクソ田舎出身のわたしからすれば、むしろ実家に帰ってきたような懐かしさしか感じなかった。


 違いといえば、電気があるかないか、それだけ。


 そんなわけで観光終了。

 長旅で疲れていたのもあるし、すぐに宿に戻った。


 宿といってもここは旅人の多い街道沿いではないから、専業の宿屋はない。


 そんなわけで、村でいちばん広い村長の家に泊めてもらうことになった。

 前回の遠征時もエリンたちはここに泊めてもらったらしい。


 案内された部屋のベッドに横たわると、猛烈な眠気に襲われた。


 5時間の徒歩旅は、かなりきつかった。

 疲れ切っている。


 明日は山登りだってのに……。


 平地の旅でさえこんなに疲れちゃったのに、山道をエリンたちについていけるかどうか、不安でしょうがない。




 翌朝。

 朝食を済ませるとすぐに山へむかった。


 麓から見上げていたときにはそんなに険しそうに見えなかったのに、いざ入山してみると山道は想像以上に苛酷だった。


 30分もしないうちに、わたしは疲労困憊になってしまった。


 見たこともないような大量の汗をかいて、ときどき目がかすむ。



「ちょいギブ。休憩……」



 わたしはそう言い終わらないうちにへたりこんでしまった。


 まったく疲労の色がないエリンたちが不思議な生き物かのように見てくる。


 屈強な冒険者の肉体といっしょにしないでほしいな……。

 こっちはふだん工房に引きこもっていて、ろくに歩きもしないんだから。


 こんなに早く消耗してしまったのは日ごろの運動不足のせいもあるけど、もう1つ理由がある。


 この鎖かたびら(Cランク)のせいだ。

 大サソリとの戦闘に備えて、万が一のために装備してきたのだ。


 けど、金属鎧は失敗だった。


 関節の可動域をかなり制限してしまうため、動きがぎこちなくなるし、いつもしない動きをすることで疲労感が倍になる。

 それに熱がこもって暑くてしょうがない。


 物理的に即死させられるのを避けるための備えだったけど、このままじゃ大サソリの生息地につく前に疲労死してしまう。


 わたしは、鎖かたびらを脱ぎ捨てた。


 身軽になったし、風通しがよくなってひんやりとした山の涼しさを感じられる。


 よし。

 これでいい。


 今回のは判断ミスだった。


 けど、おかげで冒険者が防御力の高い金属鎧をあまり装備したがらない理由がわかった。


 登山には登山に適したファッションというものがある。


 重くて暑苦しい金属鎧なんて、短パンサンダルと同じで、山をなめてるやつが着るものだ。

 冒険にはTPOに適した装備というものがあるのだ。


 身軽になったおかげで、エリンたちのペースについていけるようになった。


 すると、エリンたちはすこしペースをあげた。

 クソっ、あれでも手加減してくれていたのかよ……。




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